再生繊維であるビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨン

再生繊維,ビスコースレーヨン,銅アンモニアレーヨン

こんにちは。

今日は、再生繊維に関してお話ししていこうと思います。有機化学の分野の中でも割りとまともに勉強できずに入試を迎えてしまう分野です。

 

目次

再生繊維とは?

まず、再生繊維とは何か?が結構わかっていない人も多いです。

 

この再生繊維と言うのは、セルロースを加工したものです。

 

セルロースを加工したものです。

セルロースは、このように

セルロース,結晶構造

繰り返し単位で結晶構造になっています。また、分子間や分子内で水素結合をしていて、水や有機溶媒両方ともに溶けません

多糖類代表選手セルロースを徹底的にまとめてみた!

こんな状態のセルロースってかなり加工しにくいんですよね!だから、このセルロースをなるべくうまく加工するにはこのガチガチの構造を崩す必要があります

『ガチガチで加工には不便な状態』→『1回ドロドロに溶かしてしまう』→『もう一度繊維状にする』

このようにしてガチガチ構造を一度壊して、加工しやすくして繊維に戻すんです。

 

『1回ドロドロに溶かしてしまう』→『もう一度繊維状にする』

この工程で繊維を再生させていますよね。だから、”再生繊維“っていうんですよ!

この再生繊維の中では、有名なのが2つあります。ビスコースレーヨン銅アンモニアレーヨンです。

ビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨンの2つの違いですが、『ドロドロに溶かす』ところの溶かし方が違うだけなんです

 

また、レーヨンという言葉もどういう意味か後ほど触れていきますね!

ビスコースレーヨン

ビスコースレーヨンは、ビスコースというものでドロドロにした再生繊維のことです。

まず、ビスコースと言うものがあります。

 

セルロースは、ヒドロキシ基を持つアルコールです。アルコールは少しだけ酸性ほどではありませんが、少し電離します。

セルロースを(Cell-OH)と表すと、

Cell-OH⇄Cell-O+H+

このような電離反応が書けます。ただ、アルコールのときと同様で、この電離はH2O⇄H++OHよりも小さいのでセルロースは中性です。(というかそもそも水にほとんど溶けません)

ビスコースとは、セルロースを濃水酸化ナトリウム水溶液二硫化炭素CS2に溶かしてできるものです。

ビスコースレーヨン

右辺のがどんどん消費されてしまうので、右へ平衡が移動します。

なので、溶けにくいセルロースもどんどん溶けていきます。もう、ドロドロに溶けちゃう。このどろどろのCell-OCS2のことをビスコースっていいます

ビスコースレーヨン

このように、セルロースのヒドロキシ基を潰していくため、水素結合が出来なくなるわけです。するとあのガチガチセルロースから加工しやすくなっていきます。

 

そして、これを希硫酸などの酸性溶液に押し出すと、弱酸遊離反応でヒドロキシ基が再生し、セルロースと同じ構造を持った繊維が出来るわけです。

ビスコースレーヨン,製法

そう、この繊維って、光線のようにうつくしいのです。光線=rayです。rayみたいなcotton(コットン)というところからレーヨンという名前になっています。

溶けてビスコースになってから再生してrayみたいなcottonになるからビスコースレーヨンって言う名前になるんですね!

銅アンモニアレーヨン(キュプラ)

先ほど、ビスコースレーヨンを作ったとき、『濃水酸化ナトリウム水溶液と二硫化炭素』を、『アンモニア水溶液と硫酸銅』に代えればいいんです!

アンモニア水溶液と硫酸銅』この混合溶液をシュバイツァー試薬と言います!

銅アンモニアレーヨン
実際は硫酸銅ではなく、[Cu(NH3)4]2+が働いていました。

このようにしてセルロースを溶かします。
セルロースを溶かしたものを、希硫酸などの酸性溶液に押し出すと、弱酸遊離反応でヒドロキシ基が再生して、セルロースと同じ構造を持った繊維が出来ます!

銅アンモニアレーヨン

テトラアンミン銅(II)イオンを使ってセルロースを溶かして、それをrayのcuttonにするから銅アンモニアレーヨンって言う名前がついているんですね!

まとめ

このように、ビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨンは、一度溶液に溶かしてそれを取り出すとrayみたいなcottonのrayon(レーヨン)が出来るわけですね!

セルロースを溶かす!→弱酸遊離で復活!ということで、『再生繊維』という名前がついています!

きっちり復習するために何度も読み込んでください!



12 件のコメント

  • イケダ より:

    再生繊維は、参考書みると、ワケわからん反応式と長い構造式が小難しく書かれてあって見るのもいやで、丸暗記するしかないと思って嘆いていましたが、この記事はおもしろくて、再生繊維がなんなのか苦なく理解できました。
    個人的にシュバイツァー試薬という言葉がすごい好きです笑

    • 受験化学コーチなかむら より:

      そうなんですよね!再生の意味がわかれば結構わかりやすいんですよね!

      シュバイツァー試薬笑
      確かにカッコいいですよね!

  • わお より:

    最高に分かりやすいです
    ありがとう

  • ふかし より:

    ビスコースレーヨンと銅アンモニアレーヨンの製法、すごく分かりやすかったです。

    再生、というとは、立体的に結合しているセルロースを糸状にする、という理解でよろしいですか?

    • 受験化学コーチなかむら より:

      一旦どろどろにしてそれを繊維状に戻すから再生という名前になっています。

      • ふかし より:

        ありがとうございます。
        変な質問をしてすみませんでした。

  • 鉄緑 より:

    レーヨンは光線(ray)+木綿(cotton)ですよ

    • 受験化学コーチなかむら より:

      ありがとうございます!
      修正いたしました!

  • ずんだ より:

    ありがとうございます!
    レーヨンもう忘れません

    最近分かんないことあるとすぐにここに飛んできてます

  • 犯罪者オカラ より:

    とてもわかりやすかったです。
    参考になりました。

  • 疑問マン より:

    なぜビスコースを使うのかがわかりませんね…この説明だと塩基+水素結合を起こさせなくするための陽イオンならなんだっていいことになりませんか?

    • 受験化学コーチなかむら より:

      ビスコースレーヨンでビスコースを使う理由がわからないと言われても。。。
      そんなこと高分子までにもいくらでもあったと思います。

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    浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。