【強烈】塩化水素とは?恐るべき性質や化学式、塩酸との違いまで徹底解説!

塩化水素のアイキャッチ画像

どうも、受験化学コーチわたなべです。

しょうご
中学校の頃からよく塩酸を実験に使ってきたけど、なんでいつも「うすい塩酸」なんだろう? 濃塩酸は実験に使わないの?
受験化学コーチわたなべ
塩酸は毒性を持つ「塩化水素」という気体が水に溶けたもの。濃度25%以上の濃塩酸はこの危険な塩化水素を絶えず放出しているので、学校での実験ではあまり使われないんだ!
しょうご
塩化水素こえー!!

ハロゲン化水素の代表ともいえる塩化水素。

水溶液である塩酸は代表的な強酸として、教育現場や化学工業、さらには洗剤の成分としても幅広く利用されています。

硝酸や硫酸とは異なり、塩酸は塩化水素という「気体」が水に溶けたもの。

したがって揮発性があるのが特徴です。

この記事では塩酸と塩化水素の性質について、詳しく解説していきます。

ハロゲン化水素全般について詳しく知りたい人は、こちらの記事を読んでみて下さい。

塩化水素&塩酸の性質

塩化水素塩化水素は常温常圧環境下では、二原子分子の気体。

化学式はHClです。

無色ですが刺激臭があり、吸入すると呼吸器系に障害を負う恐れがあるため取り扱いには十分注意してください。

水への溶解度が67g/100mlと高いので、容易に水に溶け強酸の水溶液となります。

この水溶液が代表的な強酸である塩酸

濃度が10%を超えるものは劇物に指定されています。

 

塩化水素はイオン結合?共有結合?

塩化水素は水に溶けると下のように電離し、水素イオンと塩化物イオンを生じます。

HCl → H+ + Cl

このようにイオンになることから「塩化水素は水素イオンと塩化物イオンがイオン結合した物質」だと考える人が多いようですが…

じつはこの結合は共有結合です!

これを理解するためには「電気陰性度の差と結合の関係」について理解する必要があります。

 

イオン結合

イオン結合はナトリウム(電気陰性度0.9)と塩素(電気陰性度3.2)など、電気陰性度に大きな差があるときにできる結合で、金属と非金属の結合のことです。

正の電荷を持った陽イオンと負の電荷を持った陰イオンが規則正しく配列し、イオン結晶をつくります。

 

共有結合

一方共有結合は炭素(電気陰性度2.6)と水素(電気陰性度2.2)など、 電気陰性度の差が小さい時にできる結合。

電子を共有し、分子となることが多いです。

 

共有結合(極性あり)

では水素(電気陰性度2.2)と塩素(電気陰性度3.2)の場合は?

電気陰性度の差は1.0。

電気陰性度の差がおよそ1.7以下の時は共有結合になるので、H-Clは共有結合をします。

電気陰性度の差と結合の種類

しかし電気陰性度の差=1.0という値は、他の共有結合と比べたら大きいです。

炭素と水素の電気陰性度の差はわずか0.4ですし、H2のような水素分子だと電気陰性度の差は0です。

そのためH-Clの結合は「イオン結合寄りの共有結合」となります。

通常状態では共有結合した二原子分子の気体ですが、水に溶けると電離しイオンになる、というわけです。

共有結合とイオン結合、さらに金属結合の違いについて詳しく知りたい人は、この記事を読んでみて下さい。

 

塩化水素の製法は「揮発性酸遊離反応」

塩化水素は塩化ナトリウム(NaCl)に濃硫酸(H2SO4)を加えて発生させます。

NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl↑

塩化水素は水に溶けると電離し強酸である「塩酸」になります。

しかし上の反応の環境にはほとんど水がない(濃硫酸は濃度98%で水をほとんど含まない)ので、塩化水素が相手にH+を与える能力という酸の能力を発揮しにくい状況にあります。

本来はどちらも強酸である塩酸と硫酸の間に酸としての強弱の差はないのですが、上記の理由によりこの反応においては硫酸の方が塩酸より強くなるのです

そのため強酸が弱酸の塩から金属イオンを奪う揮発性酸遊離反応が起き、気体の塩化水素が発生します。

発生した塩化水素は水溶性のため収集方法は水上置換ではなく、下方置換です。

しょうご
待って!なんで “2NaCl + H2SO4 → Na2SO4 + 2HCl” にはならないの!?

硫酸には2つの電離があります。

第一電離(H2SO4 → H+ + HSO4)に比べると、第二電離(HSO4 → H+ + SO42-) はかなり起こりにくいので、この反応ではNaHSO4が生成するのです。

揮発性酸遊離反応について詳しく知りたい人は、こちらの記事を読んで見て下さい。

 

塩化水素はこんなところで使われている

鉄の洗浄

鉄骨

現代建築に不可欠な鉄鋼。

強度も弾性もあるため、ビルの骨組みや橋げた、鉄塔などに幅広く用いられています。

人類の発展を支えてきた鉄、実は一つだけ弱点があります。

それは「錆びやすい」ということ。

そのため鉄をむき出しで使う場合には、表面に亜鉛などでメッキを施します。

このメッキの前処理として、すでに錆びてしまった鉄鋼材の表面を洗浄するために使われるのが塩酸なのです。

Fe3O4 + Fe + 8HCl → 4FeCl2 + 4H2O

 上の反応により、表面の酸化鉄を溶かして洗い流します。

塩酸って、とっても重要な役割を担っていたんですね!

 

トイレ用洗剤

「酸が効く」のキャッチフレーズで有名なトイレ用洗剤は、塩酸を劇物指定ギリギリの濃度である9.5%も含んでいます。

トイレの黄ばみや匂いの原因となる尿石」の主成分は、炭酸カルシウム。

塩酸と下のように反応し、溶けます。

CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2

最近この洗剤を車のホイールのサビ落しやお風呂の掃除など、別の用途に使う人もいるようです。

しかし塩酸は、漂白剤やカビ落としの主成分である次亜塩素酸ナトリウムと反応して有毒な塩素ガスを発生します。

NaCIO + 2HCI → NaCI + H2O + CI2

過去には死亡事故も起きているので、洗剤を目的以外に使わないよう気をつけましょう。

 

胃液

胃

有害で危険な塩酸を体内で作る生物がいる…

と聞くと、一体どんな恐ろしい生物なんだと気になりますよね。

実はその生物は… あなた!

私たちの胃液は塩酸を含んでいます。

強力な酸で食べたものを分解し、腸に送っているんですね。

でもなぜ胃は、胃酸で溶けてしまわないのでしょう?

胃は塩酸と同時に粘液も分泌し、胃の表面を保護するのです。

しかしストレスやピロリ菌などで粘液の分泌が正常に行われなくなると、胃の表面が塩酸によってただれてしまいます。

この症状を緩和するのが、胃薬に含まれている炭酸水素ナトリウム

胃液中の塩酸を中和し、胃の痛みを和らげます。

NaHCO3 + HCl → NaCl + H2O + CO2

 

まとめ

塩化水素には次のような特徴があります。

  • 水溶液は塩酸と呼ばれる。
  • 塩化水素は共有結合による二原子分子だが、水に溶けると電離し強酸となる。
  • 塩化ナトリウムに濃硫酸を加えると揮発性酸遊離反応により発生する。
  • 鉄鋼の洗浄や洗剤に活用されている。