どうも、今回の問題は酸化還元滴定、の問題です。
酸化還元滴定は2パターンしか無いと書きました。
今回はひねりをくわえた問題ですが、捻られてもしっかり答えられるようにしてくださいね。
ヨウ素を含む市販うがい薬で清涼飲料水中のビタミンCの濃度をヨウ素液の酸化力を利用して滴定する実験を行った。(原子量H=1.00,C=12.0,O=16.0,I=127)
市販うがい薬のヨウ素濃度を求めるために、(a)ヨウ素(I2)とチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)の反応を利用して(A)水溶液を指示薬として滴定した。その結果、0.010mol/Lチオ硫酸ナトリウム水溶液50mLに対して、滴定の終点までにうがい薬を10.0mL要した。このことから、うがい薬1mLあたり(B)mgのヨウ素が含まれている事が分かった。
うがい薬中のヨウ素濃度が決定できた事から、市販清涼飲料水中のビタミンC濃度を求めるために、(b)清涼飲料水を(A)水溶液を指示薬としてうがい薬で滴定した。その結果清涼飲料水10mLを蒸留水で100mLに希釈した溶液に対して、終点までのうがい薬を4.0mL要した。このことから、清涼飲料水100mL中に(C)mgのビタミンCが含まれている事が分かった。
(1)(A)に適切な物質名を記せ。
(2)下線部(a)の反応式は、下記の酸化還元反応式で示される。(B)の値を計算で求めよ。

(3)下線部(b)におけるビタミンCはI2により酸化されると下の式のように構造が変化する。ビタミンCとヨウ素の反応式を記せ。

(4)(C)の値を計算で求めよ。
覚えておきたいのが、こういう問題文がいかつい問題は、案外しょぼいんですよ。
僕の持論(?)ですが、複合問題は簡単です。
確率漸化式は、合わさるとなんとなく「ウッ」と構えてしまうところがありますが、意外と始めてしまうと確率としては簡単な部類だし、漸化式としては簡単な部類です。
てな訳で、1つ1つは難しくないので、題材に圧倒されないように頑張って取り組んでみてください。
早速ヨウ素デンプン滴定!
いきなりヨウ素デンプン滴定から始まります。
①Na2S2O3(チオ硫酸ナトリウム)aqによるI2(うがい薬)aqの滴定これの実験手順を図示してみます。
これは問1、2に該当します。
この滴定は酸化剤(O剤)にヨウ素(I2)、還元剤(R剤)にチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)を用いた酸化還元滴定です。
もちろん指示薬として用いられるのは、『デンプン』(問1)でヨウ素デンプン反応の呈色を滴定の終点に用いている。よく、この手の問題を解いている人や、キッチリ勉強している人は気付いたかも知れませんが、
この問題は、普通のパターンとは酸化剤・還元剤の関係が逆のパターンになっています。よくあるヨウ素滴定は、三角フラスコ(コニカルビーカー)にO剤であるヨウ素溶液を入れ、ビュレットからR剤であるチオ硫酸ナトリウムを滴下して、ヨウ素を滅ぼしてヨウ素デンプン反応を消色させます。
しかし、この滴定は三角フラスコにR剤のチオ硫酸ナトリウムを入れ、O剤のヨウ素溶液をビュレットから滴下しています。
チオ硫酸ナトリウムを滅ぼしてヨウ素が残るようになり、ヨウ素デンプン反応の青紫色が呈するようになって滴定の終点を迎えるようになっています。

I2aq(うがい薬)のモル濃度の決定

これが最重要定義だから、作るべき量関係の式は、
『還元剤が投げた電子のモル数』=『酸化剤が捕った電子のモル数』
さらに、mmolを使えるようにして行こう!
このNa2S2O3aqによるI2aq(うがい薬)の滴定では、S2O32-が還元剤、I2が酸化剤になり、半反応式は下記の式(1)(2)のようになります。
(R剤)2S2O32–→S4O62-+2e–
モル比2:2=1:1
チオ硫酸イオンの半反応式は、与えられることがほとんどですが、なるべく覚えておいたほうがいいです。
(O剤)I2+2e–→2I–
I2aq(うがい薬)のモル濃度をC1mol/Lとし、『還元剤が出すe–mmol=酸化剤が受け取るe–mmol』として(i)の式を立てます。
Na2S2O3の物質量の等倍がS2O32-の放出するe–の物質量、I2の物質量の2倍がIの受け取るe–の物質量である事に留意して、(i)式を立てよう!
※mmol(e–)/Lとなっていますがmmol(e–)の間違いです。すみません。
∴C1=0.025mol/L
とわかる。
I2aq(うがい薬)のg(I2)/L(溶液全体)で表される濃度の決定
C1まで求まった! これで酸化還元滴定の問題は終了!
でも実は、これでは終われない、この問題で聞かれているのは、g(I2)/L(溶液全体)ならば、単位を変換するしか無い!

ちなみに、濃度変換ってこういう感じで問題の途中でこっそり出題されたりします。中和滴定の問題でも、モル濃度を求めた後に、パーセント濃度を求めさせたりします。
大問丸ごとで濃度変換を聞くことは稀ですが、こういうところで頻出なのでめちゃくちゃ重要なことが再認識してもらえれば嬉しいです。
ということで、I2aq(うがい薬)のモル濃度を変換して行きましょう。このときI2のモル質量が254g/molであることに注意しておいてください。
このように理論テンプレートで分子分母別々に計算します! 今回分母はモル濃度と一緒なので、変換不要! 分子のみmol→gに変換します!
6.4g/Lになります。
なので6.4mgとなります!
清涼飲料水=ビタミンC(L-アスコルビン酸)aqによるI2(うがい薬)aqの滴定
問3と問4に該当します!
ビタミンC(L−アスコルビン酸):はVCと
略記します。
清涼飲料水10mL中のビタミンCの含有量の決定
これも形を変えてきた
酸化還元滴定の問題!
もう一度重要なポイントを
確認しておきましょう!

作るべき量関係の式は、
『R剤が投げた電子のモル数』
=
『O剤が捕った電子のモル数』さらに、mmolを使えるようにして行こう!

『この手の滴定実験の問題では、
実験の流れ絵を”図示”しましょう!
横着しないでください!』
清涼飲料水10mL中のVCの含有量をwmgとして滴定過程を記すと、
下図のようになります。
(分からないものを文字でおくという
数学的観点は持っておいてください、
そして今回はgなので、
モル利用で速攻分子量で割るんだろうな〜
と思えたらあなたはいい感じに
身に付いて来ています!)
こういう流れ図をキッチリ書いてください。
さて本問は、VCの半反応式が
確定されていない。
与えられているのは下のVCの
酸化に伴うヒドロキシ基からカルボニル基への
構造変化だけである。
有機物中のヒドロキシ基が酸化されると
H原子が失われるが、
このHは実はH+とe–となって
脱離する(覚えておいてください)ので
VCは2つのHが失われるので、
VCは2H+と2e–が
出てゆくはずでVCのR剤歳手の半反応式は
下記の式(4)のようになる。
またO剤I2
の半反応式は先ほどと同じ!
VCの含有量がwmgである事に留意して
VCの物質量の2倍が放出される
e–の物質量、
I2の物質量の2倍が
受け取るe–の物質量
とし、
『還元剤が出すe–mmol』
=
『酸化剤が受け取るe–mmol』
として立式します。
∴w=17.6mg
清涼飲料水100mL中のVCの含有量の決定
これだけでは終わらない。
今求めたのは、10mL中のVCの
含有量17.6mgの100/10=10倍であるのは明らか!
よって17.6×10=176≒1.8×102mg
となります。
結構基本的なものばかりで
実は簡単な問題ですが、
題材が身近じゃないというところに
惑わされないでください!
絶対に解けますので!
それではきっちり復習しておいてください!