こんにちは。



強酸である塩酸や硫酸は危険な物質だけど、お酢やレモンのような弱酸は安全だと思っていませんか?
フッ化水素の水溶液であるフッ化水素酸、通称フッ酸は弱酸ですが、ガラスを溶かすほどの強烈な反応性があるのです。
この記事ではこのフッ化水素の性質について、徹底的に解説します!
塩化水素や臭化水素なども含めた「ハロゲン化水素全体」について詳しく知りたい人は、このまとめ記事を読んで見て下さい。
目次
フッ化水素はかなり変な物質

ハロゲンは周期表では希ガスの一つ前に位置し、電子をもうひとつ受け取りたい性質があります。
また水素は電子をひとつ手放したい性質があるので、ハロゲン化水素はハロゲン原子ひとつと水素原子ひとつが結合した
HX
という分子を形成しており、水に溶けると
HX → H+ + X–
のように電離し、強酸となります… と言いたいところですが、フッ化水素(HF)だけはこの法則が当てはまりません!
なんとフッ化水素は、下の模式図のような構造なのです。

フッ素は全元素の中で最大の電気陰性度(4.0)を持ちます。
つまり結合に使っている電子を、ものすごい強力に引きつけてしまうのです。

その結果HF分子には強い極性が生まれ、水素結合によって次々とつながっていきます。(会合)

結果として電離度が小さくなるので、「弱酸」になるというわけです。
また会合により、沸点も他のハロゲン化水素よりかなり高くなります。
種類 | 電離度 | 沸点(℃) |
フッ化水素(HF) | 0.10 | 20 |
塩化水素(HCl) | 0.93 | -85 |
臭化水素(HBr) | 0.94 | -67 |
ヨウ化水素(HI) | 0.95 | -35 |
フッ化水素の製法は「揮発性酸遊離反応」
フッ化水素は白金か鉛の容器中で、ホタル石=フッ化カルシウム(CaF2)と濃硫酸(H2SO4) を加熱すると発生します。
CaF2 + H2SO4 → CaSO4 + 2HF↑
これはフッ素水素が弱酸であることを利用し、強酸によって遊離させる反応です。
水溶液中で反応させる場合は弱酸遊離反応というのですが、この反応にはほとんど水が含まれていませんので揮発性酸遊離反応と呼ばれます。
HFの分子量は20なので、平均分子量が28.8の空気より軽いです。
しかし上記の通り水素結合による会合によって分子がつながっており、空気より重くなるため下方置換で捕集します。

揮発性酸遊離反応について詳しく知りたい人は、こちらの記事を読んで見て下さい。
フッ化水素は工業的に重要な物質

フッ化水素はガラスを腐食する性質があるため、ガラスのエッチングやくもりガラスの製造に用いられています。
ガラスの主成分は二酸化ケイ素(SiO2)。
酸素原子とケイ素原子が立体網目状に共有結合した、かなり腐食に強い物質です。
しかしフッ化水素酸に接すると酸素よりも大きい電気陰性度を持つフッ化物イオンが、酸素を押しのけてケイ素と結合し水溶性の錯イオンを作ります。
SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O
この結果、ガラスが溶けてしまうのです。
ガラス瓶に保存できないフッ化水素酸は、ポチエチレンなどの合成樹脂製の容器に保存します。
またフッ化水素は気体の状態でも、下の反応によってガラスを腐食します。
SiO2 + 4HF → SiF4 + 2H2O
もし触るとどうなる?

フッ化水素は人体も侵します。
過去には、フッ化水素による人身事故もいくつかあります。
取り扱う際には十分な注意が必要です。
まとめ
フッ化水素には次のような特徴があります。
- 水溶液はフッ化水素酸やフッ酸と呼ばれる。
- フッ化水素は他のハロゲン化水素と異なり弱酸だが、反応性は大きい。
- 弱酸になる原因は水素結合による会合。
- ガラスを溶かす。
- 人体に有害。
以上です。参考にしていただけると幸いです。