こんにちは。
金属結晶のうちの1つである「体心立方格子」について今日は解説していこうと思います。体心立方格子は金属結晶で一番最初に習うところなので、今化学基礎を学習している人にとっては、慣れないことも多いでしょう。
でも安心してください。この記事を読むことで、体心立方格子の出題ポイントは全てわかります。さらに面心立方格子や六方最密構造でも同じ箇所が問われますので、この記事で金属結晶の問題を解く考え方が全て身につきます。ぜひ最後まで読んでみてください。
※この記事はサクッと3分以内に読み切ることができます。時間に余裕がある人は最後の演習問題も解いてみてください。
目次
体心立方格子とは?
体心立方格子はこのような構造です。その名の通り、「立体の中心に原子がある立方体の単位格子」です。 NaやKのようなアルカリ金属、アルカリ土類金属がこの体心立方格子の結晶構造をとります。
体心立方格子で出題される5つのポイント
- 体心立方格子内の原子数
- 体心立方格子の配位数
- 密度
- 単位格子一辺の長さと原子半径の関係
- 充填率
これは、体心立方格子だけでなく全ての結晶の問題で問われる内容です。単位格子の問題の問われかたをまとめた記事がこちらになりますので、これをご覧ください。
体心立方格子内の原子数
単位格子内の原子の数は、出題されると言うより、当たり前のように使われます。なので、これはぱっぱと求められるようにしておいてください!
このように体心立方格子は、角に1/8個ある。
そしてこれが8カ所の角にあるため、1/8×8=1個
これに加えて立体の中心部の1個があるため、体心立方格子の内部にある原子の個数は2個であると言える。
体心立方格子の配位数

配位数とは、ある原子に着目したときに、その原子に最も近い距離(接している)にある原子の数の事です。
この体心にある原子の周りにどう見ても8個原子があります。よって配位数は8です。
密度
密度は機械的に求めろ! 密度の単位を確認して分子と分母を別々作り出すだけで求められる!
この金属結晶の密度というのは、『単位格子の体積中に原子の質量はどれだけか?』を表します。
難しく考えずに、密度というのは、単位を覚えてしまえば楽勝なのです。

このように単位を覚えます。( )内が重要です。単位格子全体、単位格子の中の原子の質量の全てです。そして、この単位さえ覚えてしまえば、残りは分子分母で別々に単位を求めていけば良いだけです。
なので、分子のg(全体)とcm3(全体)を別々に求めていきます。まずは、分子から求めていきます。この手の問題であたえられているのは、『原子量g/mol』『アボガドロ定数 個/mol』です。

と求めれば良いのです。原子量をM、アボガドロ定数をNa(Number of Avogadro)とおくと、

とあらわせます。(2は体心立方格子の単位格子内の原子の個数)めっちゃ簡単ですよね。意味を理解しなくても単位をいじくるだけで完全に作り出すことができます。
次に分母を求めていきますが、こちらは簡単です。単位格子の体積ですから、体心立方格子の単位格子の一辺の長さをaとします。
すると
cm3(全体)=a3
となります。
これによって、密度は分子/分母を組み合わせて

となります。これだけなんですよ。こういう計算は濃度計算のロジックを使います。濃度計算のように単位を変換するだけと決めます。
【最重要】単位格子の一辺の長さaと原子半径rの関係
単位格子の一辺の長さaと原子半径rの関係は、体心立方格子の中心の原子を通る対角線で切った断面図で求める。

断面図の対角線をaとrの両方で表すことができるので、

ここで関係式を作る。
この一辺の長さと原子半径の関係は、非常によく聞かれます。また、これ自体が聞かれなくてもこの後の「充填率」を求める時に必ず必要になってきます。
ここで、間違ってしまうと充填率の問題も間違ってしまうので、ここを最重要とさせてもらいました。逆にここさえできれば、充填率は単位を覚えて、計算するだけなのでそれほど難しいものではありません。
まず、原子半径と単位格子の一辺の長さの関係は、単位格子の対角線で真っ二つに体心立方格子を切ります。

まず、ここを原子半径rで表すと、
この対角線の長さは4rです。
そして、三平方の定理を使って、単位格子の一辺の長さaで表すと√3aとなります。
4r=√3aとなります。ちなみに、この関係式は後ほど使います。
この考え方は面心立方格子でも全く同じように使う事が出来ます。
充填率
充填率は単位を覚えて分子分母別々に作るべし!
充填率は、単位格子の中で原子がどれほどの体積を占めるのか? を数値化したものです。

なので、単位は、

になります。
先ほども止めた、原子半径rと単位格子の一辺の長さaが絶妙に効いてきます。
充填率の単位は

であるため、これを分子、分母別々に求めていきます。

このようになるため、

となります。
そして、ここに先ほど求めた4r=√3aを用います。これを変形して、

これを充填率の式に代入します。すると、a3が分子分母に現れてキャンセルされます。

百分率で表す事もあるため、68%で表す事もあります。
計算した結果、単位格子の一辺の長さaも原子半径rも分子分母で約分されて消されあった。つまり、体心立方格子を取る金属結晶は、単位格子の一辺の長さ、原子半径に寄らず68%であり、元素の種類によらない。
ちなみに、体心立方格子68%は覚えておいたほうがお得な数字です。
実際に体心立方格子の解法を使ってみよう
ココまでの知識をふまえれば基本的にだいたいの問題は解けます。
なので、是非この解法を運用していってみましょう。
次の文章中の空欄()に当てはまる数値をこたえよ。ただし(2)〜(4)は有効数字2桁で示せ。Fe=56,√2=1.41,√3=1.73,アボガドロ定数6.0×1023/mol
金属である鉄の結晶は体心立方格子を作っており、その単位格子中には(1)個の鉄原子が含まれる。鉄の単位格子の一辺の長さを2.9×10-8cmとすると、1cm3中にはおよそ(2)個の鉄原子が含まれる事になり、その密度はおよそ(3)g/cm3と求められる。また、最近接距離はおよそ(4)cmである。
出典:2008年近畿大学
答え
(1)2個
(2)8.2×1022
(3)7.7
(4)2.5×10-8
まとめ
体心立方格子のよく出題されるポイントは理解してもらえたと思います。今回教えた5つは、体心立方格子だけでなく面心立方格子、六方最密構造でも同様に出題されます。
なので、必ず何度も何度も復習して、次に面心立方格子や六方最密構造の記事にも進んでみてください。
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