【高校化学】酸性・塩基性・中性乾燥剤の選び方と覚え方総まとめ

どうも受験化学コーチなかむらです。

しょうご
いろんなところで『乾燥剤』って出てきたけど、乾燥剤だけでまとめて覚えたい。
しょうご
結局、高校化学で覚えておくべき乾燥剤ってどれだけあるんだろうか?

本記事ではこの乾燥剤について徹底的にまとめていきます。この記事を読むと以下のことがマスターできます。

本記事で学べること
  • 気体に合わせた乾燥剤の選び方
  • なぜ使ってはいけない乾燥剤があるのかの理由
  • 高校化学で知っておくべき乾燥剤一覧
  • 濃硫酸にH2Sを使ってはいけない理由

ぜひ最後までお読みください。

目次

気体の乾燥剤の覚え方

そもそも乾燥剤とは、目的の気体から『水』を取り除いて乾燥させるものです。

しょうご
逆に水以外のものを取り除いてしまうとおかしなことになりますね!
乾燥剤の選び方

乾燥させたい気体と反応しない乾燥剤を選ぶ

乾燥剤と乾燥させたい気体が反応しないようにします。

受験化学コーチなかむら
酸性の気体には塩基性の乾燥剤を、塩基性の気体には酸性の乾燥剤を使っちゃいけないってことです!

例えば、塩基性の気体であるアンモニアNH3に酸性の乾燥剤の濃硫酸H2SO4使ってはいけないってことです。

H2SO4+2NH3→(NH4)2SO4

中和反応を起こしてしまい、水だけでなくアンモニアも濃硫酸に吸収されてしまいます。

受験化学コーチなかむら
乾燥したアンモニアを取り出すという目的が果たせなくなってしまいます!

気体と乾燥剤の組み合わせ表

乾燥剤 化学式 性質 乾燥可能な気体 乾燥に不適当な気体
十酸化四リン
濃硫酸
P4O10
H2SO4
酸性 中性または酸性の気体 塩基性の気体(NH3)
NH3 および還元性の気体(H2S)※理由
塩化カルシウム
シリカゲル
CaCl2

SiO2・nH2O
中性 ほとんどすべての気体 NH3は不可(CaCl2・8NH3となるため)
特になし
酸化カルシウム
ソーダ石灰
CaO
CaO+NaOH
塩基性 中性または塩基性の気体 酸性の気体(Cl2, HCl, H2S, SO2, CO2, NO2)

 

高校化学で習う乾燥剤をそれぞれ解説!

高校化学乾燥剤
  • 濃硫酸
  • 十酸化四リン(P4O10
  • 塩化カルシウム
  • シリカゲル
  • 酸化カルシウム
  • ソーダ石灰

高校化学で登場する乾燥剤は蒸気の6つです。

乾燥剤としては濃硫酸や塩化カルシウム、ソーダ石灰がよく出ます。

ただし、どれも高校化学で重要な物質ですので

酸性乾燥剤

濃硫酸

硫酸 構造式濃硫酸は非常に

濃硫酸の定義:98%ほど

だから水をとにかく手に入れたいんですよね。オキソニウムイオン

濃硫酸が使えない気体

塩基性の気体のアンモニア

強還元剤H2S

アンモニアに使えないのは当たり前ですよね。

硫酸は酸性です。塩基性のアンモニアとは反応してしまうので、アンモニアの乾燥剤としては使えません。

濃硫酸は硫化水素H2Sの乾燥には使えません

理由はH2Sは還元剤ですので、濃硫酸と酸化還元反応をしてしまうからです。

しょうご
あれ、濃硫酸って酸化剤じゃないはず。熱濃硫酸は酸化剤だけど、濃硫酸は酸化力はないって聞いたよ!
受験化学コーチなかむら
その認識は基本的に正しいけど、H2Sは還元剤としてかなり強いんだよ。だからその場合は濃硫酸も反応してしまうんですよ。

濃硫酸も乾燥剤に使えるの?吸湿の原理から使えない物質までを徹底解説!

十酸化四リンP4O10

十酸化四リン1

十酸化四リンは常温常圧下では白色の固体です。

水との反応生が非常に高いのが特徴で、発熱しながら水に溶けリン酸(H3PO4)になります。

この性質を利用し乾燥剤として広く利用されているほか、医薬品や農薬の原料にもなっているそうです。

でも一体どのように水と反応するのでしょう?

十酸化四リンには、6つの「P – O – P 結合」があります。
十酸化四リン2

十酸化四リンが水と接触するとP – O – P 結合が加水分解によって切れ、4つのリン酸(H3PO4)分子になるのです。
十酸化四リン3
これを化学反応式で表すと、下式のようになります。

P4O10 + 6H2O → 4H3PO4

十酸化四リン1分子あたり、6分子もの水分子と反応するので乾燥剤として用いられるのですね。

ただし、塩基性の気体には使えません。リン酸が酸性なので、塩基性気体は中和反応を起こしてしまうからです。

H3PO4+NH3→(NH4)3PO4

十酸化四リンに関して詳しくは以下の記事で解説しています。

十酸化四リン乾燥剤

【乾燥剤】十酸化四リンってどんな物質? 吸湿のしくみも徹底解説!

中性乾燥剤

塩化カルシウムCaCl2

塩化カルシウム塩化カルシウムのように水に非常に溶けやすい物質は、空気中の水分さえも吸収しその中に溶け込もうとする「潮解性」があります。

この性質を利用し、塩化カルシウムは日常生活では上の写真のような湿気とりとして、化学の世界では「気体の乾燥剤」として用いられるのです。

中性乾燥剤なので幅広い気体の乾燥剤として使用できます。

しかし、アンモニアの乾燥には用いることができません。

CaCl2 + 8NH3 → CaCl2・8NH3

塩化カルシウムは元素分析の問題で非常によく出る乾燥剤です。

 

元素分析この二酸化炭素と水の質量を測定すれば、元の化合物にどれだけの炭素(C)・水素(H)・酸素(O)が含まれていたのかが分かり組成式が求められるのです!

元素分析について詳しい内容は以下の記事を参考にしてみてください。

元素分析

元素分析の方法!ただちに組成式を確定させ、分子式を決定せよ!

塩化カルシウムに関して詳しく知りたい人は以下の記事でご確認ください。

【乾燥剤】塩化カルシウムの性質から用法までが5分で分かる徹底解説!

シリカゲル

シリカゲル ケイ酸

シリカゲルはケイ酸(H2SiO3)を脱水し、二酸化ケイ素の水和物(SiO2・nH2O)にしたものです。

しかし完全には脱水されていないため、構造の所々にケイ酸(H2SiO3)が残っています。

シリカゲル

脱水によって多孔質になっていることに加え、ケイ酸が持つ-OHと水分子が水素結合を形成するため、多量の水分が吸収されるのです。

またシリカゲルが乾燥剤として優れているのは、加熱乾燥することで繰り返し使えるという点。

シリカゲル 吸湿

多くのシリカゲルはどのくらい水分を吸ったのかを把握するため、水に触れると青色→桃色に変わる塩化コバルトが混ぜてあります。

吸湿し桃色になったシリカゲルを、フライパンや電子レンジで加熱すると…

シリカゲル 乾燥

再び青色になります。

これは乾燥剤の性能を取り戻したサインです。とてもエコなんです。

シリカゲルの製法や反応式などは以下の記事に詳しくまとめました。シリカゲルの作り方も入試で問われることがありますのでぜひこちら参考にしてみてください。

【乾燥剤】シリカゲルとはどんな物質? 水を吸着するメカニズムも解説!

シリカゲルの製法

水ガラスやシリカゲルの製法まとめ!化学反応式の作り方!

塩基性乾燥剤

酸化カルシウムCaO

酸化カルシウムは生石灰乾燥剤と言われます。酸化カルシウムのことを生石灰といいます。

酸化カルシウムは水と反応して消石灰(水酸化カルシウム)になります。

CaO+H2O→Ca(OH)2

この水を吸収する反応から酸化カルシウムは乾燥剤として使われます。

ちなみに水酸化カルシウムのことを消石灰といいます。(名前の由来に関しては「生石灰と消石灰の違いを楽勝で区別して一発で覚える方法!」でご覧ください。)

詳しくは酸化カルシウムの乾燥剤としての働きについてまとめた以下の記事をご覧ください。

酸化カルシウム

酸化カルシウム(生石灰)の乾燥剤としての働きや使えない物質を徹底解説!

ソーダ石灰

ソーダ石灰

ソーダ石灰とは酸化カルシウムを水酸化ナトリウムでコーティングしたものです。

水酸化ナトリウムは気体の中の水を吸収する力が強いです。これを潮解性と言います。

ただ潮解性があまりにも強いので、水酸化ナトリウムだけだと水浸しになってしまいます。

潮解性

この水分を吸収してくれるのが酸化カルシウム(生石灰)です。

水酸化ナトリウムの吸湿性の強みを生かしつつ、ベタベタになってしまうデメリットを酸化カルシウムが補ってくれているのです。

ソーダ石灰に関して詳しく知りたい方は以下の記事をお読みください。

ソーダ石灰とは?乾燥剤としての役割と使えない気体の理由を徹底解説!

気体の生成関連の知識まとめ記事

気体の生成反応は無機化学の中でも非常に重要なテーマです。

実験器具、検出反応、生成反応の化学反応式など様々な重要テーマがあります。

ぜひ詳しくお読みください。

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浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。