沈殿を再溶解させる方法まとめ錯イオンだけじゃない!

再溶解 沈殿

こんにちは。

陽イオンの系統分析で非常に重要な沈殿反応でありますが、それを再び溶液中に復活させる方法、つまり再溶解も非常に重要です。

目次

沈殿の再溶解のメカニズム

沈殿 再溶解
今回例として沈殿物AgClを使いました。

AgClは水に溶けにくい物質ですが、それでも若干は、AgCl⇄Ag++Clと言う溶解平衡が起っています

つまり、どういう事かと言うと、少しは水に溶けているのです。

少しだけあるAg+に対して配位結合して、錯イオンになれるものを入れると、錯イオンになる反応が進みます。
AgCl⇄Ag++Clの平衡で、Ag+が減少することで、この平衡が右に移動します

するとどんどん、平衡が移動して、沈殿がどんどん錯イオンに使われていきます。

このように錯イオンになり、再溶解します

沈殿の再溶解の方法まとめ

OHを過剰に加える事で、錯イオンになるものがあります。
そして、そのOHを加えるには、2つ方法があります。

 

 

その2つの方法とは、

①大量のNaOHを投入する

②大量のNH3を投入する
の2つです。

沈殿 再溶解

沈殿していたものを、錯イオンにして溶液中に呼び戻します。

 

 

ですが、全ての金属イオンがこの2つの方法で錯イオンになれるわけではありません。

 

 

 

それぞれの方法でなれる金属イオンが決まっています。と言うことで、それぞれ再溶解出来る金属イオンをまとめていこうと思います。

大量のNaOHを入れる事で再溶解

 

彼女ナオコ苦労せずああすんなり

過剰なNaOH Cr  Zn Al Sn Pb

そうです、いわゆる両性元素です!

 

 

 

こいつらは、[Zn(OH)4]2-や[Al(OH)4]などの錯イオンに変化して溶液中に溶け出します。

 

アンモニア水で溶け出す

 

大量のおしっこにあえいだあげくどうにげて

大量のNH3  Zn Ag Cu()Ni ()

出典:坂田アキラ

 

ちなみに大量のおしっこと言うのは、大量のアンモニアです。

 

NH3水と反応する沈殿は、Zn(OH)2,Ag2O,Cu(OH)2,などです。

これが、[Zn(NH3)4]2+になったり、[Ag(NH3)2]+
などのアンモニアが配位している錯イオンになります。

ああすんなり銀鉄道が延期

AlZnSnPb  Ag Fe Cu NH3+NaOH

と言う覚え方で、やっていきましょう!

 

そして、これのうち

あん ドーナッツあげ
NH3 Cu    Ag  Zn
(出典:宇宙1わかりやすい高校化学)

このような語呂を使う事で、アンモニアで再溶解するのはどれかな〜と言う事がわかります。

 

 

S2O32-(チオ硫酸イオン)aqを加える

S2O32-(チオ硫酸イオン)を加える事で再溶解できるのはAg+のみです。

AgClにS2O32-を加えると、[Ag(S2O3)2]3-
となりますこれは無色のイオンで再溶解します。

ちなみにこの錯イオンの名前は特殊で、
[Ag(S2O3)2]3-
をビス(チオスルファト)銀(I)イオンと言います。

まずビスは2を表します。そして、

なぜ、()がついているのかというと、

ビス(チオスルファト)にしないと、ビスチオと言う風にS原子が2個という意味に取られてしまう可能性があるからです。

 

錯イオン以外で沈殿を再溶解する方法

水温をあげる

PbCl2は、水への溶解度が大きいので、熱湯を多量に注いだだけで再溶解します

そして、鉄板の流れといえば、この後に再溶解したものにCrO42-を通すと、PbCrO4の黄色沈殿が出来ます。

PbCrO4 陽イオン系統分析

中和

Fe(OH)3の溶解 中和 再溶解 沈殿
このようにFe(OH)2は沈殿していますが少し溶けて弱塩基として働いています。

ここに、HClを加える事で中和反応がおこります。
陽イオン 沈殿 系統分析 再溶解
よって、FeCl2で溶液に溶けます。

この中和反応で出来る塩は、Clで沈殿が起きる、Pb2+,Hg22+,Ag+以外は水によく溶けます。

そして、このあとの鉄板の流れとしては、

Fe(OH)2(緑白色沈殿)の場合

Fe(OH)2→(HCl)→FeCl2(再溶解)→K3[Fe(CN)6]→濃青色沈殿

このようにK3[Fe(CN)6]のような鉄の3価とCNがそろうと濃青色沈殿が起ります。

これがFe2+の検出反応となります。

Fe(OH)3(赤褐色沈殿)の場合

Fe(OH)3→(HCl)→FeCl3(再溶解)→K4[Fe(CN)<sub.6]→濃青色沈殿になります。

このようにK3[Fe(CN)6]のような鉄の3価とCNがそろうと濃青色沈殿が起ります。

これがFe3+の検出反応となります。

CrO42-→縮合→Cr2O72-

CrO42-は強酸性条件で縮合しCr2O72-になる。

CrO42-塩に対してCr2O72-塩の方が水に対する溶解度が大きく、

BaCrO4等のクロム酸塩の沈殿にHNO3aqを加えるとCr2O72-(ニクロム酸塩)になり再溶解します。

このように、沈殿、再溶解を繰り返して陽イオンを決定していく系統分析が出題されます。なので、この沈殿反応もきっちり理解しておいてください!



8 件のコメント

  • ぴろぴろ より:

    再溶解と錯イオンの違いがわかりません。

    • 受験化学コーチなかむら より:

      並列するものではありません。沈殿が錯イオンになって溶解することを再溶解といいます。

  • たると より:

    錯塩は塩なのに再溶解ででてくるのがよくわかりません、、、塩は溶けないものを指すんじゃないんですか?中和の後に残ったイオンがくっついたら物質として生成しませんか?

    • 受験化学コーチなかむら より:

      塩は溶けないものをさすという認識の時点で間違ってます。
      おそらくだいぶ早い段階で理解をしくじってます。

      • たると より:

        返信ありがとうございます
        電離と溶解を区別できていませんでした、、
        錯塩は電離せずに溶解するという認識で合ってますか?

        • 受験化学コーチなかむら より:

          それも違いますね。
          電離したら溶解するので。
          塩の中に難容性のものがあると言うだけの話です。

  • おしお より:

    縮合し、という所が宿郷市、と誤字になっていたので直していただけるとありがたいです。
    一瞬なにか分かりませんでしたので…

    • 受験化学コーチなかむら より:

      誤字指摘ありがとうございます。
      修正いたしました。

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    浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。