こんにちは。
世界共通で使われる国際単位系(SI)において定められた物質量の単位はモル(mol)。
アボガドロ定数6.02×1023は物質が1molになるための粒子の個数として定められた数です。
正確には6.02214076×1023ですが、便宜的に「6.0×1023」や「6.02×1023」が計算に用いされます。
このアボガドロ定数、いったいどのように定められたのでしょうか?
また単位や記号は存在するのでしょうか?
この記事では、高校化学に登場する計算問題の基本中の基本「アボガドロ定数」について徹底的に解説します。
SI単位である「モル」の求め方や計算について詳しく知りたい人は、この記事を読んでみて下さい。
目次
アボガドロ定数とは?どのように定められた?
12C原子を12gになるまでかき集めたら、約6.02×1023個必要になる!
こういう事実があるわけです。質量数12のC原子を12gになるまで集めるって覚えやすいじゃないですか。
この時の6.02×1023のことをアボガドロ定数と呼びまして、6.02×1023個原子が集まったまとまりを1molと定義したのです。
参考記事:物質量モル(mol)とは?モルの求め方や計算の本質を解説してみた
12Cの左肩についている「12」という数字が意味するのは質量数。原子核に含まれる陽子と中性子の数の和です。
つまり12Cは原子核が 6つの陽子と6つの中性子、合計12個の粒子で構成されている炭素原子を表します。
原子をするもう一つの粒子である電子の質量は無視できるくらい小さく、陽子と中性子の質量はほぼ同じため1molの12Cを12gと定めておくと、1molの14Nは14g、1molの16Cは16gになる、というわけ。
つまり1molあたりの質量が、それぞれの原子の質量数と同じになるのです。
それぞれの原子に含まれる粒子の数が分かれば1molあたりの質量も分かるという仕組み、とっても便利ですよね!
アボガドロ定数ってどのくらいの大きさ?
「6.02×1023」と言われても、いったいどのくらいの大きさの数なのかいまいちピンときませんよね?
使い慣れた単位で表すと「6020 億×1兆」が6.02×1023 ですが…まだまだイメージするのが難しいです。
では長さで表してみましょう。
6.02×1023cmはどのくらいの大きさだと思いますか?
我々の住む地球くらい?
太陽系の大きさくらい?
いえいえ、6.02×1023cmは銀河系約6個分の大きさになります!
さらに導入で登場した「米」でも考えてみましょう。
米粒1mol=6.02×1023個はどのくらいの量だと思いますか?
一生かかって食べきれるでしょうか?
米粒一粒の平均質量は0.02gなので、米1molだと1.2×1016トン。
現在、世界の米総生産量は年間約4.8×108トンなので、1molの米は全世界で生産される米2500万年分という計算になります。
とてつもなく大きな数だということが分かって頂けたでしょうか?
アボガドロ定数に関するよくある質問
アボガドロって誰?
アメデオ・アボガドロ(アヴォガドロ)は19世紀初頭に活躍したイタリア人科学者。
気体の性質について研究し「同温同圧下において、全ての気体は同体積中に同数の分子を含む」というアボガドロの法則を発見しました。
しかし驚きなのは、アボガドロ定数を作ったのはアボガドロじゃないということです!
物質1molに含まれる粒子の数にアボガドロの名前をつけたのはこの人、ジャン・ペラン。
彼は1909年に、苦労の末1molに含まれる粒子の数を決定し、この画期的な定数に尊敬する科学者アボガドロの名前を冠したのです。
アボガドロの没後53年後のことでした。
アボガドロ数とアボガドロ定数って同じもの?
6.02214076×1023という数字そのものがアボガドロ「数」です。
一方、この数字にモル数を掛けて粒子の数を求めるなど、計算に用いるときにはアボガドロ「定数」と呼ばれます。
アボガドロ定数に単位や記号はあるの?
アボガドロ定数は「1molに含まれる粒子の数」という意味をもっているので、単位は「/mol」です。
また「NA」や「L」という記号で表すこともできます。
ただし、計算をするときは『個/mol』だと思っておいた方が良いです。『/mol』だとあんまり意味がわからないですよね。
『個/mol』で覚えておくと、個という単位を見たときに
と瞬時に反応することができます。
なんで炭素(C)が基準なの?
アボガドロ定数の最初の基準は、炭素ではありませんでした。
実は、陽子を一つだけ持つ水素(1H)が基準だったのです。
しかし水素は反応性が高い気体である上、陽子と中性子はわずかに重さが違うため物質1molの質量と質量数にズレが生じてしまいました。
そこで次に白羽の矢が立ったのが酸素(16O)。
陽子と中性子を同数含み計算した時のズレが小さいため、1905年にアボガドロ数の基準とすることが正式に決定しました。
しかし酸素の問題は、容易に他の物質と化合してしまうということ。
そこで入手しやすく、安定した性質を持つ炭素(12C)が1960年に基準となりました。
ちなみに2019年に再定義が行われ、現在は物質を基準にせず、6.02214076×1023という数字そのものを定数に定めています。
なんでアボガドロ定数を求める実験にステアリン酸が使われるの?
ステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)は飽和脂肪酸の一種で、ろうそくの原料やシャンプーの添加剤として使われる物質です。
水に溶ける親水基(COOH)と水に溶けない長〜い疎水基(C17H35)を持つため、水面上で下図のように配列し、分子がずらっと横に並んだ単分子膜を作ります。
この単分子膜全体の面積を分子一個あたりの面積で割ると、分子の個数が分かるのでアボガドロ定数を求められる、というわけ。
具体的な計算方法についてはこちらの記事で詳細に解説していますので、ぜひ読んでみてください。
アボガドロ定数の語呂を使った覚え方
アボガドロ定数は「6.02214076×1023」ですが、「6.02×1023」の近似値が一般的には用いられます。
下の語呂を10回唱えて、しっかり覚えましょう!
アボガドロ兄さんの髪に注目してください。
帽子をかぶっていたせいか、前髪が蒸れてふにゃりとしちゃってますね!
まとめ
アボガドロ定数についての理解は深まりましたか?
重要なポイントをまとめてみましょう!
- アボガドロ定数は6.02214076×1023
- 一般的には6.02×1023が用いられる
- 単位は「/mol」、記号は「NA」か「L」
- 定義は「12Cがちょうど12gになる時の粒子の数」(2019年まで)