こんにちは。
融解塩電解は無機化学で単体を手に入れるためによく出てきますよね。イオン化傾向が大きいK,Ca,Na,Mg,Alなどのような単体を取り出す取り組みとして融解塩電解は使われます。
今回はこのうちのアルミニウムの単体を取りだす方法を取り上げていきます。
目次
融解塩電解の原料
まず、この融解塩電解の原料はアルミナAl2O3ですが、いきなりまじりっけなしの素晴らしいAl2O3が存在するわけではないです。
最初は鉱物の中にぐちゃぐちゃに混ざっています。
その鉱物をボーキサイトと言います。
この中にAl2O3が存在しますが、鉄の酸化物Fe2O3のようなものも混ざってしまっているのです。
このボーキサイトが赤い理由も、Fe2O3の化学式で表される、赤鉄鉱が存在しまくっているからです。
赤鉄鉱はその名の通り、赤いです。
ボーキサイトからアルミナを取り出す
ボーキサイトからアルミナを取り出さなければなりません。
そこで、濃NaOHと反応させます。
というのも、Fe2O3は、Fe(OH)3となって沈殿します。なぜならFe2O3は塩基性酸化物なのでNaOHとは反応しません。
しかし、Al2O3は両性酸化物なので強塩基とも反応します。
酸化物の反応式の書き方はとにかくまず、水と反応させるのが鉄則でした。
Al2O3+3H2O→2Al(OH)3
2Al(OH)3+2NaOH→2Na[Al(OH)4]
となります。この2つを足し合わせると、
Al2O3+2NaOH+3H2O→2Na[Al(OH)4]
このようにアルミニウムだけ錯イオンとなって溶液に溶け出します。
すると、
このようにして、沈殿が出来ました。そこで、この沈殿を除いていきます。すると[Al(OH)4]–のみ残ります。
このようにアルミニウム以外を除外する事が出来ました。ここからアルミナをもう一度取り出します。
テトラヒドロキソアルミン酸イオン(アルミ(III)ではなくアルミン)[Al(OH)4]ーからAl(OH)3を取り出します。
この方法は
Al(OH)3+OH–⇄[Al(OH)4]–
という溶解平衡があるため、
この溶液を水で薄めます。すると、どうなるか?
pHが下がりますよね!
pHが下がると、ルシャトリエの原理でOH–をふやしてpHをあげようという動きをします。
つまり!平衡が左へ動きます
すると、OH–が増えるついでにAl(OH)3の沈殿も増えますよね!
そして水酸化物は、加熱すると酸化物になる事を用いて、
2Al(OH)3⇄Al2O3+3H2O
と言うように酸化物Al2O3のアルミナが出来上がります。
しかも先ほどとはちがって、不純物は既に落とし終えています!かなりの純度のアルミナを取り出す事が出来ます。
アルミナの融解塩電解
ようやくアルミナを取り出し下準備が出来ました。融解塩電解は名前の通り、電気分解です。
電気分解を学ぶ方法はこちら
ただ普通の電気分解とはちがうことは、普通の電気分解は、水溶液を分解しますが、今回は固体を融解させて電気分解させるのです。
なぜ固体を融解させるかというと、アルミニウムはイオン化傾向がデカいからです!
でもアルミニウムってイオン化傾向大きいよね。
Al3++3e–→Alがおこりにくくて、水溶液でやるとH2Oが電子を受け取ってしまうんだよ!
なので!
Al2O3を溶かそう!と言う荒技に出ますw
しかし、アルミナは非常に融点が高いです。
2054℃で、恐ろしいくらい高いです。
そこで、氷晶石Na3[AlF6]という比較的融点が低い(1010℃)Al塩に溶かしていきます。
融解塩電解の反応式
電気分解はこのように電子の流れ図を書きますよね。
てことは、Al3++3e–→Al
という反応を起こしますよね。
つまり、アルミニウムが析出されるのは、陰極です。
そして、陽極ですが電気分解のときに言いましたが、常温では炭素は陽極極板として反応はしませんが、
高温になると炭素は放電します。
つまり陽極での反応は、炭素が電子を放出する
C+O2-→CO+2e–
または、
C+2O2-→CO2+4e–
となります。
このように還元剤として炭素が働きます。
この赤枠部分ですが、これ全体が炭素だと思ってください!
そして、電気分解の解法のルール!電子の流れの矢印を書くと言うものをつかうと、
陽極と陰極がこの画像では繋がっていませんでしたのでぶつ切りになっていますが、
陰極に電子が流れ込んで居るのがわかります。
融解塩電解(ホールエール法)の出題ポイント
融解塩電解というのは、題材として、アルミニウムなどがよく問われます。
そして頻出な問題としては、両性元素の強酸強塩基両方と反応する性質を聞いてくるところです。
両性元素は強酸、強塩基と両方共反応します。
これはまず水と反応してAl(OH)3にしてから反応を確認します。
このアルミナの融解塩電解でとわれるのは、
・半反応式
・両性元素アルミニウムの塩酸や水酸化ナトリウムとの反応
・量計算等があります。
ですが、これらは、既にやっています。
量計算は、電流Aで単位を与えられる事が多いです!
Aから電子のモルを求め、それから単離できたAlは何kgなのか?という問題が出ます。
これが電子のモルですので唱えまくってください!
そして、Al3++3e–→Alと言う反応をするので、
つまり、
という事がわかります!
この量計算がよく出てきますのでこの辺も出来るようにしておいてください!
単体のアルミニウムの利用法
このように単離する事ができたアルミニウムからFeを発生させる事が出来ます。
その方法を『テルミット反応』と言います。テルミット反応に付いて詳しくはコチラをご覧下さい!
いかがでしたか、融解塩電解だけをお話ししようと思っていましたが、
入試ポイントまで行き着きました。
これを何度も復習してアルミニウムを完璧にしていってください!よく理論化学と混合した問題が出やすいです。
なぜ氷晶石の溶解液に溶かすだけで、融点が下がるのでしょうか?
氷晶石Na3AlF6のイオン結晶でできているので3Na+とAl3+と6F-の10粒に分かれるので質量モル濃度が上がり凝固点降下が起こるからです。
氷晶石が何かしらの溶媒に溶けたときに、凝固点降下が起こるのは理解できるんですが、固体状態の酸化アルミニウムに対して凝固点降下が起こるのがイメージできません。
固体と固体が混ざっているだけでも凝固点降下が起こるんでしょうか?分子レベルで混ざって初めて起こるものと理解していたんですが…
では、逆から考えてみてはいかがでしょう?
つまり、酸化アルミニウムの融解液に氷結晶が溶けている、と考えてみてください。
この状態で凝固点が降下したことは理解できると思います。
ではここから温度を下げていきます。
すると、通常の酸化アルミニウムの凝固点(融点)より低い温度で、固体になり始めますよね?
さてここで、もう一度温度を上げてみましょう。
先程より高い温度が必要でしょうか?
そんなことはないと思います。
このように考えてみれば、分かりやすいのではないでしょうか?
ボーキサイトからアルミナを作るっていうところで
水酸化鉄(iii)は水酸化ナトリウムとは反応しないのになぜFe(OH)3ができるですか?
融解塩電解で質問です。
融点の低い氷晶石も融解しているとしたら、陽極でフッ素が発生しないのでしょうか。
フッ素の電気陰性度が酸素よりも高いため。