相対質量と質量数の違いって明確に答えられる人はなかなかいないでしょう。相対質量と質量数はかなり数値は似ているものの定義が全く違いますよね。
ここに原子量も混ざってきたらパニックですよね。そんなあなたのために、今日は「質量数と相対質量」の違いを取り上げます。別記事では質量数と原子量の違いも取り上げています。
ちなみに、この記事は相対質量も質量数もある程度理解していないと、あまり学ぶものがないかもしれません。よって相対質量と質量数がわからない人は、まずはそれらを学んでおいてください。
目次
相対質量と質量数はどういう関係と違い
12C原子1個の質量を12としてこれを基準に、その原子の質量の何倍になるかの比を使って原子の質量を決めるもので、求め方は、
原子の相対質量=12×12Cとその原子の質量比
でした。相対質量と質量数の関係は、相対質量を12Cの質量数を基準にとっていることで関係が作られています。なので、厳密な相対質量と質量数の関係がこちらです。
原子 | 絶対質量[g] | 相対質量 | 質量数 |
4He | 6.6465×10-24 | 4.0026 | 4 |
12C | 1.9926×10-23 | 12 | 12 |
23Na | 3.8175×10-23 | 22.990 | 23 |
このように12Cだけは相対質量と質量数が完全に一致しています。そのほかは数値は近いんですが、完全に一致はしていません。
これは、質量数はいわば理論値です。質量数は陽子の数と中性子の数の和ですので、理論として求めることができます。しかし、相対質量は、「原子の質量の比」を使います。
例えば、4Heの相対質量は、このように求めます。
ここで、炭素原子の質量やヘリウム原子の質量と言った、実験で求める値を用いなければなりません。本来理論上は、
このように、原子の質量の比は質量数の比になるべきです。ですが、実験値であるからこそ誤差が出てしまうため、相対質量と質量数は違う値になるのです。
てな訳で、質量数と相対質量の違いはある程度説明できるのですが、次はこの質量数と相対質量で違いが出てしまう本質的理由を解説します。(やや発展です。)
なぜ質量数と相対質量の値が異なるのか?
まず第1の原因として質量数では無視されていた電子の質量です。電子は陽子や中性子に比べて約1840倍(いやよー)軽いです。なので質量数では無視されます。
しかし、電子だってないわけではないので、電子だってないわけではないのだから。だから、電子を加えたことによって、質量が大きくなるはずなんです。
例えば、23Naを例に出しますね。質量数23で陽子の数が11(原子番号)中性子の数が12です。
相対質量 | |
陽子 | 1.007276470 |
中性子 | 1.008665012 |
なので、11×1.007276470 +12× 1.008665012=23.18402になりますね。でもね、実は相対質量はこの値ではないのですよ。本来は22.98977なんですよ。
電子が加わったことで、相対質量は23.18402より大きくなりそうじゃないですか。でもね、減るんです。
この減った質量の0.19425を質量欠損と言います。
これは、質量が原子核の結合エネルギーに変えられたからなんです。そう、意外かもしれませんが、質量はエネルギーに変わることもあるのです。
これは、アインシュタインの相対性理論のE=mc2(E:エネルギー、m:質量欠損、c:光速)で表されるのですが、質量とエネルギーは等価なものです。
まとめ
- 質量数→陽子数+中性子数で求められる理論値
- 相対質量→12Cの質量数を基準に原子の実験値の比から求めた数値
- 質量数と相対質量が一致しないのは、質量が原子核の結合エネルギーに変換されたから
いかがでしたか? このように細かい用語でも受験生はしっかり区別できて置かないといけません。こういうところが記述で出題され他とき頭で理解していないと文章に落とし込むことができませんからね。