黒鉛って不思議な構造ですよね。あの構造の密度を求めろって言われただけで、「うっ」ってなりますよね。
これまで、黒鉛の密度を求める問題で全く誘導がないものを見たことがありません。なんの説明もなく黒鉛の密度を求めろっていう問題はほとんど出ないでしょう。
がしかし、
大抵の誘導文は、超わかりにくいんですよ。だって図形を文章だけで説明するとかいうパターンが多いんですよ。なので、黒鉛の結晶構造がどのようになっているかを理解した上で求め方を学んでください。
ちなみに、なんとなく苦手意識を持っている理由は2つです。
- 黒鉛の結晶構造の単位格子がどれか把握する(繰り返しの最小単位)
- 単位格子内の原子数をなんとか求める
この2つがわかれば、密度なんて余裕です。密度が難しいのではなくこの2つが難しいのです。
※いきなり解法の説明に行きたいんですが、実はいきなり説明すると頭ちんぷんかんぷんになります。なので、まずは黒鉛の結晶構造をちゃんと理解してもらう必要があります。
※2:ちなみに、裏技も一番最後に紹介しています。正統派の解き方をすでに知っている人や、黒鉛の結晶構造がバッチリわかっている人は、記事の一番下の裏技から読んでもいいかもしれません。
目次
黒鉛の結晶構造を超詳しく調べて行きましょう

黒鉛はこのように層状に繋がっているんですが、第1層目と第2層目に注目してください。
これ、よく見ると若干ずれているのがわかりますよね。この層状構造を上から見ると、こうなります。

このように規則的にズレているんですよ。
黒鉛の繰り返し単位は?

黒鉛の繰り返し単位を把握する必要があります。今回は密度を求めることができたらいいので、別に厳密に単位格子である必要はありません。
六方最密構造のときにも、本当は単位格子は下の青線で囲まれたところでした。

しかし、密度計算をする場合は、もっと考えやすいように六角柱で計算しました。
それと同じで黒鉛の場合でも密度計算は、わかりやすい繰り返し単位で計算します。
黒鉛の密度はどの繰り返し単位から求める?

この六角形は少なくとも繰り返されています。
横から見るとこうなります。

この赤色で囲まれた部分で密度を求めます。
密度は繰り返し部分だったらどこで密度を求めても同じです。
水ってどこで密度を求めても体積は1.0g/cm3ですよね。これが500mLだろうと1.5Lだろうと変わりません。
では、この繰り返し単位だけを取り出してみます。

ということで、この繰り返し単位で密度を求めていきます。
繰り返し単位の中の原子の個数

このような繰り返し単位で計算していきます。
正六角柱の頂点に位置する原子の個数

まず、この正六角中の頂点のみの原子の個数を考えます。ピンク色で表しますね。

これは、3分の1個です。
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てことは、1/2個です。
これより、繰り返し構造の中にある原子は1/6個です。
これより、1/6×12=2個。黒鉛の六角柱の中には2個の原子が存在します。
正六角柱のど真ん中に位置する原子の個数

もう、ど真ん中に1個埋め込まれているので、1個ですね。
正六角柱のど真ん中に位置する原子の個数

このピンク色の場所に位置する原子は、1/3個です。なので、

このようになります。
黒鉛の密度の解法
密度は単位を確認して分子分母の単位を考えずに作れ!

密度の単位はこれです。これを分子分母別々に作っていきます。
なるべく、何も考えずに難しく考えず機械的に単位を作っていきます。考える方がややこしくなります。
僕が実際にどのように考えて単位を生成していくのかをお渡ししていきます。
単位格子内のの原子の質量は?
質量は、gですよね。こうなるとき、問題文でgが出てくるものはなんですか?
g/mol(原子量)です。
じゃあ、molが邪魔ですね。分母のmolを消したかったらmolをかけたらいいんですよ。molを含む単位はアボガドロ定数の個/molですね。
アボガドロ定数だとmolが分母にありますので、逆数をかけてmolを消します。

するとg/個が出来上がります。もうほとんど終わりましたね。個をかけたらgになります。さっき個を求めたのは、このためです。
よって全てまとめると、

これに代入したらいいだけなのです。よって、

ちなみに、ここで計算はしません。筆算するのは最後の最後で諦めるときです。もしかしたら、密度を求めるときに奇跡が起きて約分ができるかもしれません。
単位格子内の体積は六角柱の体積を求めろ!

これでしたから、繰り返し単位に数値を記述していきます。

このようになります。このような図形の体積を求めるので、底面積を求めます。
底面積は正六角形なので、正三角形6個集まったものです。正三角形の面積さえ求められれば、底面積は求められます。

これが6個あるからこれをかけます。a=0.142nmですよ。ちなみにこんなところでこんな面倒な計算始めないでくださいよ。
計算は最後の最後までやらないんです。
時々驚くほどうまく約分できるように問題が作られていることがありますので。
これが底面積なので、これに高さ0.67nmを掛けます。この補助単位「n」もすぐに掛けないでくださいね。n同士も掛け算することができますから。
てな訳で、黒鉛の繰り返し単位の体積は、

このようになります。
密度を求めます

分子と分母を代入してこれが密度の計算になります。
よって、2.3g/cm3です。
【裏技別解】黒鉛の密度を平行移動で求める方法

裏技です。これは多分知ってないと思いつかないと思います。

このように平行移動します。このようにしても立体の中の原子の個数は変わらないし、体積も同じです。
よって、個数は、1/6個が12個なので、2個。これが黒鉛の質量です。
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体積は、

よって、求める体積は、

これを計算すると先ほどと同じ数値の、2.3g/cm3になります。

最後に
いかがでしたか?
重要なポイントをまとめていきますね。
結局黒鉛の密度を求める際に難しいのはたった2つ
- 繰り返し単位がわからない。
- 個数
これさえわかれば、密度を求めることは小学生レベルなのです。無駄に苦手意識を持つ必要はありません。
[quads id=5]黒鉛の密度が求められるようになったら、次はダイヤモンドでしょう。ダイヤモンドの密度も求められるようになってください。