硫黄の同素体の性質、生成実験、構造の違いをまとめてみた

こんにちは。

今日は硫黄の同素体について徹底的にまとめてみました。硫黄の同素体は実験の流れなどが実際出題されます。

 

高校化学の主役級の硫酸にも含まれる「S」原子の同素体なので、非常によく出題されます。きっちり硫黄の同素体を区別できるようにしましょう。

目次

硫黄の同素体の種類

斜方硫黄

硫黄の同素体「斜方硫黄単斜硫黄」

このように王冠型のS8分子です。奥なのか手前なのかがわからない人のために、一応どこが手前なのか模型で表してみました。

斜方硫黄というのは、S8分子がファンデルワールス力で重なり合った分子結晶です。

ファンデルワールス力

あとで、斜方硫黄から単斜硫黄、ゴム状硫黄を作る実験風景を紹介しますが、常温は斜方硫黄です。

単斜硫黄

硫黄の同素体「斜方硫黄単斜硫黄」単斜硫黄を構成するのはS8分子の王冠モデルです。これも斜方硫黄と同様に分子結晶です。同じように分子同士がファンデルワールス力でくっついています。

 

しかし、斜方硫黄より単斜硫黄の方がやや体積が大きく密度が小さいです。なぜなら、斜方硫黄が95.3度を超えたあたりから単斜硫黄になります。

 

つまり、単斜硫黄ってのは、高温状態にできる硫黄の同素体です。なので、原子運動が活発になっています。よってその分体積が大きくなっています。

硫黄原子がユサユサする

 

ゴム状硫黄

ゴム状硫黄

ゴム状硫黄は、このように陰毛のようにペキペキ折れ曲がって縮れています。高分子のゴムもこのようにペキペキ折れ曲がっているんですよ。これって折れ曲がったところを引っ張ると、伸びるんですね。

ゴム弾性

このように、ペキペキ折れ曲がったゴム状硫黄を伸ばせば、伸びて長さが伸びているように見えます。これがゴムの原理です。陰毛のようにちぢれた毛は伸ばせば長さが長くなるように感じますからね。

 

高分子のゴムも陰毛みたいですからね。

ブタジエンゴム

出典:http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~hiroakio/OCDB/SyntheticRubber/BR.htm

話をゴム状硫黄に戻しますが、ゴム状硫黄は長く鎖状に繋がっているので、Sxという分子式で表します。

 

ゴム状硫黄は高分子なのです。なので、S8は二硫化炭素に溶けますが、ゴム状硫黄は二硫化炭素に解けることができません

硫黄の同素体の性質を表で比較

斜方硫黄 単斜硫黄 ゴム状硫黄
分子構造 王冠 王冠 不定形(陰毛)
分子結晶 塊状 針状 ゴム状
融点 112.8℃ 119.3℃ 不定
密度(g/cm3) 2.07 1.96 1.92
淡黄色 黄色 黒褐色
溶解性 CS2に溶解 CS2に溶解 不溶

出典:新研究p350

 

硫黄の同素体を生み出す実験

この硫黄の同素体を生み出す実験の流れが入試問題に丸ごと出ることが多いです。

粉末の硫黄を単斜硫黄へ

斜方硫黄から単斜硫黄を作る実験です。まさにこちらの動画通りなので、まずはこちらをご覧ください。

このように、粉末の「斜方硫黄」を加熱して融解しまさせます。これを四つ折りにしたろ紙の上に流し込みます。すると、針状の単斜硫黄が出来上がります。

 

斜方硫黄を95.3℃以上に長く放置すると徐々に単斜硫黄に変化します。ただ、反応速度が極めて遅いです。

斜方硫黄から単斜硫黄へ

なので、斜方硫黄の融点までいちどあげてしまって融解液を作り、それをろ紙に流し急冷させます。すると一気に単斜硫黄ができます。

斜方硫黄から単斜硫黄へ

斜方硫黄からゴム状硫黄へ

もうこの実験のまんまなので、まずはこの実験動画をご覧ください。

まず、斜方硫黄を加熱していくと、この動画でも見てもらった通り、最初は黄色い液体になります。そのあと赤かっ色から褐色に変化して、160℃あたりで粘性が最大になります。(上の動画では液体が固化と表現されています)

 

それをさらに加熱すると、再び液体になります。この液体を水中に入れるとゴム状硫黄になります。これは、S8分子が加熱によって鎖状になります。

硫黄分子を加熱して結合が切れる

急に水で冷却されて分子同士が結合したので、環状に戻ることができずに鎖状のまま繋がりまくったからです。

鎖状構造から高分子へゴム状硫黄

このように硫黄分子同士が結合しまくっていくので、高分子になります。なので、分子式はSxと表されます。

硫黄の同素体に関する演習問題

同素体の正誤問題

(1)硫黄には外観が異なる三種の同素体が存在する。これらの形状と色の正しい組み合わせを次の表の(ア)〜(カ)から全て選び、記号で答えよ。

塊状結晶(斜方晶系) 針状結晶(単斜晶系) ゴム状固体
(ア) 赤色 白色 黄色
(イ) 黄色 黄色 褐色
(ウ) 黄色 赤色 黄色
(エ) 褐色 白色 黄色
(オ) 褐色 赤色 褐色

(2)設問(1)で示した三種の同素体の性質で正しいものを(ア)~(カ)から全て選び、記号で答えよ。

(ア)塊状結晶と針状結晶は環状分子の集合体で、ゴム状固体は鎖状分子の集合体である。

(イ)塊状結晶は鎖状分子の集合体で、針状結晶とゴム状固体は環状分子の集合体である。

(ウ)塊状結晶、針状結晶およびゴム状固体の融点は同じである。

(エ)塊状結晶、針状結晶およびゴム状固体の密度は同じである。

(オ)塊状結晶は、針状結晶やゴム状固体を常温で放置すると得られる。

(カ)塊状結晶は、針状結晶を常温で放置しても得られないが、ゴム状固体からは得られる。

青山学院大学(理工学部)

(1)イ

(2)アとオ

最後に

さて、硫黄の同素体についてかなり詳しくまとめてきました。

 

硫黄の同素体で一番の混同ポイントは、「斜方硫黄と単斜硫黄の違い」です。この記事でも開設しましたが、この違いのみに注目している記事も書いているので、こちらをご覧ください。

また、この化学受験テクニック塾では、ブログでは書けない受験テクニックを電子書籍と動画講義で解説しています。



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浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。