こんにちは。
アルカリ金属が「1族元素から水素を除いたもの」というのは、分かりやすいですね。だって水素は明らかに金属じゃないですから。
しかし、アルカリ土類金属が「2族元素からベリリウムとマグネシウムを除いたもの」なのはなぜでしょう? ベリリウムもマグネシウムも金属なのに!?
今回の記事ではこんな疑問に徹底的にお答えし、アルカリ土類金属の性質や覚え方についても詳しく紹介していきます!
目次
アルカリ土類金属とは?
アルカリ土類金属は周期表2族元素からベリリウム(Be)とマグネシウム(Mg)を除いた、カルシウム(Ca)・ストロンチウム(Sr)・バリウム(Ba)・ラジウム(Ra)の総称です。
最外殻に価電子を2つ持ち、2価の陽イオンになりやすいのが特徴です。
なぜ「アルカリ土類」という名前になったかというと、酸化物が水に溶けて塩基性を示し(=アルカリ)、熱に強い(=まるで「土」)から。
化学の黎明期には単体の分離が難しく酸化物のことを単体だと勘違いしてしまったため、酸化物の特徴が名称になってしまったらしいです。
アルカリ土類金属の単体はどれも銀白色の軽金属で、アルカリ金属に次いで反応性が大きいため水と反応して水素を発生します。
Ca + H2O → Ca(OH)2 + H2↑
Sr + H2O → Sr(OH)2 + H2↑
Ba + H2O → Ba(OH)2 + H2↑
Ra + H2O → Ra(OH)2 + H2↑
アルカリ土類金属にBeとMgが含まれない理由
その理由は実は単純です。ベリリウム(Be)とマグネシウム(Mg)は性質が他の2族元素と全然違うのです!
性質 | Be • Mg | Ca • Sr • Ba • Ra |
炎色反応 | なし | あり |
水との反応性 | Be-なし Mg-熱水のみ | あり |
水酸化物の水溶性 | 難溶 | 可溶 |
硫酸塩の水溶性 | 可溶 | 難溶 |
このように性質が大きく異なる理由は、BeとMgは原子半径が小さく原子核が電子を引きつける力が強いため、イオンになりにくいから。
Beはむしろ13族元素のAlと、Mgは12族元素のZnと似た性質を持っています。
アルカリ土類金属の語呂を使った覚え方
2族元素の有名な覚え方には、次のようなものがあります。
ここからBeとMgを除いたものがアルカリ土類金属なので、前半部分を省略する=ベッドにもぐらないようにするとアルカリ土類金属の覚え方になります。
えっ? 何を彼と何をするのかって?
さあ… 将棋かなんかじゃないっすかね…。まあ、ご想像にお任せします!
アルカリ土類金属の主な元素
カルシウム(Ca)
日常生活の中でよく「カルシウムを摂らないと骨がもろくなる」というようなことを聞きますが、当然それはカルシウム単体のことではありません。
骨や歯を作ったり、牛乳に含まれているのはリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2)という化合物。
カルシウム単体は前述の通り、反応性の大きい軽金属です。
カルシウム単体の性質について詳しく知りたい人は、この記事を読んで見てください。
地球上にもっとも多く存在するカルシウム化合物は、サンゴ骨格や貝殻、そしてそれらが化石化した石灰岩の主成分である炭酸カルシウム(CaCO3)です。
炭酸カルシウムを熱すると二酸化炭素が抜け、酸化カルシウム(CaO)=生石灰となり、様々な工業分野で活用されています。
実験室では、酸化カルシウムを水と反応させて生成した水酸化カルシウム(Ca(OH)2)の水溶液である「石灰水」がよく用いられますね。
また塩化カルシウムも気体の乾燥剤として、実験室でよく用いられています。
石灰水や塩化カルシウムの性質について詳しく知りたい人は、この記事を読んで見てください。
ストロンチウム(Sr)
ストロンチウムはカルシウムによく似た性質を持っていますが、カルシウムより反応性が大きくなります。
アルカリ土類金属はアルカリ金属と同じく、原子番号が大きくなるほど最外殻電子が離れやすくなり、反応性も大きくなるのが特徴です。
ストロンチウムは赤い炎色反応を示すため、花火や発炎筒の赤い色を出すために塩化ストロンチウムが使われています。
バリウム(Ba)
胃のレントゲン検査をする際に造影剤として「バリウムを飲む」という話を聞きますが、これももちろん反応性の大きいバリウム単体ではありません。
飲んでいるのは、硫酸バリウム(BaSO4)という化合物なのです。バリウムは金属なのでX線を通さず、胃の形をレントゲン写真上に白い影として写します。
アルカリ土類金属のイオンは、2価以上の陰イオンと水に不溶性の塩をつくります。
水に溶けなければ、人体にも吸収されずそのまま排出されるため健康上の影響が少ないのですね。
ラジウム(Ra)
温泉に入っている成分などとして知られるラジウムは、放射性を持つアルカリ土類金属です。
1898年にキュリー夫妻によって発見され、二人はこの業績によってノーベル賞を受賞しました。
光を発する便利な物質として時計の文字盤などに用いられましたが、その後放射能による健康への影響が問題となり、現在は使われていません。
アルカリ土類金属の炎色反応
アルカリ土類金属の炎色反応は上の通り。カルシウムは橙赤色(橙色)、ストロンチウムは赤色(紅色)、バリウムは黄緑色になります。
大学受験で出題される炎色反応は「アルカリ土類金属」に加え、「アルカリ金属」と「銅」で99%を占めるのでまとめて覚えちゃいましょう!
K村にはリアカーがないので、隣村から動力を借りようとしたのですが貸してくれません。「しょうがないっぺ!馬っこでやんべ!」ということで馬で運ぶことにした。というイメージです。
リチウムが赤、ナトリウムが黄、カリウムが紫、銅が緑、カルシウムが橙(赤)、ストロンチウムが紅、バリウムが(黄)緑の炎色反応を持つことが、これで覚えられると思います。
まとめ
アルカリ土類金属は周期表2族元素からベリリウム(Be)とマグネシウム(Mg)を除いた、カルシウム(Ca)・ストロンチウム(Sr)・バリウム(Ba)・ラジウム(Ra)の総称です。
特徴的な性質は
- 2価の陽イオンになりやすく、アルカリ金属に次いで反応性が高い
- 酸化物は水に溶けると塩基性を示す
- 2価以上の陰イオンとの塩は水に不溶
です。