こんにちは。
アルカリ金属の単元において「水と反応して水酸化物を生じ、水溶液は強い塩基性を示す」と学んだと思います。
ですがすべてのアルカリ金属に、この性質があるのでしょうか?
また水溶性や塩基性に違いはないのでしょうか?
この記事ではアルカリ金属水酸化物の性質について詳しく解説し、それぞれの物質も一覧で紹介します。
アルカリ金属「単体」の性質について知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください!
目次
アルカリ金属の水酸化物が持つ共通性質
水溶性
どのアルカリ金属の水酸化物もイオン結晶であり、水中で水分子に引き剥がされ容易に電離するので水によく溶けます。
「水に溶ける」とはどういうことかについては、この記事で詳しく解説しているので詳しく知りたい人は読んでみてください。
強塩基性
水に溶けると、それぞれの金属の陽イオン(Li+, Na+, K+, Rb+, Cs+)と水酸化物イオン(OH–)を生じます。
水酸化物イオン(OH–)によって水溶液は強塩基性(強アルカリ性)になります。
取り扱う際には保護メガネや手袋を着用しましょう。
潮解性
水酸化リチウム以外は潮解性があり、空気中の水分を吸収し溶けてしまいます。
アルカリ金属水酸化物の塩基性の強さ
上でも確認した通り、アルカリ金属の水酸化物はすべてよく似た性質を持っています。
違うのはその「強さ」です。
水溶性・塩基性・潮解性のすべてが原子番号が大きいほど(つまり周期表で下に行けばいくほど)強くなります。
これは陽イオンのイオン半径が大きくなればなるほど、水酸化物イオンに対する電気的な干渉が小さくなるからです。
つまり水酸化リチウム(LiOH)よりも水酸化セシウム(CsOH)の方がたくさん水酸化物イオン(OH–)を「投げる」のです!
これがアルカリ金属の原子番号が大きくなるほど、その水酸化物の水溶性・塩基性・潮解性が強くなる理由なんですね。
アルカリ金属の水酸化物一覧
では「アルカリ金属の水酸化物」にはどんなものがあるのかを見ていきましょう。
水酸化リチウム(LiOH)
水への溶解度は128g/l (20℃)でアルカリ金属水酸化物の中では最小です。
水溶液は強塩基性です。
潮解性はありません。
二酸化炭素の吸収剤として、宇宙船や潜水艦で人間が排出した二酸化炭素を除去するのに用いられます。
2LiOH•H2O + CO2 → Li2CO3 + 3H2O
水酸化ナトリウム(NaOH)
アルカリ金属水酸化物のうち、大学入試において最も重要な物質はこの「水酸化ナトリウム」です。
水への溶解度は1110g/l (20℃)と、水酸化リチウムの約10倍もあります。
水溶液の液性は強塩基性です。
潮解性があり、密栓をせずに放置すると空気中の水分を吸収して水溶液になります。
水酸化リチウムと同じく二酸化炭素を吸収します。
2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O
またその潮解性を利用し、酸化カルシウムと混合させた「ソーダ石灰」は気体の乾燥剤としても用いられます。
強塩基生であることと、安価に大量生産できることからアルカリ剤として上下水道の中和剤、石けんのけん化剤、パイプのつまりを溶かすクリーナーなどに広く用いられています。
しかし皮膚や眼球のタンパク質を侵すので別名「苛性ソーダ」とも呼ばれ、取り扱いには注意が必要です。
工業的にはイオン交換膜法で生成されます。
大学受験では、アルカリ金属元素の中で最も重要なのがナトリウムです。そこでナトリウムの水酸化物の水酸化ナトリウムはより詳しく解説しています。
水酸化ナトリウムのより詳しい性質やイオン交換膜法について深く知りたい人は、こちらの記事も読んでみてください!
水酸化カリウム(KOH)
水への溶解度は1120g/l (20℃)で、水酸化ナトリウムよりもわずかに大きいです。
水溶液の液性は強塩基性です。水酸化ナトリウムよりも塩基性が強くなります。
水酸化ナトリウムと同様潮解性があり、二酸化炭素も吸収します。
2KOH + CO2 → K2CO3 + H2O
水酸化カリウムも皮膚を侵すので「苛性カリ」とも呼ばれ、取り扱いには十分な注意が必要です。
水酸化ナトリウムと同じく石けんのけん化剤として用いられますが、水酸化カリウムによってけん化すると「液体石けん」になります。
このけん化はアルカリ金属の水酸化物のNaOHと有機物のカルボン酸のエステル化の一種です。このけん化は有機化学で勉強します。
エステル化については「エステル化など絶対に押さえておくべきカルボン酸の反応5選!」で解説しています。ぜひこちらをご覧ください。
水酸化ルビジウム(RbOH)
水への溶解度は1800g/l (15℃)と、今まで見てきたどのアルカリ金属水酸化物よりも大きいです。
水溶液の液性は強塩基性です。濃厚水溶液では水酸化ナトリウム、水酸化カリウムよりも強くなります。
極めて強い潮解性を示します。
ガラスを腐食するので、ガラス瓶に保存することはできません。
皮膚と接すると即座に炎症を起こします。
水酸化セシウム(CsOH)
水への溶解度は3950g/l (15℃)と、アルカリ金属水酸化物の中で最大です。
水溶液の液性は強塩基性で、アルカリ金属水酸化物の中で最強の塩基性物質になります。
極めて強い潮解性を示します。
水酸化フランシウム(FrOH)
希少な物質の上に放射性があり、短時間で崩壊し別の物質になってしまうので「フランシウムの性質」はよく分かっていません。
したがって「水酸化フランシウム」の性質も不明です。
まとめ
この記事ではアルカリ金属の水酸化物について解説しました。
アルカリ金属の水酸化物が持つ共通性質は
- 水溶性
- 強塩基性
- 潮解性
です。
アルカリ金属の水酸化物には の5種類があります。 は存在が確認されていません。 いかがでしたでしょうか?アルカリ金属の水酸化物に関して徹底解説してまいりました。 アルカリ金属は無機化学でも非常に重要な物質群です。アルカリ金属は水酸化物だけでなく、単体やイオンもよく出題されます。 化学受験テクニック塾(本サイト)では、アルカリ金属の単体や塩も扱っています。こちらをぜひご覧ください。 アルカリ金属にはさまざまな出題項目があります。 これらアルカリ金属で出題される全ての内容を1つの記事にまとめました。ぜひこちらをご覧ください。