化学史で、化学の基本法則を学びます。その中で、倍数比例の法則ほど日本語にした時に、何を言っているのかわからない法則も珍しいです。
2種の元素AとBが化合して、いくつかの異なる化合物を作る時、一定質量のAと化合するBの質量の間には簡単な整数比が成り立つ。
うん、、、日本語だけ聞いても全然ピンと来ねえ。。。(笑)なので、バッチり具体例を出して倍数比例の法則を解説しようと思います。
また、倍数比例の法則は、倍数比例の法則だけを理解しようとすると誰が発表したのかわかりにくくなります。なので、倍数比例の法則がなんのために生み出されたのか? ってところまできっちり理解していきましょう!
また、この記事の最後には倍数比例の法則と定比例の法則の違いにも触れています。これら2つは明確に違いがわかりますか? この事象は「倍数比例の法則」ですか? それとも「定比例の法則」ですか? と言った問題が出たりします。
なので、きっちり区別できるようにしましょう。
目次
倍数比例の法則とは?具体例を出して説明して見た
それでは、倍数比例の法則とは何か? を解説していきますが、例のごとく当時の人の気持ちになってください。
今のあなたからしたら、

ってなるようなことの連発ですが、当時は原子すらまだ浸透していない時代ですから、当たり前のことなのです。日本では侍がちょんまげ生やしている時代です。
例えば、炭素と酸素の化合物には、一酸化炭素と二酸化炭素がありますよね。
この一酸化炭素と二酸化炭素の炭素の質量を12gと固定します
炭素 | 酸素 | |
一酸化炭素 | 12g | 16g |
二酸化炭素 | 12g | 32g |
すると、酸素の質量は16gと32gになりますよね。
このように、16g:32g=1:2と簡単な整数比になることを倍数比例の法則と言います。
うん、実はこれだけ。
これがいろんなもので成り立つんですよ。例えば CuOとCu2Oでも、
O | Cu | |
酸化銅(I) | 16 | 128 |
酸化銅(II) | 16 | 64 |
このように酸素のOを16gと固定すると、Cuは128g:64g=2:1となります。
これが倍数比例の法則です。

って思いませんでしたか? 僕はこの倍数比例の法則を聞いて、だからなんだよ! って思いました。
ってなわけで、「だから何か」には歴史が大きく関わってきています。なのでこの倍数比例の法則が発表された前後の歴史について解説していきますね。
倍数比例の法則は歴史的にはどういう法則?発見した人は誰?

倍数比例の法則を発表したのは、ドルトンっていうおじさんです。ドルトンって誰かは前回の記事でも解説しましたが、「原子説」を発表したおじさんです。
当時、原子説を使えば、質量保存の法則と定比例の法則を解説することができるとわかったものの、誰も原子なんて粒を見たことがなかったので、半信半疑でした。
少しおさらいをしましょう。プルーストが発見した定比例の法則はまだ完全には受け入れられていませんでした。その理由は、

CuOとCu2Oなど酸化銅は、酸化銅(I)か酸化銅(II)かで質量が違ったので、元素の質量比が産地や製法によって変わらないというプルーストの定比例の法則はベルトレーに反対されていました。
確かに、酸化銅のCu:Oは一定ではありませんでした。しかし、このあとドルトンが発見してしまったのです。CuOとCu2Oは、Oの質量を固定すると酸化銅(I)のCuと酸化銅(II)のCuの質量が整数比になっていることに。
これが、もし物質が気体のように連続した物質だったらこのような綺麗な整数比にはなり得ませんよね。
倍数比例の法則のようなことが起こるってことは、物質ってつぶつぶが化学結合しているんじゃないか? と言われるようになったのです。

このように、倍数比例の法則はOの質量を固定した時、Cu(I)とCu(II)の質量比が整数比になるのは、CuもOもツブツブができていて、Oをn個としたら、酸化銅(II)はn個と、酸化銅(I)は2n個と結合していると考えられたのです。
O | Cu | |
酸化銅(I) | 16 | 128 |
酸化銅(II) | 16 | 64 |
この質量の比が整数比になるのは、結合が整数比だから! と考えられるようになりました。
この倍数比例の法則のおかげで、原子説を信じる人が急増したのです。
最後に
最後になりましたが、倍数比例の法則ではどういう問題が出るのか? ってことですが、年代を覚える必要はありません。歴史の問題ではないので、こんなものが入試に出ることはないです。
ですが、原子説と同じ年代に発表されたことだけは覚えておいてください。また、こういう基本法則では、「この実験はどの基本法則を表す実験ですか?」っていう設問がよくでます。
倍数比例の法則と定比例の法則の違いは非常によくわかりにくいものですよね。なので、入試問題を解くうえで、圧倒的にわかりやすい受験テクニックを紹介します。