燃料電池ってなんとなく苦手意識を持っている人も少なくないと思います。
なんとなく電池として特別扱いされているし、リン酸型と水酸化カリウム型と別れて半反応式の場合分けがあって、思考停止になっている人も多いのではないでしょうか?
でも、大丈夫!大体の人はそこさえ乗り越えたら簡単にできるし、
その前に電池の基礎が全くわかっていない場合は厳しいので、ちゃんと勉強しておいてくださいね!
目次
燃料電池の仕組みと特徴
燃料電池というのは、
H2+1/2O2=H2O+286kJ
という反応の化学エネルギーをそのまま電気エネルギーにします。この反応が終わったところで、水しか出ません。
なので、めっちゃクリーンなんですよ!この燃料電池は、アポロ号などの有人宇宙船の電源として使われていました。
まず、宇宙船を動かすために燃料電池を使いますよね。そして電池として使った後は、燃料電池からは水が出来ますよね。この出来た水を宇宙船に乗っていた宇宙飛行士たちが飲んでいたそうです。
ムッチャエコやねん。
さらに、エコなだけではなく、エネルギー効率がいいんですよ。例えば、水力発電って、

水が高い位置にある時の、位置エネルギーに始まり、それがダムで落とされて運動エネルギーに代わり、その運動エネルギーで水車を回すことでようやく電気エネルギーになるのです。
このように、元々の位置エネルギーから考えると、かなりエネルギーのロスが大きくなるのです。
しかし、この燃料電池は、化学反応のエネルギーをそのまま電気エネルギーに変えることができます。なのでエネルギー効率がめっちゃいいんです。
燃料電池は水が絡む半反応式は必須!
燃料電池のややこしいところって、水の半反応式だけなんですよ。多分、水の半反応式が4パターンあるせいでどのタイミングでどの半反応式を使えばいいかがわからないから燃料電池って難しいと思っているんです。
②H2+2OH–→2H2O+2e–
③O2+2H2O+4e–+→4OH–
④O2+4H++4e–+→2H2O
この4つ。
これって、酸性条件塩基性条件で使う式が違うんです。
こちらの記事で、水の電気分解に使われる水の半反応式を解説しています。
この半反応式の逆です!と説明するのは楽なんですが、今回はきっちり説明しておこうと思います。
まず燃料電池というのは、負極の還元剤がH2、正極の酸化剤がO2なんです。
燃料電池は2種類ある!
電池っていうのは、基本的に還元剤と酸化剤の間を引き離して、その間を導線で繋いで、電荷が偏らないのように電解質を加えるのでした。
この電解質によって、燃料電池は2種類になります。
リン酸が電解質のリン酸型燃料電池

リン酸型燃料電池の反応の流れ
ステップ1:負極に過剰なH2が吹き込まれます。

ここで水素が還元剤として反応できるのは、極板に含まれる「白金」が触媒として働いているからです。
ステップ2:放出された電子、水素イオンが正極に移動して水を生成する

ちなみに、ここで正極側に水が排出されます。その理由は、水酸化物イオンは酸性の海を渡ることができません。なので水素イオンが正極へ漂ってきます。
リン酸型燃料電池の半反応式
リン酸ってことは、さっきの水が絡む半反応式は、酸性条件な訳ですね!
まず、水素が還元剤としての半反応式は、
H2→2H++2e–
でしたね。そして、酸性なので、このままでOKです。
次は酸化剤の酸素の反応です。
O2+2H++4e–+→2OH–
となります。そして、酸性条件なので、右辺のOH–をぶち殺します。酸性条件の溶液に水酸化物イオンが入ったら一瞬で水になりますので、OH–を水に変換するために両辺に2H+を加えます。
O2+4H++4e–+→2H2O
この電池全体の反応式は、
2H2+O2→2H2O
と劇的にシンプルになります!
水酸化カリウムが電解質のアルカリ型燃料電池

アルカリ型燃料電池の反応の流れ
ステップ1:負極側の水素が電子を投げる

先ほどと同様、電極の触媒のおかげで水素が水素イオンになることが可能。
ステップ2:正極の酸素が電子を受け取ってOH–になる
ステップ3:水素イオンと水酸化物イオンが水になり負極側に排出される
リン酸型は正極側に水が排出されましたが、アルカリ型は電解質が水酸化物イオンだらけなので水素イオンが正極までたどり着くことは不可能です!
なので、負極側で水ができます。
アルカリ型燃料電池の半反応式
水酸化カリウムなので、塩基性ですよね。この時の半反応式を考えていきます。
まず、水素が還元剤としての半反応式は、
H2→2H++2e–
でしたね。そして、塩基性なので、水素イオンがそのまま存在することができません。なのでこの水素イオンを水にするために両辺OH-を加えます。
H2+2OH–→2H2O+2e–
次は酸化剤の酸素の反応です。
O2+2H++4e–+→2OH–
となります。そして、塩基性条件なので、左辺のH+をぶち殺します。塩基性条件の溶液に水酸化物イオンが入ったら一瞬で水になりますので、H+を水に変換するために両辺に2OH–を加えます。
O2+2H2O+4e–+→4OH–
当然ですが、この電池全体の反応式は、
2H2+O2→2H2O
と劇的にシンプルになります!
よく出る燃料電池の計算問題
エネルギー効率
よく出る燃料電池の計算問題に「エネルギー効率」の問題が出ます。冒頭言いましたけど、燃料電池って水素の燃焼熱をそのまま電気エネルギーに変えられるんです。
つまり、めっちゃ効率がいいんですよ!そういう特徴がある装置とかは、そのエネルギー効率を求めなければならないことが多いんです。
エネルギー効率の求め方は簡単。

です。%で出さないとダメな場合は100倍してください。
水素の燃焼エネルギーはまず間違いなく問題で与えられるので大丈夫でしょう。燃料電池の電気エネルギーですが、エネルギーの単位はJ(ジュール)です。
J=C(電気量クーロン)×V(起電力)
です。与えられることもありますが、理系として常識なので知っておいましょう。物理をしている人にとっては余裕だと思います。
起電力は問題文で与えられているので、 Cを求められれば、電気エネルギーを求めることができますよね。
C=A(アンペア)×秒です。これは見たことありませんか?
これは、Aを電子のモルに変換する時の公式、

で出てくる、A×秒がCなのです。
てことは、

ですので、この式を立てて変形すれば、

となります。
これで先ほどの分数に当てはめればエネルギー効率がでます。
燃料電池のエネルギー効率に関するデータがありましたのですが、発電効率のところはだいたいこれくらいになれば正解です。

出典:http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/008/pdf/
だいたいこれくらいのエネルギー効率が出れば正解ということになります。
まとめ
いかがでしたか、このように燃料電池についてまとめてみました。
結局燃料電池の仕組みも分解してみると、ほとんどの人が詰まっているのは、「水の半反応式」なんです。
意外な事実ですが、水の半反応式は非常に重要ですので、なんども復習しておいてくださいね。
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ほんとにわかりやすい、、
鎌田の理論化学ってゆー本買ったんですがこのサイトあったらこれいりませんね笑
ありがとうございます!
エネルギー変換効率の式の22.4ってなんですか?
気体1molの体積(L)??
燃料電池は水素と酸素から水を作る、とうろ覚えにしたまま2022の共テに出ちゃいました・・・(結果的に正解を選べたのですが・・・
この記事できちんと理解しようと思います。
電気分解は電気を流して分解する=充電
燃料電池は化学反応で電気が流れる=放電
だから半反応式の向きを逆にする、という認識で良いですか?
そのような理解でOKです。