さあ化学平衡の最後の敵と
言えるでしょう『溶解度積』に
関する問題です。
(立教大(改))
この問題は、溶解度積の知識だけでなく、
ハロゲン化銀についての知識も必要
となります。
すなわちAg+イオンはF–イオン以外の
ハロゲンイオンとハロゲン化銀の沈殿
を生成する。
しかも、ハロゲン化銀の溶解度積は、
AgCl>AgBr>AgIつまり、
ハロゲンの周期が大きくなるほど、小さくなる!
この表に記した内容は
出来るだけ覚えておいてください!
①AgNO3aqの滴下量0.40mLのとき
この問題の方針
①溶液の混合による希釈
↓
②まず、沈殿しやすいAgIが全て沈殿と仮定
↓
③再溶解という順序を辿ったと仮定して問題を解く。
このような流れを考えて問題を
解いて行きます
(1)希釈の効果を考える
0.10mol/L、KClaq50mLと
0.010mol/L、KIaq50mLと1.0mol/L
AgNO3aq 0.40mLを混合すると、
容積は100+0.40mLになる。
ですが、100:0.4は100:1以下を
満たしているので、近似の条件を見たして、
100+0.4≒100mLとして差し支えありません!
化学反応が無いと仮定したなら、
モル濃度と水溶液の体積は反比例するので、
KClaq(=Cl–),KIaq(=I–)のモル濃度は
50/100倍に!
AgNO3aq(=Ag+)
結果溶液混合後の、沈殿生成に関与します。
沈殿生成
①で計算した希釈後のイオン濃度を見ると、
[Ag+]=4.0×10-3mol/L
<[I–]=[Cl–]=5.0×10-3mol/L
であることがわかる。
ゆえに、水に最も溶けにくいハロゲン化銀
であるAgが、まずAg++I–→AgI↓の
イオン反応式で(黄色)沈殿が生成し、
そのために[Ag+=4.0×10-3]=4.0×10-3mol/L
全て使われたと考えましょう。
さらに再溶解して溶解平衡に到達します。
その後、[Cl–]の濃度について考える事にします。
まず、AgIの沈殿生成のみが起きたとすると、
下記のようなモル濃度の変化が起こります。

③AgIの再溶解→溶解平衡
生成したAgI(s)が[I–]=1.0×10-3mol/L下で
xmol/L再溶解、溶解平衡に到達したと考える。
AgIの溶解度積は
Ksp=[Ag+][I–]=1.9×10-14(mol/L)とは
[Ag+]と[I–]の濃度積が1.9×10-14(mol/L)2
まで水に溶解できる事を表している
ことを考慮して、
Ksp式に[Ag+]=xmol/L,
[I–]=1.0×10-3+xmol/Lを代入し、式(1)を得る。
Ksp=[Ag+][I–]=x(1.0×10-3+x)=1.9×10-14(mol/L)2・・(1)
式(1)において、x≧0は明らかなので、
1.0×10-3+x≧1.0×10-3も明らか。
x(1.0×10-3+x)=1.9×10-14において、
()内の1.0×10-3+x≧1.0×10-3なら、
x(1.0×10-3+x)の下線を引いたxは、
x≦(1.9×10-14)/(1.0×10-3、
つまりx≦1.9×10-11mol/Lなわけで、
1.0×10-3に対してxがあまりに
小さすぎるので式(1)でxを
無視して差し支えありません!
Ksp=[Ag+][I–]=x(1.0×10-3+x)≒1.0×10-3x=1.9×10-14(mol/L)2
∴[Ag+]=x=1.9×10-11mol/L
[I–]=1.0×10-3+x=1.0×10-3+1.9×10-11≒1.0×10-3mol/L
④Cl–のモル濃度計算
もう一度希釈後の[Cl–]のモル濃度を確認しておきます。
AgClの溶解度積は、
Ksp=[Ag+][Cl–]=1.8×10-10(mol/L)2とある。
Ksp=[Ag+][Cl–]=1.8×10-10(mol/L)2は、
[Ag+]と[Cl–]の濃度積が1.8×10-10(mol/L)2まで
水に溶解できる事を表しているので、
Ksp式に[Ag+]=1.9×10-11mol/L、
[Cl–]=5.0×10-3mol/Lを代入、
AgClの沈殿が生じるかどうかを判定する。
Ksp=[Ag+][Cl–]=1.9×10-11×5.0×10-3<1.8×10-10(mol/L)2
[Ag+]と[Cl–]の濃度積が1.8×10-10(mol/L)2
まで水に溶解できるその限界値に達していない
事を表しているわけで、
AgClの沈殿は生成していない!
よって、
AgClの沈殿は生成していないので、
希釈直後の5.0×10-3mol/Lが[Cl–]となる。
∴[Cl–]=5.0×10-3mol/L
(2)AgNO3aqの滴下量0.80mLのとき
方針!
①溶液の混合による希釈
↓
②沈殿生成
↓
③再溶解
という順序をたどったと仮定して問題を解く。
①希釈効果
0.010mol/L、KClaq50mLと0.010mol/L,KIaq
50mLと1.0mol/LAgNO3aq0.80mL混合すると、
容積は100+0.8mLになる。
やはり、100:0.80は100:1以下を
みたしているので、
100+0.80mL=100mLとして差し支えないです。
化学反応が無いと仮定したなら、
モル濃度と水溶液の体積は反比例するので、
KClaq(=Cl–)、KIaq(=I–)のモル濃度は50/100倍に、
AgNO3aq(=Ag+)のモル濃度は0.80/100倍になる。
結果、溶液混合後の、沈殿生成に関与する。
②沈殿生成
①で計算した希釈後のイオン濃度を見ると、
[Ag+]=8.0×10-3mol/L
>[I–]=[Cl–]=5.0×10-3mol/Lであることがわかる。
水に最も溶けにくいハロゲン化銀であるAgIが、
まずAg++I–→AgI↓のイオン反応式で
(黄色)沈殿が生成されます。
そのために[I–]=5.0×10-3mol/Lは全て使われ、
その分[Ag+]=5.0×10-3mol/Lも
使われたと考える。
その結果
[Ag+]=8.0×10-3-5.0×10-3=3.0×10-3mol/L残り、
それが[Cl–]=5.0×10-3mol/Lのうち
3.0×10-3mol/Lと反応し、
[Cl–]=2.0×10-3mol/Lが残存、
その条件でさらにAgClが再溶解して溶解平衡に到達、
AgIはその後考える事にする。
(AgIはAgClより水に溶けがたいので、
再溶解する両派微々たる量だから、
まずAgClの再溶解を考えます。)
さきほど記したように、まず、
AgIの沈殿生成し、
その後AgCl沈殿が生成したとして、
下記のデータを得ます。
③AgClの再溶解→溶解平衡
生成したAgCl(s)が[Cl–]=2.0×10-3mol/L下え
ymol/L再溶解して、溶解平衡に到達したとする。
溶解平衡時の[Ag+]、[Cl–]は、
[Ag+]、[Cl–]は、
[Ag+]=ymol/L、
[I–]=2.0×10-3+ymol/Lとなる。
AgClの溶解度積は
Ksp=[Ag+][Cl–]=1.8×10-10(mol/L)2
とあります!
Ksp=[Ag+][Cl–]=1.8×10-10(mol/L)2は
[Ag+]と[Cl–]の濃度積が
1.8×10-10(mol/L)2まで水に
溶解できる事を表している。
この事を考慮して、
Ksp式に
[Ag+]=ymol/L
[Cl–]=2.0×10-3+ymol/L
を代入し、式(2)を得る。
Ksp=[Ag+][I–]=y(2.0×10-3+y)=1.8×10-10・・・(2)
さあこっからはただの方程式の問題です。
式(2)において、y≧0は明らかなので、
2.0×10-3+y≧2.0×10-3も明らか。
y(2.0×10-3+y)=1.8×10-10において、
()内の2.0×10-3+y≧2.0×10-3
ならば、
y(2.0×10-3+x)の下線を引いたyは、
y≦1.8×10-10/2.0×10-3、
つまりy≦9.0×10-11mol/L、
ならば、()内の2.0×10-3+yのyも
y≦9.0×10-11mol/Lな訳で、
2.0×10-3に対して、
yがあまりに小さすぎるので式(2)で
yを無視しても差し支えない。
Ksp=[Ag+][Cl–]=y(2.0×10-3+y)≒2.0×10-3y=1.8×10-10(mol/L)2
∴[Ag+]=y=9.0×10-8mol/L
[Cl–]=2.0×10-3+y=2.0×10-3+p.0×10-11≒2.0×10-3mol/L
④I–のモル濃度計算
AgIの溶解度積は、
Ksp=[Ag+][I–]=1.9×10-14(mol/L)2とある。
Ksp=[Ag+][I–]=1.9×10-14(mol/L)2は、
[Ag+]と[Cl–]の濃度積が1.9×10-14(mol/L)2まで水に溶解できる事を表しているので、
Ksp式に
[Ag+]=9.0×10-8mol/Lを
代入すると、溶液中に残存出来る、
[I–]が計算できます!
Ksp=[Ag+][I–]=9.0×10-8×[I–]
=1.9×10-14(mol/L)2
∴[I–]=1.9×10-14/9.0×10-8≒2.1×10-7mol/L
実はこの問題のポイントだったこと
最初に知識というかヒントをあげたはず、
これで、AgClよりAgIの方が溶けにくい、
というところ、
だから、再溶解する量は微々たる物と
予想がつく。
だから、まず、
AgClの再溶解から考えた!。
溶ける量の限界量を示すというのが、
『蒸気圧』に近い考え方を使います。
キッチリこの問題で復習して
置いてください。