こんにちは。
本記事ではこのような疑問にお答えしていきます。
ジアゾ化やジアゾカップリングは有機化学の反応の中でも非常に難しい部類です。
- 全部丸暗記しないといけないのか?
- 亜硝酸ナトリウムを使う理由は何か?
- 結局大学受験ではどのように出題されるのか?
などを詳しくわかりやすく解説していきます。ぜひ最後までお読みください。
目次
アゾとはなんやねん?
では、まずアゾって何やねんっていう話をします。
アゾって言うのは実は、フランス語です。
実は窒素のフランス語がazote(アゾート)というのです。なので、窒素が絡む物をアゾ化合物と言う事もあります。
ここから考えると、ジアゾというのは、diazoと書きます。diは2を表しますから、アゾが2つ。Nが2つある状態にする事をジアゾ化と言います。
ジアゾ化を理解するために知っておくべき名前
それでは、以下に、知っといた方がええことを書いておきます。
p-ヒドロキシアゾフェノールとか難しい名前が出てくると思いますが、それもどんどんわかっていきます。
アゾ基
これをアゾ基と言います。
アゾ化合物
アゾ基を持つ化合物をアゾ化合物と言います。
アゾベンゼン
このようにアゾ化合物のうちRがフェニル基のものを、アゾベンゼンと言います。
特徴は、橙色であることです。この構造がある物質は橙色になります。
ベンゼンジアゾニウムイオン
これをベンゼンジアゾニウムイオンと言います。
これを3つの領域にわけることで、名前が付けられます。そのまま左から読んでベンゼンジアゾニウムになります。
アニリンの陽イオンはアニリニウムという名前です。
右辺の物質を塩化アニリニウムと言います。(アニリン塩酸塩とも言う)
陽イオンは~iumってつきます。ナトリウムとか、カリウムとか、バリウムとか、カルシウムとか、
陽イオンになりやすい金属には根こそぎ『~ium』がついています。
なのでベンゼンジアゾニウムも同じ名前の付け方をなされているだけです!
ジアゾ化
それでは、ここからは本題であるジアゾ化に入っていきます。
ジアゾ化はアニリンで最も難しい反応ですが、ちゃんと理解すれば、大丈夫です。
しかも、反応の考え方は既に、お渡ししています。
有機化学の反応は実は3パターン?結合と再生で考える3つの反応様式!
ジアゾ化の登場人物
アニリン
アニリンを知らずにこの記事を読んでいる人は、無謀なので、まずアニリンを知ってください。
亜硝酸ナトリウム
この反応の鍵となります。
硝酸からOを1つ抜いた物が亜硝酸で、
この亜硝酸がメチャクチャ不安定なんです。
すぐ分解反応が起ってしまいます。でも、ジアゾ化には非常に亜硝酸が重要なため、ナトリウム塩と言う形で、形をとどめておくのです。
ジアゾ化の流れ
それでは実際のジアゾ化の流れをお話ししていきます。
まず亜硝酸ナトリウムをアニリンの非共有電子対にアタックできるように、陽イオンにします。
そのために、まず亜硝酸ナトリウムを水に溶かして、塩酸を混合します。
HClがOに向かって水素イオンを投げつけます。
この絵見た事ありますよね?
そう、ニトロ化スルホン化のところでやって来た事と同じなんですよ!
「なんで濃硫酸じゃないんだ!」と思うかもですが、高校化学では、説明しきれない事がほとんどです。
ですが、最終的に塩化ベンゼンジアゾニウムを作りたいわけです。
これが目的だと言う事を頭に入れておけば、「ここで硫酸はあり得ないな」と逆算的に論理的に覚える事は可能です!
Oは水素イオンを受け取りはするが、電気陰性度が大きいですよね。
てことは、+な物は嫌い。だから隣に居たNから共有電子対を奪い取ります。
このようになりました。
そして、エステル化のように、電子がない穴に、非共有電子対を突っ込みます!
のようにアタックします。
すると、
これに、よって、ベンゼンジアゾニウムイオンが出来ます。
そして、周りに塩酸があるので、塩素との塩になります。
このようにして、塩化ベンゼンジアゾニウムが出来ます。
【重要】ジアゾ化の反応条件!
ジアゾ化でかなり重要な物として、亜硝酸ナトリウムがありました。
この亜硝酸ナトリウムは、亜硝酸が不安定だから使われているのです。
亜硝酸ナトリウムは加熱される事で、亜硝酸を保てず、分解されてしまいます。
なので、ジアゾ化は、0℃付近で反応が行われます。
ちなみに、5℃以上になると、ジアゾニウムイオンが加水分解されてフェノールになります。
これはフェノールの製法のところで説明しました。
ジアゾカップリング
それでは、次は、ジアゾカップリングを攻略していきます。
ジアゾ化して、塩化ベンゼンジアゾニウムにする事が出来ましたね。
この塩化ベンゼンジアゾニウムから、アゾ基で
芳香族同士をつなぐこと(アゾベンゼンを作る事)
をジアゾカップリングと言います。
この反応をまとめていきましょう!
必要な知識
このような難しい反応を説明するために、この化学受験テクニック塾では、様々な原理的説明をしてきました。
そして、その1つである、配向性がこのカップリングには関わってきます。
この配向性というのは、ベンゼン環に置換する2個目の陽イオンが、先に置換したものに影響を受けると言うものです。
このように電子を与える物は、オルト、パラの位置で反応しやすくなります。
そして、電子供与性の大きい順番は、
O–>NH2>OH>CH3
でした。
このことを覚えておいてください。
ジアゾカップリングの登場人物
塩化ベンゼンジアゾニウム
フェノール
塩化ベンゼンジアゾニウムとカップリングするお相手がこのフェノールです。
この理由はあとでお話しします。
ジアゾカップリングの反応
ジアゾカップリングは実は、
フェノールに対して置換する反応なんです。
置換反応といえば、、、
ベンゼン環への置換反応の基本は、ここでもお話ししましたが、ベンゼン環は、
このように、電子がまとわりついているので、陰イオンではなく陽イオンが攻撃していきます。
で、今回もそのように反応します。
まず、フェノールにNaOHを加えてフェノールをナトリウムフェノキシドにします。
この理由としては、これは水中でNa塩は完全電離しますから、フェノキシドイオンになります。
先ほどの配向性の話を思い出してください。フェノキシドイオンは電子供与性最強でした。(また、Na塩は特に、パラ位が強くなる性質がある)
なので、パラ位が最強に反応しやすくなるのです。
ということで、この場所のベンゼンのC-Hの共有結合を、ベンゼンジアゾニウムイオンがアタックしにくる。
このようにアタックしていきます。
そして置換反応が起ります。
そして、
こいつが出来ます。
p-ヒドロキシアゾベンゼンでもp-フェニルアゾフェノールでもどちらでも良いです。
これは区切る場所が違うだけなんです!
パラでフェニルでアゾ基でフェノール
よってp-フェニルアゾフェノールと言う名前になります。
別の所で区切るとこうなります。
p位のヒドロキシ基とアゾベンゼンであるため、
p-ヒドロキシアゾベンゼンと言う名前になります。
ちなみにp-ヒドロキシアゾベンゼン、p-フェニルアゾフェノールは、橙色です。
なぜなら、アゾベンゼンが含まれているからです。
いかがでしたか、これで、芳香族までの有機化学が終わり、『構造決定』に必要な有機反応の知識はだいたいまとめました。
学校ではまったくあたまにはいってこなかった反応がするするはいってきて感動しましたこれからもよろしくおねがいします!!このサイトはわたしにとって化学の勉強に必須です!!!
良いですね。つかいこなしてください!
学校の授業で全然分からなかったのですが、ここを見て理解出来たように思えます。わかりやすい解説ありがとうございます!
ここで一つ質問なのですが、塩化ベンゼンジアゾニウムを塩化カリウム、塩化カルシウムと反応させるとクロロベンゼンになるのは何故なのでしょうか?教えていただけると幸いです…!
なかむら先生、質問があります。
目次の3.4ジアゾ化の流れで亜硝酸ナトリウムを水に溶かし塩酸を加えるところで、HClがHNO2に水素イオンを投げていますがここでNaNO2からHNO2になっているのは何故でしょうか?
亜硝酸はどこから水素イオンを受け取ったのでしょうか?
亜硝酸は不安定な弱酸で、水溶液中のみ存在します。したがって、亜硝酸塩に強酸を加えて加熱し、亜硝酸にしてからジアゾ化反応に使います!すなわちHは塩酸からきたものです!
ありがとうございます!
2-ナフトールとの反応についても教えて頂ければ幸いなのですが、どうでしょうか?
アニリン等でもカップリング反応が起きることを記しておいたほうがいいかもしれません。
質問です。
初めの亜硝酸ナトリウムでと塩酸の反応で始めからHNO2になっているのはなぜですか?
教科書では、N+はベンゼン環と結合している方になっているのですが、、どちらでもいいのでしょうか?
高専生で受験まだ受験はないのですが、試験勉強のために調べていたらこのサイトにたどり着きました。とても表現がわかりやすいのでこれからも利用させて頂こうとおもいます。
+の位置間違ってませんか?