こんにちは。
このような悩みを持っている人も多いでしょう。
本記事では熱濃硫酸が酸化力を持つ理由(濃硫酸と希硫酸が酸化力を持たない理由)と、熱濃硫酸の半反応式の作り方を解説いたします。
本サイトでは丸暗記に頼らず本質を理解しながらも、受験テクニックを使いこなし入試問題で得点できるようなノウハウをご紹介しています。
目次
熱濃硫酸の半反応式の作り方の手順
- 左辺に反応物(反応前の物質やイオン)、右辺に生成物(反応後の物質やイオン)を書く
- OとH以外の原子の数を合わせる
- 両辺で酸素が足りない辺にH2Oを加える
- 両辺で水素が足りない辺にH+を加える
- 両辺の電荷をe–で等しくする
ステップ1:左辺に反応物、右辺に生成物を書く
H2SO4→SO2
ステップ2:OとH以外の原子の数を揃える
Sの数は左辺も右辺も1個ずつなので、何もしなくてOKです。
ステップ3:両辺で酸素が足りない方にH2Oを加える
右辺の方がOが2個足りません。なので右辺にH2Oを2個加えます。
H2SO4→SO2+2H2O
ステップ4:両辺で水素が足りない辺にH+を加える
左辺にHが2個足りないので、左辺にH+を2個加えます。
H2SO4+2H+→SO2+2H2O
ステップ5:両辺の電荷をe–で揃える
左辺の電荷が右辺より+2大きいので、左辺に2e–加えます。
H2SO4+2H++2e–→SO2+2H2O
これで熱濃硫酸の酸化剤の半反応式は完成です。
では、次に熱濃硫酸は酸化力を持つのに濃硫酸や希硫酸は酸化力を持たない理由って気になりますよね。
上の半反応式は濃硫酸を加熱したときにだけ起きる酸化剤としての性質なんです。
こちらを解説していきたいと思います。
銅と熱濃硫酸の化学反応式の例題
銅と熱濃硫酸の化学反応式を作る問題はしばしば出てきます。
なので、こちらで化学反応式を作成してみましょう。
まずは酸化剤と還元剤の半反応式を作成していきます。
酸化剤:H2SO4+2H++2e–→SO2+2H2O
還元剤:Cu→Cu2++2e–
酸化剤の左辺の電子の数と、還元剤の右辺の電子の数が等しくして電子が消えるように係数を合わせます。
今回は熱濃硫酸の左辺の電子が2e–で、銅の右辺の電子も2e–なのでそのまま足すと次のような状態に成ります。
Cu+H2SO4+2H+→Cu2++SO2+2H2O
両辺の陽イオンをなくすために、溶液中の陰イオンのSO42-を両辺に加えます。
これによって完成した化学反応式は以下のようになります。
Cu+H2SO4+H2SO4→CuSO4+SO2+2H2O
熱濃硫酸には酸化力があって濃硫酸と希硫酸に酸化力がない理由
酸化力を持つのは硫酸が熱分解されることでできる三酸化硫黄(SO3)のおかげなんです。
H2SO4→H2O+SO3
このSO3が酸化力を持つのです。
SO3+2H++2e–→SO2+H2O
希硫酸の酸化剤としての半反応式
希硫酸が亜鉛と反応したりしますよね。
希硫酸は強酸性です。
つまり水溶液では電離しています。
H2SO4→2H++SO42-
実は亜鉛と酸化還元反応をしているのはH+なんですよ。
2H++2e–→H2
このように硫酸が電離してできたH+が酸化剤として作用しているのです。
なので、酸化剤は硫酸ではなく水素イオンです。
硫酸って大学受験でとても重要な物質です。希硫酸は強酸性なのに、濃硫酸は弱酸性だったりします。
このような不思議な現象の理由は、「希硫酸は強酸性だけど、濃硫酸は弱酸性である衝撃的理由!!」で解説しました。
ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
まとめ
H2SO4+2H++2e–→SO2+2H2O
硫酸自体が酸化力を持つのではなく、硫酸を熱分解してできるSO3が酸化力を持つから
※希硫酸を加熱してもH2Oが気体になって濃硫酸になるだけです。
このようになります。
いかがでしたか?
酸化還元の分野は、熱濃硫酸以外にもたくさん半反応式を覚える必要があります。
半反応式は「酸化物から生成されるもの」と「還元剤から生成されるもの」は覚えておかないと作れません。
そこで「酸化剤ごとの生成物」や「還元剤ごとの生成物」の語呂を使った覚え方をまとめて記事にしています。
のように酸化剤、還元剤からの生成物が覚えられず混乱している人はぜひ「酸化剤と還元剤の半反応式の作り方!極限まで暗記を減らす方法」の記事をご覧ください。
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