どうも受験化学コーチなかむらです。
そういう人のために、今日は極性分子と無極性分子を見分ける方法を解説しました。
極性分子と無極性分子を見分けるために必要な知識は2つです。また、この知識をどう使って見分ければいいのかも解説します。
- 極性分子と無極性分子を見分けるたった2つの指標
- 何を覚えればいいのか? 何を覚えなくていいのか? をしっかり区別できる
目次
極性分子と無極性分子を見分けるためのたった2つの知識
極性分子か無極性分子かを見分けるためには、その分子に対称性があるかどうかなんです。
共有電子対を引きつける力と向きが対称性があれば、無極性分子だし、対称性が崩れていたら極性分子です。
そして、その対称性があるかどうかは次の2つのポイントを見ればわかります。
- 電気陰性度の差による結合の極性(電子を引く力)
- 分子の形(電子を引く方向)
この2つの知識があれば、極性分子と無極性分子は覚えなくても見分けることができます。なので、まずはこの2つの知識を解説していきます。
1.電気陰性度の差による結合の極性
電子を引っ張る「力」が電気陰性度だと思ってください。共有結合は、共有電子対を原子同士が引っ張り合います
そして、この引っ張る力の強さを数値化したものが電気陰性度です。電気陰性度が大きい原子は共有電子対を強く引き付けて、電気陰性度が小さい原子は共有電子対を引き付ける力が弱いです。
もし、電気陰性度に差がある下の画像の場合、
Aが共有電子対を強く引き付けるため、電荷に偏りが生まれます。
そして、δ-とδ+に結合の間で電荷の偏りがある状態を結合に極性があると言います。
受験化学で最も重要な知識が電気陰性度です。もし理解が甘い人は下の記事を読んでおいてください。ちゃんと理解できている人は非常に少ないです。
2.分子の形
分子の極性には、分子の形が関わります。同じ力で真逆の方向に共有電子対を引っ張るとつり合い極性は生まれません。
しかし、同じ力で引っ張ったとしても、力を加える向きが異なると力はつり合いません。
このような場合は、極性があらぬ方向に生じます。なので、この分子の形を理解しておくことが非常に重要です。
ちなみに、分子の形は大抵の場合は覚えてしまいますが、電子式を書けば覚える必要はありません。
このことは、僕が動画で解説していますので、ぜひご覧下さい。今動画が見られない状況にいる人は、ブログ記事で確認して見てください。
動画内で話していた黄リンの分子構造や水分子の構造に関してブログ記事もありますので、ぜひご覧ください。
分子が2原子でできている場合の見分け方
結合の極性がそのまま分子の極性になる
分子が2原子からできているパターンは簡単です。例えば、O2やH2、HClなどですね。これらは結合の極性がモロ分子の極性になります。
原子が2つでできている場合、分子の形は直線型以外ありえないからです。
なので、電気陰性度に差があれば極性分子だし、電気陰性度が同じである同一原子の分子なら無極性分子です。
このようにつりあって無極性分子になります。またHとClの電気陰性度の差が大きいと、
このように極性が生じて極性分子になります。
2原子の場合は極性分子か無極性分子かの見分け方は、2原子に電気陰性度の差が適度にあるか=結合の極性があるか。
注意点としましては、結合の極性が大きすぎてもダメなんですよ。極性が大きくなりすぎるとそれは分子ではなくイオンになってしまいます。テーマは、極性分子と無極性分子の見分け方ですからね。
非金属と金属が結合している場合イオン結合と定義します。イオン結合も結合の極性の考え方が使えます。
分子が多原子でできている場合の見分け方
結合の極性だけでなく分子の形にも影響を受ける。電子を引き付ける方向が打ち消しあうかどうかを確認する。
ステップ1:電子式を考える
ステップ2:分子の形を把握する
ステップ3:結合の極性のベクトルが打ち消しあうかを確認する。
極性分子は以下のイメージだと先ほど言いました。
力が加わる方向が打ち消しあう方向じゃない場合は極性分子になります。
これは、他原子分子でも全く同じことなんですよ。分子全体的に電荷の偏りがあれば極性分子であり、偏りがなければ無極性分子なのです。
その確認の仕方が先ほどの3ステップなのです。
ステップ1:電子式を考える
ステップ2:分子の形を把握する
ステップ3:結合の極性を打ち消せるかを確認する
これを実例と共に試していきますね。
二酸化炭素(直線型)
ステップ1:電子式を書く
ステップ2:電子式から分子の形を把握する
このように、二酸化炭素の分子の形はCの周りの電子式が2箇所なので、反発を避けるために直線型になります。
ステップ3:結合の極性を打ち消せるか
このように二酸化炭素の結合の極性を矢印で表しました。CとOの間の結合の極性が逆方向のベクトルで同じ大きさなので、打ち消されます。
先ほどの2原子分子の場合、異なる原子同士の結合なら極性分子になっていました。しかし、多原子分子の場合は、結合の極性があるものの分子全体で見ると極性は打ち消されます。
O=Cの結合ではもちろん極性が存在していますが、分子レベルになると無極性になります。
アンモニア(三角錐型)
ステップ1:電子式を書く
ステップ2:電子式から分子の形を把握する
ステップ3:分子全体の極性を打ち消せるか確認
このようにアンモニアは、結合の極性を全て足すと消えませんよね。なので極性分子です。
メタン(正四面体)
ステップ1:電子式を書く
ステップ2:電子式から分子の形を把握する
ステップ3:分子全体の極性を打ち消せるか確認
CH4のような分子です。4方向に等しく同じ力がかかっているので、ベクトルは打ち消されて極性はなくなります。
なので、正四面体形なのですが、メタンは無極性分子なんですよ。
ただし、ジクロロメタン(塩化メチレン)は、Clで電子を引きつける力に偏りが生まれてしまうので、極性が生まれてしまいます。
このようにジクロロメタンは電子を引っ張る力に差があります。よって極性が生まれるのです。
多原子で極性分子か無極性分子かを見分けるには、結合の極性と分子の形の両方を考慮して対称性があるかどうかで判断する。
また、結合の極性(電気陰性度の差)と分子の形は覚えるか、いつでもわかるようにする(多分覚えてしまう)
まとめ
「結合の極性」と「分子の形」の2つを合わせて、分子の電荷の偏りに対称性があるかどうかで考える
- 2原子分子→同じ原子なら無極性分子、違う原子なら極性分子
- 多原子分子→電子式を書いて分子の形を把握する
多原子分子の極性を把握する3ステップ
ステップ1:電子式を書く
ステップ2:電子式から分子の形を把握する
ステップ3:結合の極性を打ち消せるかどうかを確認する。
電子式から分子の形を把握する方法はこちらの動画を参照ください。
ブログ記事で学びたい人はこちら。
いかがでしたか?
めっちゃ電気陰性度使いますよね。これは化学基礎の内容ですが、受験で最も大事な有機化学とかになってくると電気陰性度を知らないと致命傷になります。
今日、電気陰性度の理解が甘かった人はしっかりマスターしておいてくださいね。