どうも、化学受験コーチなかむらです。
乾燥剤には酸性・中性・塩基性があり、酸性の気体には酸性乾燥剤を、塩基性の気体には塩基性乾燥剤を使う必要があります。
(中性の乾燥剤は、ほとんどすべての気体に用いることができます。)
乾燥剤の性質 | 代表的な乾燥剤 |
酸性酸化剤 | 十酸化四リン 濃硫酸 |
中性酸化剤 | 塩化カルシウム シリカゲル |
塩基性酸化剤 | 酸化カルシウム ソーダ石灰 |
この記事では酸性酸化剤である「十酸化四リン」の性質を詳しく解説します。
その他の乾燥剤について詳しく知りたい人は、こちら記事も読んで見てください。
目次
十酸化四リンの分子構造
十酸化四リンの化学式はP4O10です。
(組成式がP2O5なので、十酸化四リンは「五酸化二リン」と呼ばれることもあります。)
正四面体の頂点に位置するリン原子を共有結合した酸素原子がつなぎ、リン原子の非共有電子対には酸素原子が一つずつ配位結合しています。
十酸化四リンの性質と吸湿の仕組み
十酸化四リンは常温常圧下では白色の固体です。
水との反応生が非常に高いのが特徴で、発熱しながら水に溶けリン酸(H3PO4)になります。
この性質を利用し乾燥剤として広く利用されているほか、医薬品や農薬の原料にもなっているそうです。
でも一体どのように水と反応するのでしょう?
十酸化四リンには、6つの「P – O – P 結合」があります。
十酸化四リンが水と接触するとP – O – P 結合が加水分解によって切れ、4つのリン酸(H3PO4)分子になるのです。
これを化学反応式で表すと、下式のようになります。
P4O10 + 6H2O → 4H3PO4
十酸化四リン1分子あたり、6分子もの水分子と反応するので乾燥剤として用いられるのですね。
ただし冷水には完全に反応せず、メタリン酸((HPO3)n)を生じます。
十酸化四リンで塩基性の気体を乾燥できないワケ
もし十酸化四リンを「アンモニア」などの塩基性の気体の乾燥剤に使ったら、一体どうなるのでしょう?
上で確認した通り、十酸化四リンは吸湿するとリン酸(H3PO4)になります。
このリン酸は名前の通り酸性で、塩基性気体のアンモニアなどと以下のように反応しリン酸塩を生じてしまいます。
H3PO4 + 3NH3 → (NH4)3PO4
このため、十酸化四リンは塩基性気体の乾燥剤には用いることが出来ないんですね。
十酸化四リンの製法
十酸化四リンは、リンを空気中で燃焼させると生じます。
4P + 5O2 → P4O10
また工業的には、リン鉱石(3Ca3(PO4)2•CaF2)をコークス(C)、ケイ砂(SiO2)、鉄(Fe)と燃焼させることによって得ています。
まとめ
この記事では十酸化四リンの性質について解説しました。
- 十酸化四リンの化学式はP4O10
- 水との反応性が高いため強力な乾燥剤として用いられる
- 水とはP4O10 + 6H2O → 4H3PO4のように反応する
- 十酸化四リンは酸性酸化物なので、塩基性の気体の乾燥に用いることは出来ない