入試問題で気体分野では、ほぼ間違いなく混合気体がでます。なので気体が一種類の時の問題を解くことができたとしても、まだ不十分です。
結局、前回の気体の法則を扱えるようになっても、混合気体の解法をしならければ全く無意味なんです。
混合気体をスラスラ普通に解けている高校生を見たことがありません。俺も大嫌いでした。モルにしようとすると、膨大な計算量に頭が爆発しそうになります。
そして、そもそも何していいか全く分からなくなる。
でも、俺はこの分野を克服しました。その経験や多くの受験生の観察によって、
なぜ混合気体の問題を多くの受験生が出来ないのか?
という原因が分かりました。
あなたの受験勉強に一筋の光を刺すような記事にしていきます。
目次
モル利用ができない?
化学の計算は、『モル利用』が基本でした。しかし、
の記事でも書きましたが、
PV=nRTには変数が4個もあり、nを計算するのは面倒くさすぎます。さらに、混合気体だから、複数の気体が混じっているから頭がごちゃごちゃになります。
「それぞれの気体に別々に状態方程式使うんかよ!」とかツッコミ入れたくなる!
これも受験生が混合気体が苦手な理由でもあります。
でも混合気体には量計算がありますから、モル利用をしなければ話になりません。
ではどうすべきか?それを次の章で説明しましょう!
混合気体では分圧と分体積
混合気体でどうやってモル利用するのか?って話をして行く前に、混合気体で分圧、分体積って言葉を知っているでしょうか?
多分、言葉を知っているし、よく勉強している人ならば、「ドルトンの分圧の法則」という言葉とかは聞いたことがあると思います。
全圧=分圧の和
とか知っている人もいると思います。でも、この全圧=分圧の和ってことを知ったからなんだ?って話ですよね。
んで??それが??
ドルトンの分圧の法則を初めて知った時に思ったのがこれ。だからどうした?って話なんですよ。
しかも、なぜか分圧だけが取り上げられて、分体積には法則名がないというね、、、
分圧説明して分体関説明しないとかおわってんだろ pic.twitter.com/8GNZ7J7dJu
— 受験化学コーチなかむら (@kagakucenter) 2018年3月2日
こんな感じで、教科書とか重要問題集で、分圧は取り上げるくせに分体積はまともに取り上げないんですよね。無茶苦茶におかしいぞ!!
ちなみにいうと、入試での分圧と分体積は完全に平等です。両方とも同じくらいの比率で使います。法則名がないだけなんです。教え方が悪い!
でもね、分圧と分体積って別に違いもないし、理解はできると思うんですよ。ほとんどの受験生は、「分圧と分体積はわかる。でもこれって何に使うねん!」っていう状態だと思うんですよ。
というわけで、この分圧と分体積って何に使うかを話していきます。結構驚く用法だと思います。僕も最初分圧と分体積がなんのためにあるか知らなかった時これを知って結構感動しました。
実は、
分圧と分体積は、混合気体における”モル “の役割をします。分圧やら分体積はモルと同じように使うことができます。
まあ、どういうことかがわからない人もいるかもしれないので、例題を出します。
こういう問題があったとします。まず従来通りモルで求めてみましょう。圧力と温度が与えられていないので、P,Tとします。
反応前のA,Bのモルは、
このようになりました。この中で、
はどうせ定数なんで、kとしますね。すると気体A,Bのモルは、3k,1kになります。この反応のモルを計算してみると、
こうなるわけですよ。反応後のモルは、3kmolになります。求めるのが、この時の全圧なので、
PV=(3k)RTとします。
なので、3k=Vk となって、V=3Lとなります。
モルは体積に比例しているんです。体積もモルに比例しているんです。なので、モルじゃなくて体積で計算してもいいんですよ。
この混合気体の種類ごとの体積を分体積と言います。そして、分体積はモルの代わりに使うことができます。
つまり、分圧や分体積を使って、モル計算のように計算に使ってもよいということなんです!
これ、めっちゃ画期的じゃないですか?
これのおかげで、無理にモルに直さずにモル計算をすることができるんです。多くの受験生が分圧と分体積の概念をややこしいものと思っているかもしれません。
でも、全然そんなことはないです。分圧も分体積もあなたの味方です。必ず使いこなしてください。
分圧が使える場面は?
分圧とは、混合気体である気体を取り出した時の、圧力です。でも現実にその気体だけを取り出したりはできないので、バーチャルなものだと思ってください。
仮に混合気体を種類別に分離した時の種類別の圧力です。
そして、分圧が使えるのは、「V,T一定の時」という条件があります。なぜV,T一定の時しか使えないのか?
状態方程式で考えていきます。まず、V,Tが定数ということで、状態方程式の中の定数を Rにまとめます。
このようになります。V,T一定ということで圧力はモルに比例します。つまり、計算などをするときに圧力でモルのかわりに行うことができるんです。
その代用品こそが、この分圧なのです。なぜならP=knでP(分圧)がn(モル)に比例しているからです。
P全=PA+PB+・・・・
っていうドルトンの分圧の法則を習ったと思います。
ドルトンの分圧の法則がこれなんです。分圧をモルみたいに使ってもいいですよ〜っていう法則なんですよ!
分圧でよく使う公式
分圧でよく使う3つの公式をお話ししておきます。とはいえ、別にそれほど難しいものはありません。言われれば、当然のものばかりです。
xという気体の分圧をPx、モルをnxとします!
これは、全圧は分圧の和であるということを示す公式です。ドルトンの分圧の法則と言います
これは、分圧比はモル比に等しいという公式です。
これは、分圧は全圧にモル分率をかけたものであるということを表しています。モル分率っていうのは、全気体のうちのある気体のモルの割合です。
分体積が使える場面は?
分体積とは、混合気体である気体を取り出した時の、体積です。分圧と同様で体積を取り出すとかできないので、バーチャルにP,T一定で分離した時の量です。
これも状態方程式を考えていきます。PV=nRTのうち、P,TがRと一緒にまとめて定数なんです。
よって
となります。つまり、P,T一定のとき、体積はモルに比例するんです。
分体積でよく使う公式
xという気体の分圧をPx、モルをnxとします!
これは、全体積は分体積の和であるということを示す公式です。当たり前です。
これは、分圧比はモル比に等しいという公式です。
分体積は全体積にモル分率を掛けたものであるということを表す公式で、分圧と一緒です。
混合気体の秘策!圧倒的な解法を大公開!
それでは、混合気体が苦手な人へ!お待たせしました。
混合気体の解法を話していきますね!
これをきっちりできるようにならないと、冒頭でも言いましたが、蒸気圧もヘンリーの法則も
「気体はあんまり出ないから〜」とか言っている人いますが、気体平衡なんて超頻出です。混合気体の問題をわかっていないとヘンリーの法則も解けないですからね。
そう、その方法とは!
図をかく!
です。
「え、そんな程度のことかよ!」
って思った人もいるかもしれませんが、図に書くことで、
分圧を扱うときの図の書き方
ステップ1:まず混合気体の図にデータをかく。
このように、四角の中に気体を書きます。種類毎に粒も分けます。そして、圧力や体積のデータも記入していきます。
ステップ2:V,T一定で分離する
このように、全く同じ体積の図を描きます。
分体積を扱うときの図の書き方
ステップ1:まず混合気体の図にデータをかく。
このようになります。
ステップ2:P,T一定で分離する(同じ大きさの箱を書いてくぎる)
このように、問題文を図にしていきます。
補足:分圧と分体積を変換する方法
例えば、メタンとエタンと酸素の混合気体を燃焼させる問題があったとします。燃焼後は、酸素と水になります。この時水が気体になるかどうかで蒸気圧と絡めてくる問題もあります。恐ろしい融合問題ですね。
よくあるパターンが、メタンとエタンは分圧で与えて、酸素と水の分体積を求めさせるパターンです。つまり、何処かのタイミングで、分圧と分体積を変換しなければなりません。
ということで、分圧と分体積を変換する方法を話しておきます。例題で確認していきましょう!
27℃で1.0×105Paの酸素1Lと窒素2Lを混ぜて、6Lとしたものの酸素の分圧を求めよ!
こういう問題、まず酸素と窒素の分体積が与えられています。そして、これを分圧に変換します。
ステップ1:酸素と窒素の図を書く
まず、酸素と窒素は分圧で与えられているので、P,T一定で混合気体にします。
このようになります。まず、図にデータを書き込みます。つぶつぶの数の比は分体積比です。P,T一定の時は分体積比=モル比ですからね!
ステップ2:酸素と窒素をP,T一定で混合
それでは、次にこの酸素と窒素を混じり合わせます。
ステップ3:V,T一定で混合気体を分離
こんな感じで、合体したものをもう一度分離することができます。
ステップ4:混合前と分離後の酸素で一定のものを確認して気体の法則を考える
このように、分離前と分離後の変化を考えます。分離前と分離後では、nとTが一定ですよね。てことは、PV=kでボイルの法則を使うことができます。
このように、P,T一定の時、V,T一定の時で分離して、その種類同士で気体の状態方程式で何が一定かを確認し、気体の法則を見出します。
まとめ
混合気体⇒モルをPV=nRTで求めるのは面倒で頭がパニックになる。
⇒種類別に分ける。
計算が簡単になります。
分け方!
→p,T一定で分けると分体積、
→V,T一定で分けると分圧。
どうでしたか?混合気体と言ってもきっちり図を書くことができれば必ず解くことができます。なので、必ずこのように体系的に解いて生きましょう。
そして、混合気体をマスターさえすれば、多くの受験生が苦手な蒸気圧もヘンリーの法則も気体平衡も全然大したことがないということがわかります。
本日の記事はいかがでしたか? 最後までご覧いただきありがとうございます。
PV=nRTで
温度と体積一定ならP=kn(k定数)で分圧比=モル比
温度と圧力一定ならV=kn(k定数)で体積比=モル比
はわかります
でもどこぞの解答で
「混合気体において圧力比=モル比=体積比なので」と体積比を圧力比として分圧につなげたりしてました。
このみっつの比がどうして同時に成り立つんですか?
同時には成り立たないですよ、
p,T一定のときの体積比と
V,T一定の時の分圧比が等しいです。
混合気体を別々に仮想分離したときのものですね。
そもそも分圧と分体積というのは、
同時に成り立つ概念ではないので、
ほかの記事で体積と体積は足し合わせれないと見た気がするのですが(ごまと豆の比較)
分体積だと成り立つんでしょうか?
質量と質量を足したら保存則で成り立つのはわかるのですが。。。
溶液の場合は密度が近ければ足し算できますよ(中和反応の問題で「希釈」を考えることがあります。その時は溶液の体積を足し合わせます。)
ごまとかの話は、密度が違うと隙間に入るので、単純に体積の足し算はできませんよ〜という話です。
気体は種類が異なっても体積は同じです。
なぜなら、元々密度がスカスカだからです。
気体は種類によらず1molあたりの体積が同じというのがアボガドロの法則です。
これが成り立たないと、PV=nRTなんて成り立ちませんよね?(気体の種類によって今まで公式を変えたことはないですよね?)
根本的に知識不足でした。
返信ありがとうございました。
ほかの記事も参考にさせていただきます!
水素とメタンのモル比が2:1の混合気体が標準状態で3Lある。これを完全燃焼させるには標準状態の空気は何リットル必要か?空気に含まれる酸素の割合は20パーセントとする。この問題の解き方教えてください!
燃焼の同じような問題でコチラで解法を完全解説しております!これで解法を掴んでください!
香川大のやつ問題が載ってないんで…
コチラになります!頑張ってください!
ありがとうございます!頑張ります!
混合気体の○と●の数は適当でいいんですか??気になったので質問しました。
いいですよ。
どちらのほうが多いとか、それくらいがわかれば適当でだいじょうぶです
分体積の一つ目の問題の100kpにするってのは、全圧のことですか?それぞれの分圧のことですか?
分圧も全圧もですね。
化学反応が起こってる問題で、最初がmolからスタートしていて全圧を求めたい時はPV=nRTを使うしかないんですか?
問題によるからなんとも言えないですね。
これらの分体積の求め方などは覚えるのですか?
やり方は覚えてみてください。
さっぱりだった混合気体がこの記事のお陰で2017年の東工の混合気体の問題が解けました!
おお! いいですね。
分圧も分体積もモルなんですよね
スマホでみていますが、重要な式がすべてネットの関数で現れてます
公式などの意味が分からないので是非改善よろしくお願いします
改善しました。ご報告ありがとうございます。
温度が一定で、体積と圧力が一定じゃない時はどうやって求めればいいですか?
ボイルの法則ですね。
最後の窒素と酸素の問題のステップ4の図で、P,T一定で混合とありますが、どうしてPが一定のままなのか分かりません。
酸素の分圧、窒素の分圧がそれぞれ一定ということですか?
気体が増えて、一見圧力が大きくなりそうですが、その分体積が大きくなります。
PV=nRTなので、PとVは温度一定の時反比例していることがわかります。
だから、体積が増えている分Pが一定なのです。
体積が一定のところに気体を入れたら圧力は大きくなります。
すいません、分圧が100k Paと100kPAで、 Pa一定の時に、全圧がなぜ200k Paではなく100k Paなのですか??
「圧力一定」の条件が書かれていますよね?
だからです。
「温度、圧力一定で窒素、酸素が体積比4:1で混合した」この時なんで分体積は分圧に比例するんですか?
いや比例しませんよ。
[…] ちなみにこの分離の仕方は受験化学コーチなかむらさんが分かりやすく解説していますので、確認ください。 […]
質問すみません
重要問題集の気体の法則、55番(2)(3)を図で考えたいのですが、理解が乏しくてできません
お願いしたいです
mol分率の式の分母
na+nbではないでしょうか
ありがとうございます!
修正いたしました!
分圧のよく使う公式のとこで
分圧がモル分率と全圧の積で表せる公式
の画像のモル分率のとこが間違ってる気がします
分体積も
ありがとうございます!
修正いたしました!