化学基礎の中でも基礎中の基礎である「組成式」を学んでいきます。実は、驚くほど多くの人(高校生だけでなく教師も)が間違った認識を持っています。
組成式は、イオン結合をしている時に使うもので、イオン結晶を表すために存在している。
今日は、組成式の超基本的なところから、入試で重要なところまで徹底的に解説していきます。必ず最後まで読んでくださいね!
目次
組成式とは?
これは、NaClのイオン結晶である岩塩です。これは、Na+とCl-がずっとイオン結合を連ねて、このような目に見える形になっているのです。
このように、無限にイオン結合が続いているわけですよ。じゃあ、分子式みたいにその塊の原子の数を全部書き出したとします。すると、この岩塩には、Na+とCl–が日本の人口以上に詰まっているわけですよ。
つまり、原子の数を書かなければならなかった場合、岩塩は、Na100億Cl100億という化学式で表さなければなりません。こんな時に、
って誰かが言って採用されたんですよ。
よって、Na100億Cl100億をNaClと表すようになったのです。(化学式では1は省略する)
このように、構成原子の種類とその数をもっとも簡単な整数比で表した式を組成式と言います。
ちなみに、よく勘違いされるのが、組成式はイオン結晶の時に使うものだということ。イオン結晶以外にも、共有結合の結晶にもあるし、金属結晶にもあります。なんなら、分子にだって組成式はあります。(例えば、グルコース分子式C6H12O6の組成式はCH2O)
なので、イオン結晶の比を表すという記述は間違い!
イオン結晶の組成式の書き方
ステップ1:イオンを陽イオン→陰イオンの順に並べる
Na+ + Cl–
ステップ2:陽・陰イオンの数の比を求める(電荷が0になるようにする)
Na+とCl-は+1と-1なので1:1で電荷が0になりますね。
ステップ3:ステップ2の比を元素記号の右下に書く
Na1Cl1となりますが、1は書きませんので、NaClになります。
では、硫酸ナトリウムで別の例を出してみましょう。
ステップ1:イオンを陽イオン、陰イオンの順番に並べる
Na+ + SO42-
ステップ2:陽・陰イオンの数の比を求める(電荷が0になるようにする)
Na+ と SO42-なので+1と-2ですよね。この時Na+が2個あれば電荷が0になります。
なので、Na+ : SO42-=2:1とします。
ステップ3:ステップ2の比を元素記号の右下に書く
Na2SO4
となります。
イオン結晶の組成式の読み方
ステップ1:「イオン」と「物イオン」を削除する
ステップ2:陽イオンと陰イオンの順番を逆にする
これで、塩化ナトリウムと読むことができます。
別の例題を出すと、CsClの場合
ステップ1:「イオン」と「物イオン」を削除する
ステップ2:陽イオンと陰イオンの順番を逆にする
てな感じで、塩化セシウムとなります。
演習問題
①Cu2+ SO42-
②Al3+ O2-
③Ca2+ PO43-
イオン結晶以外の組成式で表すものたち
先ほどさらっと触れましたが、組成式で表すのは、全くもってイオン結晶だけではありません。分子式で表すことができる分子でさえも組成式で表すことができます。
金属
金属にも分子という単位がなく、金属単体のみで結晶を作っています。
本来個数を数えたら、Fe100億くらいあるところを、組成式でFeと表しています。
共有結合の結晶
このようなダイヤモンドも、炭素原子が共有結合で結晶になるまで結合している巨大分子です。C100億のところをCという化学式で表しています。このCを組成式と言います。
他にもよく間違えるのが、SiO2です。SiO2を分子式だと思っている人もいますが、実は違ってこれは組成式です。SiO2はこのように共有結合の結晶です。
分子
ぶっちゃけていうと、入試で組成式を一番意識して使わなければならないのが、実は分子です。某企業の動画では一切触れていなかったので、ちょっとおかしいな〜と思いつつ。
組成式の定義ってのが、
「原子の種類とその数をもっとも簡単な整数比で表した化学式」
ですよね。
つまり、分子も組成式で表しちゃいけないルールなんてないんです。
例えば、ベンゼンの組成式は、
C6H6ですよね。これをC:H=6:6なので、一番簡単な整数比はC:H=1:1ですよね。
つまり、ベンゼンの組成式はCHなのです。
これより、有機化学で最もよく使う公式が、
(分子式)=(組成式)n
です。
有機化学では、この組成式は非常に重要で、有機化学でもっとも重要な構造決定の問題では、組成式を求めてそのあとに分子式を求めます。この組成式を求める過程を元素分析と言います。
まとめ
組成式は、物質の構成原子の種類とその数の最も簡単な整数比で表した化学式
※イオン結晶だけでなく全ての物質で使えます。