ヨウ素滴定(ヨードメトリー、ヨージメトリー)の計算法と指示薬まとめ

ヨウ素滴定のヨードメトリーとヨージメトリー

酸化還元反応を利用した滴定の1つがヨウ素滴定です。

ヨウ素滴定には、ヨウ素を酸化剤として扱うヨウ素酸化滴定(ヨージメトリー)と、ヨウ素(ヨウ化物イオン)を還元剤として扱うヨウ素還元滴定(ヨードメトリー)があります。

 

この2つで扱い方は大きく変わりますし、ヨウ素還元滴定は奇妙な動きをします。なので、きっちり区別してどっちのパターンが来ても対応できるようにしっかり学んでおきましょう。

目次

ヨウ素滴定の原理説明

ヨウ素は酸化剤としても還元剤としても働く

ヨウ素って

I2+2e→2I

2I→I2+2e

のように、酸化剤としても還元剤としても働くのです。なので、実はですね、還元剤を滴定することも酸化剤を滴定することもできます

 

てな訳で、酸化剤なのか? 還元剤なのか? で反応が違います。そして、化学的にもこの2つのヨウ素滴定に別々の名前をつけているんです。

ヨウ素が酸化剤→ヨウ素酸化滴定(ヨージメトリー)

ヨウ素が還元剤→ヨウ素還元滴定(ヨードメトリー)

この辺りの名前はややこしいので、覚える必要はありません。

ヨウ素の指示薬はデンプン?

それでは、ヨードメトリーだの、ヨージメトリーだの言う前にヨウ素滴定両方に共通することを解説します。まず、これが基本中の基本です。これが分かっていれば、別にヨードメトリーとヨージメトリーを区別する必要もありません。

 

ヨウ素滴定は、ヨウ素デンプン反応という呈色反応を使いますヨウ素デンプン反応は小学生や中学生の時に学んだあれです。デンプンと混ぜると青紫色になる反応ですよね。

ヨウ素デンプン反応

ヨウ素デンプン反応

このようなバナナやジャガイモとかで小中学校でやった事があるのではないでしょうか?これは、ヨウ素がデンプンの隙間に入ることで、呈色しているんです。

 

過マンガン酸イオンの酸化還元滴定の場合は、酸化剤の過マンガン酸イオンの赤紫色が消えなくなるところを滴定終了時と決めていましたね。

 

それと一緒で今回はヨウ素デンプン反応を終了時点に使います。

つまり!ヨウ素がなくなったら、ヨウ素デンプン反応もクソもなくて、ヨウ素がヨウ化物イオンになった瞬間に呈色しなくなります。この性質を使って滴定の終点を目でわかるようにします

 

てな訳で、この基本が分かったところで、ヨウ素酸化滴定とヨウ素還元滴定の両方を学んでいきましょう。

ヨウ素酸化滴定(ヨージメトリー)

「ヨウ素酸化滴定」とは、「ヨウ素が酸化剤として働く滴定」のことです。略してヨウ素酸化滴定。別名をヨージメトリーと言います。ちなみに、こんな名前は全く覚える必要ありません。

ステップ1:ヨウ素を溶液に溶かす

ヨウ素を溶液に溶かします。この時ヨウ素はヨウ化カリウム溶液に溶かします。なぜなら、ヨウ素って無極性分子ですよね。極性分子の水にはほとんど解けません。

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なので、ヨウ化カリウムに溶かして、イオンにします。

I2+I→I3

イオンにして溶液に溶けるようにします。

ステップ2:ヨウ素溶液に測定したい還元剤試料をくぐらせる

ヨウ素酸化滴定

反応します。ここでは例として二酸化硫黄だとします。二酸化硫黄をこのヨウ素が溶けている溶液にくぐらせます。すると、

SO2 +2H2O→SO42-+2e+4H+

I2+2e→2I

のように反応します。すると、溶液中のヨウ素が一部ヨウ化物イオンになります。ここで、重要なのが、ヨウ素は二酸化硫黄よりも過剰にあるということです。

ヨウ素酸化滴定

こんな感じで、ヨウ素のうち一部がSO2と酸化還元反応をして消費されます

ステップ3:デンプンを加えてヨウ素デンプン反応させます。

スクリーンショット 2016-04-02 17.17.31

デンプンを加えると溶液が青紫色になりますよね。そうすると青紫色になります。

 

ステップ4:ヨウ素デンプン反応の青紫色が消えるまで標準溶液で滴定する

これが目に見える反応の終点です。

スクリーンショット 2016-04-02 17.17.03

このように青紫色から透明になります。こうなると反応が終了と言えるでしょう。モル計算的に考えるとこうなります。

ヨウ素酸化滴定
受験化学コーチなかむら
ここまでで何か気づいたことはないかい?
優等生の森永くん
なんか計算の仕方が逆滴定と一緒ですよね、、、
受験化学コーチなかむら
そうなんだよ。逆滴定と全く同じ考え方を使っているんだよ!だから計算の仕方も逆滴定とほとんど同じになっているんだね!

こういう説明をしていると、そもそもの根本的な目的を忘れる人が非常に多いんですが、今回の目的は「二酸化硫黄のモル」を求めることですからね!

ヨウ素還元滴定(ヨードメトリー)

「ヨウ素還元滴定」とは、「ヨウ素が還元剤として働く滴定」のことです。略してヨウ素還元滴定。別名をヨードメトリーと言います。

ヨウ素が還元剤として2I→I2+2eとして反応します。

 

今回は還元剤としてヨウ素を使うので、滴定するのは酸化剤です。よく使われるのが過酸化水素H2O2です。

ちなみにちょいややこしいですよ!この反応。

ステップ1:過酸化水素水に過剰のヨウ化カリウムの硫酸溶液を加える!

ヨードメトリーヨウ素滴定

絵が最高に汚いですが、過酸化水素水に過剰のヨウ化カリウムを加えます。すると、ヨウ化カリウムの一部がヨウ素になります。

この緑色の分だけ、ヨウ化物イオンは、ヨウ素になります。

 

ステップ2:デンプンを指示薬として加える

ヨウ素滴定

ここでヨウ素デンプン反応のためにデンプンを指示薬として加えます。そうすると溶液が青紫色になります。

ステップ3:ヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定する

ヨードメトリーヨウ素滴定

ヨウ素溶液がチオ硫酸ナトリウムで滴定することで、ヨウ素がなくなり無色になる時が滴定の終了ポイントです。

ヨウ化物イオンからヨウ素になったものをチオ硫酸ナトリウムで滴定すると、間接的に、過酸化水素を滴定することができているんですよ!

 

ちなみに、直接過酸化水素とチオ硫酸ナトリウムを滴定できない理由は大丈夫ですね?直接やると指示薬がないからです。そもそもの本題になりますが、過マンガン酸イオンとヨウ素が指示薬として使われるのは、色付きの酸化剤還元剤だからです。

 

このヨードメトリーってさっきの逆滴定っぽいヨージメトリーとは違いますよね。この反応のイメージって、お金みたいなもんなんですよ

 

昔は野菜と魚を交換していました。でも野菜の価値を相対的に測れないわけですよ。野菜と魚ってどれくらいの価値同士だと考えたりいいのか?

 

だから、野菜をまず換金します

 

ヨードメトリーは野菜の価値は、魚にしたらどれくらいか?ってことを測るものです。だから最終的には、お金って関係ないですよね。

白菜→200円に変換。(-白菜+200円)

200円→魚に変換(-二百円+魚)

合計するとー白菜+魚なんですよ。白菜がなくなって魚を手に入れただけなんです。お金自体は間を繋いでいるだけで最終的な量計算には入らないんです。

 

それと一緒でヨウ素は間をつなぐだけで、最終的な量計算的にいうと、過酸化水素とチオ硫酸ナトリウムの滴定と同じなんですね

 

これが、もし普通に便利な指示薬があればヨウ素を挟む必要がないんですが、残念ながら酸化還元滴定にはその指示薬がないので、このようにヨウ素を挟むことになります

 

 

ヨウ素滴定まとめ

ヨードメトリーは生じたヨウ素を滴定する。
ヨージメトリーは残ったヨウ素を滴定する。

最後に

さあ、酸化還元滴定なんてものは全てこの2つだけなんです。違うように見えても結局この2つを応用しているに過ぎないんです。だから、恐るるに足りません!!

 

計算問題では、特にヨウ素滴定でヨージメトリーかヨードメトリーかでしくじる人が多いです。ヨージメトリーでも無駄にヨウ化カリウムが出てきますからね笑。

 

しかも、まさか問題文でこの2つを区別する方法を教えてくれることはないですからね。なので両方確実にできるようにしましょう!



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浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。