こんにちは。
フェノールの製法ってメチャクチャ面倒くさいなと思った事ありません?
なんでかって言うと、方法が4つほどあるからです。
しかも、やっかいなことにほとんどの参考書で、どういう理由でその方法を使っているかを解説していないという悲劇なのです。
それもこれも、ベンゼン環の説明をおろそかにしているからなんです。
ですが、このサイトではベンゼン環について徹底的に解説しています。
なので、このフェノールの製法で、なぜクロロベンゼンを経由するかがわかります!
目次
クロロベンゼンを経由するフェノールの製法の流れ
ベンゼン→クロロベンゼン
まずベンゼンをクロロベンゼンにします。
塩素によってベンゼン環を置換する反応は以前詳しく取り上げました。
このようにして、Cl+がベンゼン環にアタックして置換します。
これによってベンゼン環に塩素を置換させてクロロベンゼンをつくります。
反応式は
C6H6+Cl2→C6H5Cl+HCl
クロロベンゼンからナトリウムフェノキシド
そして、ここからクロロベンゼンを、高温高圧条件でNaOHと反応させます。
このようにクロロベンゼンのClはCよりも電気陰性度が大きいので、共有電子対をより引きつけます!
そして、高温で、OH–がベンゼンにアタックしてきます。
NaOHは水中で強塩基であるため完全電離していますから、OH–がメチャクチャに激しくベンゼンに襲いかかります。
あれ、でもベンゼンって、
の状態だから、
陰イオンはアタックできないのではないのですか?
良い事に気付いたね!
そう!だから
ベンゼンにいきなり
OH-がアタックできないんだね!
いきなり”は”ね。
というのも、クロロベンゼンのClは電気陰性度が大きいため、このClが外れるときにC-Cl間の共有電子対ごとえぐりとって、持っていってくれるのです。
なので、問題なく陰イオンの水酸化物イオンOH–がアタックする事が出来ます。
ということでフェノールが出来ます。
しかし、フェノールは、酸性物質で、水酸化ナトリウムは塩基性なので直ちに中和する事によってナトリウムフェノキシドになります。
ナトリウムフェノキシドからフェノール
ここまで来るともうあとは、フェノールを抜き出すだけです。
ナトリウムフェノキシドからフェノールを抜き出すためには、簡単です。
ナトリウムフェノキシドがいっぱいある溶液に二酸化炭素をぶくぶくやるだけです。。
実は、これは芳香族の分離のところでお話ししました。
(上をクリックすると該当部分に飛びます)
これです。
まず二酸化炭素が水に溶けると、
CO2+H2O⇄H2CO3
となります。
そして、H2CO3は分子ですよね。
で、水の中には、炭酸よりも
弱酸であるフェノールがイオン化しているのです。
これは、
これで言うと、強酸の方がジャイアンで弱酸がのびたですから、
ジャイアン=炭酸です。
のびた=フェノールです。
ジャイアンはイオン化しているのび太を追い出して、自分がイオン化します。
そしてのびたは、分子に戻されます。
ということで、ナトリウムフェノキシドからフェノールが取り出されます!
これでようやくフェノールが取り出せます!
注意点
クロロベンゼンからナトリウムフェノキシドを取り出したところ、
さすが、森長君、良い質問だね!これは実はClがつくと物質は揮発性を持つんだ。
揮発性酸遊離反応のところで話しましたが、HClなども揮発性でしたよね。
で、このとき、あろうことか『高温にする』わけですよ。
クロロベンゼン飛んでいくやん!!
ということで、それを防ぐために、圧力を加えて
「出ていくなや!」
って言って飛ばないようにします。
このようにして、クロロベンゼンが空気中に逃げ出すのを防ぐために高圧にしているのです。
これがフェノールの製法でクロロベンゼンを経由している物の真実です。
触媒などなぜこれが使われるのか?というのをちゃんと説明できるようにしました。
このようにちゃんと意味を考えれば簡単に覚えられます。このようにキッチリ学んだ方が早いのです。
「水酸化物イオンをベンゼンに攻撃させるために高温にする」と、優等生くんのコメントがありましたが、水酸化物イオンの攻撃の反応速度を上げるためという解釈で合っていますか?
というより反応条件の方が合っている気はします。
基本的に共鳴状態のベンゼン環に陰イオンはアタックしにくいし、一応+は作ってはありますが、近付き難いのは間違いないです。
なので高温にしているのではないかと思われます。
クロロベンゼンの経由ではNaOHaq、ベンゼンスルホン酸の経由ではNaOH固体、クロロベンゼンではなぜ液体を使うんですか?
ベンゼンスルホン酸ナトリウムはイオン性化合物なので融点が高いからですよ。仮に高い融点で溶かしたとしても溶かす溶媒がその温度で液体であるためには超高圧である必要があり超コスパが悪いです。
一方、水酸化ナトリウムを融解してそれに溶かす方法ならば300度程度で反応します。ですのでコスパが良いです。