どうも、化学受験コーチなかむらです。
実験室だけでなく、日常生活でも食品の乾燥剤などとして広く使われるシリカゲル。
しかしどのような物質で、どのように作用するのかは意外と知られていません。
この記事ではそんなシリカゲルについて、徹底的に解説します!
目次
シリカゲルとは
シリカ(Silica)は「二酸化ケイ素」を意味し、ゲル(Gel)は「固化したコロイド溶液」のこと。
つまり「シリカゲル」とは、ケイ酸(H2SiO3)をゲル化し二酸化ケイ素の水和物として乾燥させたもの。(より正確に言うと「キセロゲル」になります。)
構造式は SiO2・nH2O です。
ゾル・ゲル・キセロゲルについて詳しく知りたい人は、ぜひこちらの記事も読んで見て下さい。
乾燥剤のシリカゲルが水分を吸着するメカニズム
シリカゲルはケイ酸(H2SiO3)を脱水し、二酸化ケイ素の水和物(SiO2・nH2O)にしたものです。
しかし完全には脱水されていないため、構造の所々にケイ酸(H2SiO3)が残っています。
脱水によって多孔質になっていることに加え、ケイ酸が持つ-OHと水分子が水素結合を形成するため、多量の水分が吸収されるのです。
またシリカゲルが乾燥剤として優れているのは、加熱乾燥することで繰り返し使えるという点。
多くのシリカゲルはどのくらい水分を吸ったのかを把握するため、水に触れると青色→桃色に変わる塩化コバルトが混ぜてあります。
吸湿し桃色になったシリカゲルを、フライパンや電子レンジで加熱すると…
再び青色になります。
これは乾燥剤の性能を取り戻したサイン。
とってもエコロジーな乾燥剤ですね!
シリカゲルの製法
シリカゲルの原材料は、地殻の主成分である二酸化ケイ素(SiO2)。
石英やケイ砂として天然に大量に存在します。(ちなみに石英の巨大結晶は、宝石の「水晶」です。)
二酸化ケイ素を水酸化ナトリウム(NaOH)とともに融解すると、以下の反応によりケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)となり、
SiO2 + 2NaOH → Na2SiO3 + H2O
ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)の水溶液、通称水ガラスに塩酸(HCl)を加えると、弱酸であるケイ酸(H2SiO3)が遊離。
Na2SiO3 + 2HCl → 2NaCl + H2SiO3
水洗したケイ酸を加熱・乾燥させると、無定形個体のシリカゲルが得られます。
水ガラスからシリカゲルを生成する流れを詳しく知りたい方は以下の記事からご確認ください。
シリカゲルの意外な使われ方
吸湿性のある薬品を保存するデシケーターや、湿気に弱い食品(海苔やせんべいなど)の乾燥剤として広く使われるシリカゲル。
人体に無害なので、その他の用途にも幅広く使われます。
意外なところではビールの製造。
多孔質のシリカゲルは、ビールに含まれるタンパク質等の不要物質を吸着する濾過材として使われています。
またシリカゲルで満たした容器の中に生花を入れることで、短時間でドライフラワーが作れるのだとか。
せんべいの乾燥剤を貯めておいて、ドライフラワー作りに挑戦して見ても面白いかもしれません!
まとめ
この記事ではシリカゲルについて解説しました。
- シリカゲルは、二酸化ケイ素水和物の(キセロ)ゲル
- 組成式はSiO2・nH2O
- 水分子と水素結合を形成することによって吸湿する。
- 石英を水酸化ナトリウムと塩酸で処理することで製造される。