こんにちは。
このような無機化学への悩みを持っている人は多いのではないでしょうか?
受験生の間で『無機化学は暗記』とよく言われます。確かに無機化学ではこれまで学習してきた化学基礎や理論化学よりも覚えることは多いですし、そもそも知らない元素も出てきます。
今回は非効率的な無機化学の勉強法をしている受験生のために、合理的に無機化学の知識を身につけ、大学受験レベルに仕上げる方法をご紹介していきます。
目次
無機化学とは元素の種類をたくさん知る学問です。ちょっとこれだけでは意味不明ですよね。
有機化学って、炭素だらけでしたよね。炭素がどういう順番で結合するか?や炭素が何重結合するのか?ということを学びましたよね?(まだ習ってない人はそういう学問だと覚えておいてください)
有機化学は「炭素の形」の学問です。それに対して無機化学は「元素の種類」の学問です。
例えるなら、有機化学は同じ登場人物だけで毎回完結するサザエさんに似ています。対して無機化学は大量の登場人物が出てきて、敵も味方も種類がたくさんいるワンピースみたいなものです。
クロムとか、マンガンとか、カルシウムとか、馴染みのない元素が出てきて戸惑うことも多いでしょう。ただし、勉強の手がかりが全くないわけではありません。
無機化学の勉強の手がかりが『周期表』です。特に無機化学で重要になるのは縦の族です。周期表の同じ列にあるものをくくって『族』といいます。
上記の青枠の部分はアルカリ金属と呼ばれます。
同じ族の元素は似たような反応の仕方をするし、似たような性質を持ちます。理由は価電子の数が同じだからです。
このような法則性を使って勉強していくと、全てを丸暗記しなければならないわけではないことがわかります。
有機化学:炭素が主役。物質の種類は「形」で決まる。
無機化学:全ての元素が主役。物質の種類は「元素の種類」で決まる。
有機化学では「構造決定」という問題が出ます。形の学問だから構造を決定することが重要です。。一方無機化学は種類ですので、元素ごとの性質が問われることが多いです。
大学受験で無機化学はどのように出題される?
結論、無機化学は理論化学との融合問題として出題されます。
共通試験では無機化学単体で問題が出ることはありますが、二次試験や私立大学の一般試験なんかではほとんど無機化学単体で出題されません。
最終的には理論化学の問題に帰着します。なぜなら、無機化学なら最悪丸暗記でもなんとかなってしまうからです。
- 沈澱の知識を使いながら溶解度積のような化学平衡の計算問題
- 工業的製法の問題に絡めて電気分解の計算問題
- 気体の製法の知識を確かめつつ混合気体の計算問題
人気のある有名大学や難関国立大学は、丸暗記しかやっていないような人をなるべく入学させたくありません。
丸暗記だけでは乗り越えられないように、無機化学の入試問題のほとんどは理論化学と絡めて出題されます。
なので、「無機化学=丸暗記」という考え方は入試問題を解く上でも不利に働きます。この後解説します通り、無機化学では「化学基礎、理論化学」の知識を組み合わせて使っていきましょう。
無機化学の効率の良い勉強方法
- 覚えることのメンテナンスにかかる時間を減らしましょう(ゴロ)
- どうせ理論化学が出題されるので理論化学の知識をフル動員しましょう
- 不完全でもいいから問題を解きましょう
無機化学に限りません。人は記憶するときに、「意味が通っていること」「論理的であること」「感動的したこと」「頑張って思い出したこと」「繰り返したこと」を脳に深く刻む傾向があります。
このどれか(または複数)を含めて勉強すれば、無機化学の知識も記憶に残りやすくなります。それらの具体的な方法をご紹介していきます。
化学基礎や理論化学の知識で化学反応式を作る
無機化学で覚えなければならない化学反応式の数はかなり少ないです。
ほとんど自分で作り出せます。ある参考書に覚えろと書かれていた反応式に以下のものがあります。
3Cu+8HNO3→3Cu(NO3)2+2NO+4H2O
これは別に化学反応式を覚える必要はありません。酸化還元の知識がありましたら、すぐに作り出すことができます。
この酸化剤と還元剤を使った酸化還元の定義がわからない人は、「酸化還元の最重要定義!学校では教えてくれない受験テクとは?」で確認しておいてください。
例えば、気体の製法の化学反応式も簡単に作ることができます。
(+)NO32-+3e–+4H+→NO+2H2O
( – )Cu→Cu2++2e–
半反応式から化学反応式を作り出せば、いちいちこんなものを覚える必要はありません。
ちなみに、半反応式の覚え方は「酸化剤と還元剤の半反応式の作り方!極限まで暗記を減らす方法」こちらの記事で解説しています。
この他に無機化学を勉強する上で必要な化学基礎や理論化学の知識は、以下の通りです。
無機化学を学習する前に、これらの単元があやふやな人は勉強し直してみてください。
縦の勉強をした後に「テーマ別」の勉強をする
周期表の縦列ごとに勉強していきます。元素は縦の族ごとに似た性質を持っています。下はアルカリ金属と呼ばれる1属元素です。
同じ族の元素は同じような性質を持っているので理解しやすいです。
この次は族の元素ごとではなく、テーマ別の勉強をしていきます。
縦の族ごとに勉強した知識を、族を飛び越えてテーマごとに勉強していきます。
無機化学の代表的なテーマは以下のようなものです。
- 陽イオン系統分析
- 気体の製法
- 工業的製法
- イオン化傾向
これらのテーマは族を横断して整理していきます。
縦の勉強が英文法や英単語の勉強で、この章の「テーマ別の勉強」が英語の長文を読むようなイメージです。縦の勉強で入れた知識を、テーマ別の勉強で少しずつ定着させたり理解を深めたりしていきます。
大学受験の入試問題として題材になりやすいのは、テーマ別の勉強です。大学受験でも英単語テストは出ませんよね?英語長文のテストは出ます。
これと同様にテーマ別で無機化学の知識をより定着していきます。
族ごとの知識を一度勉強しても、絶対に完璧に理解することはできません。族の勉強をして知識が50%も定着していなくてもテーマ別の勉強に移行しましょう。
丸暗記しなければいけないこととしなくて良いことを把握する
無機化学には残念ながら丸暗記しなければならない部分があります。逆に丸暗記しなければならない部分を知れば、丸暗記しなくても良い部分もわかります。
この記事の中でも「無機化学の中で丸暗記しなければならないこと」はまとめてあります。
丸暗記しなければならないことだけを覚えておけば、それ以外は覚えなくて良いことがわかります。
暗記するならゴロを使う
どうしても覚えられないものは、ゴロを使って覚えましょう。炎色反応や原子番号の順番などの無機質な情報に『意味』を加えるのがゴロです。
歴史の勉強でも、ストーリーは理解できますが、年号となると最終的に丸暗記するしかありません。そういう時は、ゴロを使いますよね。
794年:平安京 鳴くよ(794)ウグイス平安京
1603年:江戸幕府設立 やっと天下を拾おうさ(1603)
とゴロを敬遠する人もいます。しかし、どのみち高校化学の勉強で「本質」までたどり着くことはできません。
受験勉強はある種ゲームなので、サクッとうまく丸暗記できるなら語呂を使いましょう。
完璧に覚えていなくても問題を解く
無機化学の勉強をしている受験生を見ていると、どうしても覚え切ってから問題を解きたい症候群を発症する人が多いです。
問題でつまづくたびに、「やっぱり覚え切ってないからだ!」と元に戻る人が多いです。これだと成長が遅いんですよ。
例え完全に覚えられていなくて、思い出そうとしても思い出せなくてもどかしい気持ちになるかも知れません。それでも問題集を解きましょう。
知識を完璧にしてから問題集を解くのではありません。問題集を解くことはアウトプットです。アウトプットをすることで知識を定着させる意識を持ちましょう。
ダメな教師や参考書を使わない
高校の化学の教師って結構ひどいなって思うことが多々ありました。
無機化学は高校の化学の進捗が悪いときに、飛ばされる可能性が高い分野ランキング堂々の1位です。
高校のカリキュラム的に、無機化学は雑に扱われることが多いです。化学は教育課程のカリキュラムを終わらせられない先生が多いからです。
「これ覚えといて!」
と化学反応式が羅列されたプリントが渡されることがあります。こういう教師にあたった場合は、無機化学に関して高校の授業をあてにするのはやめましょう。
また、参考書によってはこのサイトで「覚えなくて良い」と言っていることを「覚えろ!」と言っているところがあります。
丸暗記って人間が本来やるべきことではないので、なるべくやらないで済むようにしましょう。
無機化学で丸暗記するしかないこと
無機化学で丸暗記するしかないものをまとめていきます。納得して覚えることと、丸暗記は違うと思ってます。
覚えることは理解しながら納得することで頭に残りやすいです。一方で、丸暗記は理屈もあまりなく、本当に覚えることが大変です。
周期表の順番は典型的な丸暗記ですよね。このような丸暗記するしかないことを紹介します。
沈澱のペア
無機化学のイオンで沈澱するパターンですね。
例えばAgClは沈澱するけど、
もちろん、これって電気陰性度を理解していればある程度予測はつきます。だけど細かい部分で、沈澱するしないを完全に法則で見分けることはできません。
ちゃんと覚えてしまった方が無難です。なので、どのイオンが沈澱するのかどうかは覚えてしまいましょう。「沈殿生成反応を語呂合わせで一瞬で頭に焼き付ける覚え方公開!」の記事でまとめてみました。
沈澱の色
これは高校化学で説明することはできないし、大学だと計算で求められないことはないですが、大学生でも計算でわざわざ出すようなことが必要になることはありません。
沈澱の色は「陽イオン系統分析」という共通試験で非常によく出る題材で必須の知識です。これを覚えていないと解けない問題もあるので、沈澱するイオンのパターンと沈澱の色は丸暗記しておきましょう。
これはゴロで片付けましょう。
工業的製法の中の化学反応式
工業的製法で出現する化学反応式の中には、覚えるしかないものもあります。
例えば、オストワルト法なんかがわかりやすいです。
オストワルト法とはアンモニアから硝酸を工業的に作る方法のことです。
3NO2+H2O→2HNO3+NO
これってこれまでの理論化学の知識で作れる化学反応式ではないですよね?
工業的製法ってこのように無理やり起こしている反応も多いんです。だから、僕らではわからないことがほとんどなのです。なので、こういうのはゴロで覚えてしまった方が僕はいいと考えております。
この記事は無機化学の勉強法をお伝えする記事ですので、オストワルト法を深掘りはしません。もし知りたい人がいましたら、以下の記事でご覧ください。
このように工業的製法の中にはしばしば覚えるしかない化学反応式も出てきます。これは以下の工業的製法についてまとめた記事をご覧ください。
無機化学のおすすめの参考書
化学標準問題精講
化学標準問題集が無機化学の勉強に非常にオススメです。
化学の問題集ではよく重要問題集が使われますが、僕はこちらの標準問題精講の方がおすすめです。
先ほど話したように、縦の勉強と横の勉強の整理がうまくできているからです。
このように族ごとの分け方が綺麗になされています。またテーマごとの分け方もされています。
化学の標準問題精講で勉強すれば、ごちゃごちゃしてしまう無機化学の知識がすっきり整理されるでしょう。
大学受験の化学ではメインの問題集は標準問題精講を使うことをオススメします。
無機化学の最重点照井式解放カード
有名な照井式解放カードシリーズの無機化学です。
照井式ならこの記事で推奨している流れの勉強できます。
カードを持ち歩いて、いつでも復習できるようにしておきましょう。邪魔な参考書部分は置いておきながら、カードだけ持っていけばいつでも復習できます。
これみながら、説明できるかを確認すると良いでしょう。
化学受験テクニック塾
めちゃくちゃオススメです!笑
僕のサイトは、本記事でお伝えしたノウハウに乗っ取って作成されています。無機化学のカテゴリーを読んでみてください。
ちなみに、気体の製法を徹底網羅したPDF教材を配布しています。無料でダウンロードできますので、ぜひダウンロードしてみてください。
最後に
無機化学は正しく勉強すれば素早く攻略可能です。
多くの人が想像しているよりも無機化学の丸暗記は多くありません。あったとしても、今回紹介した記事で語呂も紹介しています。
なので、なるべく時間をかけずに問題を解きながらサクッと攻略していきましょう。