どうも受験化学コーチなかむらです。
本記事ではこの乾燥剤について徹底的にまとめていきます。この記事を読むと以下のことがマスターできます。
- 気体に合わせた乾燥剤の選び方
- なぜ使ってはいけない乾燥剤があるのかの理由
- 高校化学で知っておくべき乾燥剤一覧
- 濃硫酸にH2Sを使ってはいけない理由
ぜひ最後までお読みください。
目次
気体の乾燥剤の覚え方
そもそも乾燥剤とは、目的の気体から『水』を取り除いて乾燥させるものです。
乾燥させたい気体と反応しない乾燥剤を選ぶ。
乾燥剤と乾燥させたい気体が反応しないようにします。
例えば、塩基性の気体であるアンモニアNH3に酸性の乾燥剤の濃硫酸H2SO4を使ってはいけないってことです。
H2SO4+2NH3→(NH4)2SO4
中和反応を起こしてしまい、水だけでなくアンモニアも濃硫酸に吸収されてしまいます。
気体と乾燥剤の組み合わせ表
乾燥剤 | 化学式 | 性質 | 乾燥可能な気体 | 乾燥に不適当な気体 |
十酸化四リン 濃硫酸 |
P4O10 H2SO4 |
酸性 | 中性または酸性の気体 | 塩基性の気体(NH3) NH3 および還元性の気体(H2S)※理由 |
塩化カルシウム シリカゲル |
CaCl2 SiO2・nH2O |
中性 | ほとんどすべての気体 | NH3は不可(CaCl2・8NH3となるため) 特になし |
酸化カルシウム ソーダ石灰 |
CaO CaO+NaOH |
塩基性 | 中性または塩基性の気体 | 酸性の気体(Cl2, HCl, H2S, SO2, CO2, NO2) |
高校化学で習う乾燥剤をそれぞれ解説!
- 濃硫酸
- 十酸化四リン(P4O10)
- 塩化カルシウム
- シリカゲル
- 酸化カルシウム
- ソーダ石灰
高校化学で登場する乾燥剤は蒸気の6つです。
乾燥剤としては濃硫酸や塩化カルシウム、ソーダ石灰がよく出ます。
ただし、どれも高校化学で重要な物質ですので
酸性乾燥剤
濃硫酸
濃硫酸の定義:98%ほど
だから水をとにかく手に入れたいんですよね。オキソニウムイオン
塩基性の気体のアンモニア
強還元剤H2S
アンモニアに使えないのは当たり前ですよね。
硫酸は酸性です。塩基性のアンモニアとは反応してしまうので、アンモニアの乾燥剤としては使えません。
濃硫酸は硫化水素H2Sの乾燥には使えません。
理由はH2Sは還元剤ですので、濃硫酸と酸化還元反応をしてしまうからです。
十酸化四リンP4O10
十酸化四リンは常温常圧下では白色の固体です。
水との反応生が非常に高いのが特徴で、発熱しながら水に溶けリン酸(H3PO4)になります。
この性質を利用し乾燥剤として広く利用されているほか、医薬品や農薬の原料にもなっているそうです。
でも一体どのように水と反応するのでしょう?
十酸化四リンには、6つの「P – O – P 結合」があります。
十酸化四リンが水と接触するとP – O – P 結合が加水分解によって切れ、4つのリン酸(H3PO4)分子になるのです。
これを化学反応式で表すと、下式のようになります。
P4O10 + 6H2O → 4H3PO4
十酸化四リン1分子あたり、6分子もの水分子と反応するので乾燥剤として用いられるのですね。
ただし、塩基性の気体には使えません。リン酸が酸性なので、塩基性気体は中和反応を起こしてしまうからです。
H3PO4+NH3→(NH4)3PO4
十酸化四リンに関して詳しくは以下の記事で解説しています。
中性乾燥剤
塩化カルシウムCaCl2
塩化カルシウムのように水に非常に溶けやすい物質は、空気中の水分さえも吸収しその中に溶け込もうとする「潮解性」があります。
この性質を利用し、塩化カルシウムは日常生活では上の写真のような湿気とりとして、化学の世界では「気体の乾燥剤」として用いられるのです。
中性乾燥剤なので幅広い気体の乾燥剤として使用できます。
しかし、アンモニアの乾燥には用いることができません。
CaCl2 + 8NH3 → CaCl2・8NH3
塩化カルシウムは元素分析の問題で非常によく出る乾燥剤です。
この二酸化炭素と水の質量を測定すれば、元の化合物にどれだけの炭素(C)・水素(H)・酸素(O)が含まれていたのかが分かり組成式が求められるのです!
元素分析について詳しい内容は以下の記事を参考にしてみてください。
塩化カルシウムに関して詳しく知りたい人は以下の記事でご確認ください。
シリカゲル
シリカゲルはケイ酸(H2SiO3)を脱水し、二酸化ケイ素の水和物(SiO2・nH2O)にしたものです。
しかし完全には脱水されていないため、構造の所々にケイ酸(H2SiO3)が残っています。
脱水によって多孔質になっていることに加え、ケイ酸が持つ-OHと水分子が水素結合を形成するため、多量の水分が吸収されるのです。
またシリカゲルが乾燥剤として優れているのは、加熱乾燥することで繰り返し使えるという点。
多くのシリカゲルはどのくらい水分を吸ったのかを把握するため、水に触れると青色→桃色に変わる塩化コバルトが混ぜてあります。
吸湿し桃色になったシリカゲルを、フライパンや電子レンジで加熱すると…
再び青色になります。
これは乾燥剤の性能を取り戻したサインです。とてもエコなんです。
シリカゲルの製法や反応式などは以下の記事に詳しくまとめました。シリカゲルの作り方も入試で問われることがありますのでぜひこちら参考にしてみてください。
塩基性乾燥剤
酸化カルシウムCaO
酸化カルシウムは生石灰乾燥剤と言われます。酸化カルシウムのことを生石灰といいます。
酸化カルシウムは水と反応して消石灰(水酸化カルシウム)になります。
CaO+H2O→Ca(OH)2
この水を吸収する反応から酸化カルシウムは乾燥剤として使われます。
ちなみに水酸化カルシウムのことを消石灰といいます。(名前の由来に関しては「生石灰と消石灰の違いを楽勝で区別して一発で覚える方法!」でご覧ください。)
詳しくは酸化カルシウムの乾燥剤としての働きについてまとめた以下の記事をご覧ください。
ソーダ石灰
ソーダ石灰とは酸化カルシウムを水酸化ナトリウムでコーティングしたものです。
水酸化ナトリウムは気体の中の水を吸収する力が強いです。これを潮解性と言います。
ただ潮解性があまりにも強いので、水酸化ナトリウムだけだと水浸しになってしまいます。
この水分を吸収してくれるのが酸化カルシウム(生石灰)です。
水酸化ナトリウムの吸湿性の強みを生かしつつ、ベタベタになってしまうデメリットを酸化カルシウムが補ってくれているのです。
ソーダ石灰に関して詳しく知りたい方は以下の記事をお読みください。
気体の生成関連の知識まとめ記事
気体の生成反応は無機化学の中でも非常に重要なテーマです。
実験器具、検出反応、生成反応の化学反応式など様々な重要テーマがあります。
ぜひ詳しくお読みください。
- 気体生成反応の化学反応式の作り方
- 受験で出る気体生成反応の「実験器具・発生装置」まとめ
- 気体の検出反応3パターン