ハロゲンで非常に理論化学、有機化学、無機化学問わずに全ての分野でひたすら出てくるこの塩素。
もはや塩素を制するものは入試を制する!
といっても過言ではない!!
ですが、非常に重要な元素であるのは間違いありません。この塩素の単体であるCl2の製法をまとめてみました。
無機の気体の製法としてよく聞かれますし、化学反応式まで書けるようにしておいてください!
目次
塩素の工業的製法
まず覚えておいてほしいのが、工業的製法の考え方やね、工業的=ビジネスなんや。ビジネスってことはCl2をいかに安く作るかが大事なんや!
なので、原料は塩化ナトリウムNaClをつかう。
このNaClを水に溶かして電気分解することで、塩素が発生します。
もし、まだ電気分解があやふやな人が居たら、電気分解からちゃんと学んでいきましょう!「電気分解を学んでからこの記事を読む人はこちら」
このNaCl水溶液を電気分解する方法なのですが、これは特別な名前がついています。それが『陽イオン交換膜法』です。
この陽イオン交換膜法に関しては水酸化ナトリウムの製法として全力で解説しまくっていますので、こちらの記事をご覧下さい!
塩素の実験室的製法
それでは次は実験室的に塩素Cl2の気体を生成する方法をまとめていきます。
酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加える
酸化マンガンMnO2と濃塩酸を混ぜて加熱させると、塩素が出来上がります。
化学反応式を作成!
この反応は実は酸化還元反応なのです!酸化還元反応と言うのは、覚えるのは酸化剤と還元剤の反応前と反応後の物質だけでした。
酸化還元の反応式の詳しい作り方はコチラをご覧下さい
これにより、還元剤は塩化物イオンで酸化剤は酸化マンガン(IV)となります。
還元剤:2Cl-→Cl2+2e–
酸化剤:MnO2+4H++2e–→Mn2++2H2O
です。ここから電子が消えるようにこの反応式を足し合わせると、
MnO2+2H++2HCl→Mn2++Cl2+2H2O
となります。これを完全なる化学反応式にするために、両辺に2Cl–を加えます。すると、
MnO2+4HCl→MnCl2+Cl2+2H2O
となります。
塩素の製法の装置
この酸化マンガン(IV)と塩酸を反応させるパターンは、非常に入試問題で出やすいです。それは装置を使う上での注意点があるからです。
このような装置になります。
この装置では、記述問題で出題されるポイントが4つあります。この4つに確実に答えられるようにしておいてください!めっちゃ頻出問題です!
記述問題出題ポイント①「水の役割」
なぜ水をくぐらせなあかんねんって言う話が出てきます。これは塩化水素HClを取り除くためです。というのも、この反応は、加熱を必要としますよね。
HClは揮発性の物質です。加熱すると気体になります。すると、本来取り出したいのは、塩素だけなのに塩化水素までついて来てしまいます。
なので、水が登場します。HClは極性分子なので水に解けやすいのですが、Cl2は無極性分子ですので多少水に溶けにくいです。よって塩素だけ取り出すことが出来ます!
水への溶けやすさと極性の関係は、コチラをご覧下さい。
記述問題出題ポイント②「濃硫酸の役割」
濃硫酸ゾーンに到達するまでに塩酸(HCl+水)の水やその前に塩化水素を取り除くタメの水が塩素に含まれちゃっています。つまり、その気体は塩素と水の混合物になっているのでこの気体の水を取り除くためにこの濃硫酸は使われます。
乾燥剤ではないですが、濃硫酸は脱水剤としても使われます。
記述問題出題ポイント③「水と濃硫酸の順序を逆にしてはいけない理由」
それでは、ここまで勉強してきたら何となくわかるかもしれませんが、水と濃硫酸は逆にすると、思うように塩素のみを取り出すことが出来ません!
このように水→濃硫酸の順番でないと行けません。その理由は、濃硫酸のあとに水をくぐらせると、水蒸気を含んだ塩素が取り出されてしまうからです。
記述問題出題ポイント④「下方置換を使う理由」
塩素は水に少し溶け、空気の平均分子量(28.8)よりも塩素分子が大きいため下方置換を使います。
ちなみに塩素と水の反応は、
Cl2+H2O→HCl+HClO
になって塩化水素と次亜塩素酸になります!
加熱の有無は覚えるしか無い?
まさか!
そんなことはないよ!1個ずつ覚えるなんて絶対に無理!こういうときは、加熱するっていうパターンが4個あるから、そのパターンだけ頭に入れておけば、ええよ!Cl-を還元剤として使えばすべて塩素は発生する
この塩素の製法ですが、これは、塩素が還元剤として働けば塩素の単体を取り出すことは可能です。例えば、硫酸酸性で塩化カリウムと酸化マンガン(IV)であっても塩素は発生します。
還元剤:2Cl-→Cl2+2e–
酸化剤:MnO2+4H++2e–→Mn2++2H2O
です。ここから電子が消えるようにこの反応式を足し合わせると、
MnO2+2H++2HCl→Mn2++Cl2+2H2O
となります。
②さらし粉に塩酸を加える
さらし粉にCaCl(ClO)・H2O塩酸を加えると気体の塩素が発生します!
実はこれなんですが、2つの反応が起こって塩素が発生しているのです!
この反応は意外と複雑な2つの反応が起こっているので、さらし粉の反応をまとめた記事を書きました!
まとめ
塩素の発生反応は、塩化物イオンの還元反応が絡んできます。
電気分解も酸化還元ですし、MnO2と塩酸の反応も酸化還元です!塩化物イオンの還元剤としての性質をキッチリ覚えておきましょう!
酸化マンガンに濃硫酸を加えるときの酸化マンガンの半反応式で、MnO4-+5e-+8H+ →4H2O+Mn2+ではダメなのでしょうか?
MnO4–は酸化マンガンではないから駄目ですね
◯✖️問題で
水素と塩素の混合気体に強い光を当てると、光化学反応が起こって塩化水素が生成する。というのが◯でした。
写真フィルムのAgBrとかはハロゲンの酸化数が増えるのにこの反応は減るのが理解出来ません。
ハロゲンは酸化数 -1~0 を取るのでハロゲン単体(酸化数0)から反応するときは酸化数が減り(還元され)(酸化し)、その逆は酸化数が増えるのは当然です。
水と濃硫酸を逆にすると、なぜ水蒸気を含んだ塩素が取り出されるのかがよく分かりません。
よく考えてみてください。順番を逆にすると、まず、濃硫酸で「水」を吸収しますよね。その次に気体の塩化水素を吸収するのにまた「水」を使ってしまったら、さっき濃硫酸で「水」を吸収した意味がなくなってしまいますよね。なるほどなっと思ってくれたら嬉しいです。
変わって回答ありがとうございます。
そりゃ、せっかく濃硫酸で脱水したのに、また水に晒したら水蒸気含むでしょ。
塩化水素を吸収する水のところを水酸化ナトリウムにすることはできますか?
わざわざ水で済むのにNaClにする必要はないけど、やればできると思います