今日はエステルの合成
に関する問題を解いて
行きましょう
次の文章は安息香酸からエステルを合成する実験について記したものである。以下の各問いに答えよ。ただし、原子量H=1.0,C=12.0,O=16.0とする。

エステルの合成(油浴)
(a)還流冷却器のついた丸底フラスコ(上図)に,20mlのメタノール、10.0gの安息香酸および焼く1mlの濃硫酸を入れ、よくかき混ぜながら1時間加熱した。
冷却後反応混合物を100mlのジエチルエーテルと100mlの水とともに分液漏斗に写し、よく振った後、水層を分離した。(b)ジエチルエーテル層に5%の炭酸水素ナトリウム水溶液20mlを加え、よく振った後、水層を分離した。
この水層に3mol/Lの希塩酸を加えて酸性にしたところ、白色の沈殿が析出したのでこれをろ過したところ、白色の沈殿が析出したのでこれをろ過して集め、乾燥したところ、融点123℃の白色結晶Aが0.20g得られた。(c)ジエチルエーテル層には無水硫酸ナトリウムを加えてしばらく放置した。ろ過により沈殿物を除いた後、ジエチルエーテルを蒸発させて除いた。残った液体を蒸留により精製したところ、沸点198〜199℃の無色の液体Bが8.0g得られた。
問1下線部(a)の操作で起こる反応を化学反応式で表せ。
問2下線部(a)について還流冷却器を用いる目的を25字以内で説明せよ。
問3下線部(b)の操作の目的を25字以内で説明せよ
問4下線部(c)の操作の目的を25字以内で説明せよ
問5白色結晶A、無色の液体Bの化学式を記せ。
問6最初に用いた安息香酸の量をもとに、エステルの収率を有効数字2桁で求めよ。(千葉大2003)
問題のポイント
カルボン酸とアルコールを縮合
させる『エステル化』は
『可逆反応』でした。
だから、エステル化の収率を
100%にする方法も教えましたね!
加水分解も収率100%にする方法
も一応載せておきます。
今回の問題はこれは関係
ありません。
可逆反応のまま解いて行きます。

このようにスキマ埋める反応して、
エステルになります。
沸点について

カルボン酸は上図のように
分子間で水素結合出来るので
融点が高くなります。
安息香酸は、分子間水素結合の
ため、分子量の割には
融点が約123℃と
高くなる。
常温で固体になる!
(——-:水素結合)
問1下線部(a)の反応

→エステル化で濃硫酸が触媒
←加水分解で希硫酸が触媒
問2下線部(a)において、還流冷却器を用いる目的
前提!
エステル化は可逆反応だから、
両辺全ての物質が残っている!
どういうこと?
反応後には安息香酸メチル、メタノール、安息香酸メチル、水、触媒の硫酸の全てが反応液の中に残存してるねん。
だから、下の表をみて!

そして、今回は油浴という方法が
取られている。
油浴とは100~250℃まで
温度を上げるときに用いる操作で、
上の表を見ると、
メタノール、安息香酸メチルが
気体となり、外へ出て行く可能性が
あるよな。
そうすると、平衡状態がずれるし、
どれだけエステルになったのか?
と言う事も分からなくなる。
最後の問題でもある、
エステルの収率も計算できなく
なる。
だから、気体になって
外に出て行かれると困るよな。
だから
メタノール、安息香酸メチルの
蒸気を液化し反応器へ戻す(25字)
これが答え!
この還流冷却器(冷水を流した
リービッヒ冷却器)で冷やして
気体→液体に戻す。

この冷却器をリービッヒ冷却器
と言う。
冷水は青い矢印の方向で
下から上である。
理由は、
冷却管内を冷却水で満たす事が目
です。
上から下やと冷却水が
たまらへんからね(笑)
問3下線部(b)の操作の理由は?
これは芳香族の分離のところで
教えたと思います。
弱酸遊離を利用して
有機物の酸を分離する作戦
でした!
反応後の溶液には、
・安息香酸メチル
・メタノール
・安息香酸
・水
・硫酸
が含まれています。
このうちC数×1
のメタノールと硫酸と
水は水槽に、
水に溶けにくい性質を持つ
ベンゼン環を持つ安息香酸と
安息香酸メチルは
ジエチルエーテル層にふくまれる
はずです。
こういう状況!

ジエチルエーテル層に含まれる
安息香酸に炭酸水素ナトリウム
水溶液を加えると、
弱酸遊離反応により、
炭酸の第1電離で生成する
炭酸水素イオンへ
安息香酸はH^+イオンを
移動させて安息香酸イオンに変化します。
弱酸遊離反応はドラえもんの世界に
置き換えて考えると
かなり分かりやすいです。
今回で言うと、
安息香酸=ジャイアン
炭酸第1電離=のびた
弱酸ののび太が電離するなんて
あり得ないわけです。
だからジャイアンが
電離してイオン化するために、
のびたを追い出します。
芳香族は基本的に水に溶けにくいですが、
『イオン化すると水に溶けやすくなります』
よって、
これが答えです!
問4下線部(c)の操作の理由は?
有機化学において、
無水硫酸ナトリウム=乾燥剤
これは覚えちゃってください。

この反応により
無水硫酸ナトリウムは、
水を吸収する事が出来ます。

分液ろうと管の水とジエチルエーテル
をわけるのが、
密度の差だけで、キッチリ線引きして
分けているわけじゃないのです。
だから、
ジエチルエーテルにも水が
含まれてしまっているのです。
だから、ここで乾燥剤を使う
のです。
ジエチルエーテル層に紛れ込んだ
水を取り除くため(23字)
これが答えです。
問5白色固体Aと無色の液体Bは?
引き続き有機物の分離の問題。
ジエチルエーテル層
(密度が水より小さいので
水に浮きます)に
炭酸水素ナトリウムを加えた後

上のように生成物が含まれています。
ここで再び弱酸遊離を使います。
HClaq(塩酸)を水相に加えると、
硫酸は塩酸より強酸だから
反応しませんが、
弱酸の安息香酸イオンは
HClが電離するために
追い出されます。
つまり
安息香酸イオン=のびた
HCl=ジャイアン
と言う事になります。
だから、
安息香酸イオンは安息香酸として
遊離してきます。
先ほどお伝えした通り、
安息香酸は、分子間の
水素結合のおかげで、
融点が高くて、常温で固体です。
なので、白色固体Aが
『安息香酸』と言う事になります。
そして、ジエチルエーテル層に
含まれるのが安息香酸メチルで、
ジエチルエーテル(沸点約34℃)
を蒸留すると、安息香酸メチル
が残ります。
ジエチルエーテルを蒸留すると
安息香酸メチルが残ります。
問6安息香酸メチルの収率
安息香酸(分子量:122)10.0gから
安息香酸メチル(分子量136)8.0g
が生成されるので、

と言う計算が出来る。
よって収率は
約72%となります。
どうでしたか?
エステル化や芳香族の分離など
色々な知識を使う問題でした。
キッチリ復習しておいてください。