化学結合の種類の見分け方〜あなたも100%間違って理解している〜

こんにちは。

共有結合、イオン結合、金属結合、分子間力(水素結合 ファンデルワールス力)による結合、これらの化学結合って見分け方がわかりにくいですよね。

 

化学結合で悩むところは、共有結合、イオン結合、金属結合、分子間力による結合を見ただけで見分け方はないのか? また、結合の強さの順番ですよね。

 

今日はこの2つを見極める方法をご紹介します。

記事内容
  • 化学結合を電気陰性度を用いて見分ける方法
  • 化学結合の強さを「結合が切れた後の安定性」で見分ける方法

厳密にいうと分子間力による結合は化学結合ではありません。分子間の引力の結合であり、化学結合は「共有結合、イオン結合、金属結合」の3つを指します。

化学結合と分子間力

目次

化学結合の違いの見分け方の本質は「電気陰性度」である!

化学結合の種類の見分け方

化学結合の共有結合、イオン結合、金属結合の”用語”を見極めたいなら以下を覚えておくといいでしょう。

覚えるべし

化学結合は、構成原子が金属と非金属の組み合わせで決まる。

  • 共有結合=非金属+非金属
  • イオン結合=非金属+金属
  • 金属結合=金属+金属

一般的に、非金属は電気陰性度が大きく、金属は電気陰性度が小さいです。基本的に、共有結合かイオン結合か金属結合かを見極めたければ、これを覚えておけばいいです。

 

ただし、これは本質ではありません。本質は「電気陰性度の差」なんですよ。

イオン結合の場合

例を出します。イオン結合のNaClで例を出します。

塩化ナトリウムのイオン結合するときの間違った理解

これが一般的な説明の仕方です。ナトリウムが電子を投げて塩素が受け取る。そして陽イオンと陰イオンになってクーロン力で引き合い結合する。

 

でも、ここにおかしな点がありまして、

受験化学コーチなかむら
どうやって電子投げたんだよ

ってことなんですよ。空中を投げるわけにもいかないし、うまいこと塩素がキャッチしてくれるかもわかりませんよね。

 

つまり、元々はイオン結合も共有結合なのです。そして、その共有電子対を電気陰性度が大きいClが引き付けることによって陰イオンになるのです。

イオン結合が出来上がるまで

このように、イオン結合だろうと

イオン結合も元々は共有結合

この流れでイオン結合になります。

 

つまり、イオン結合の高校化学の定義では非金属と金属の原子の結合でオッケーですが、イオン結合の本質は電気陰性度の差が大きいことです。

金属結合の場合

金属結合もそうです。金属結合はまだ理解しやすいですが、

金属結合で自由電子を共有

まず、共有結合をします。そして、Cuどうしはどちらも電気陰性度が小さいので、二人とも共有電子対を押し付けます。

 

そこで、Cuみんなで電子を共有して誰かが所有するわけではなくなります。金属結合のフローチャートはこのようになります。

金属結合のフローチャート

この電子を「自由電子」と言います。これが金属結合です。ちなみに、金属結合のイメージを粘土とビー玉で表してみました。


金属結合の本質は、電気陰性度が小さい電子が好きじゃない原子同士が結合して電子を共有していることです。

 

なので、ここまでをまとめると、用語としては、共有結合=非金属+非金属、イオン結合=非金属+金属、金属結合=金属+金属でも構いません。

 

しかし、本当に覚えて欲しいのは、

イオン結合性=電気陰性度の差が大きいものの結合

共有結合性=電気陰性度の大きいもの同士

金属結合性=電気陰性度の小さいもの同士

です。

電気陰性度で化学結合を見分けることのメリットってあるの?

しょうご
でも、結局はイオン結合は、「非金属と金属の結合」って覚えるんですよね? じゃあ、別に理解してようがしてまいが関係あるんですか?

こう思うかもしれませんね。確かに受験化学の用語を見極める程度のことならなんの意味もありません。しかし、これがいきてくるのは無機化学です。

 

金属の中では電気陰性度が大きいものもあるんですよ。

例えば、銀Agは金属の中でも電気陰性度が大きい方です。すると、もはや銀は金属元素なのに非金属と扱いがそれほど変わらなくなります

 

なので、AgClのようなどうみてもイオン結合なのに、水に溶けないイオン結晶ができてしまうのです。イオン結合は基本電気陰性度の差が大きく極性を持つ。つまり極性分子の水に溶けます。

 

補足ですが、この極性を持つ物質は極性を持つ溶媒に溶けるってことは重要です。逆に無極性の物質は無極性の溶媒に溶けます(無極性の有機物はエーテルやベンゼンのような無極性溶媒に溶ける)

 

つまり、似た者同士よく溶けるのです。これ、めっちゃ重要。

なぜ「似た者同士よく溶ける」と言われる?その理由を解説

 

ちなみにAgClが沈殿することは、無機化学の沈殿反応のところでめちゃくちゃ重要です。

これは、電気陰性度の差が小さいからです。

 

AgI(ヨウ化銀(I))やAgBr(臭化銀(I))やなんかは、イオン結合のくせして水に溶けません。なぜなら、Agの電気陰性度は非金属なみにそこそこでかいから、電気陰性度の差が小さくて共有結合っぽくなるからです。

 

イオン結合なら本来水に溶けるはずが、共有結合性が大きくなることで、ハロゲン化銀(ハロゲンと銀のイオン結晶)は、フッ化銀以外は水に溶けません。

ちなみに、フッ化銀が水に溶けるのは、フッ素の電気陰性度があまりにもデカすぎる(原子界最強)からです。銀もそこそこ電気陰性度が大きいのですが、それに負けずフッ素は電気陰性度が大きいので、電気陰性度の差が大きくイオン結晶性を保ちます。

ハロゲン化銀の性質を完全にまとめてみた。

分子間力による結合と化学結合を見極める方法ですが、分子になる時点で組成式は分子式=共有結合になっています。

では、分子間力によって結合して結晶になる分子結晶と共有結合の結晶の違いと見分け方ですが、共有結合の結晶を作る物質を覚えてしまうことです。

最後に

このように、しっかり理解することで、頭に入りやすいだけでなく無機化学を学ぶ上でも非常に役に立ちます。みんな無理やり沈殿する物質を覚えたり、丸暗記しようとします。

 

丸暗記ははっきり言って、地獄ですからね。しっかり覚えやすくするために理解することが必要です。このように本質を知っていたら、受験ははっきり言いまして楽勝です。



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浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。