どうも受験化学コーチなかむらです。
このようなことに悩まんでいませんか?
実は濃硝酸と希硝酸の半反応式を迷わず書けるようになる必殺の語呂合わせがあります。
また、なぜ濃硝酸と希硝酸で生成物が異なるのかを理解したい人のためにも濃硝酸からは二酸化窒素、希硝酸からは一酸化窒素が生成されるメカニズムも徹底的に解説しています。
ぜひ本記事を最後まで読んでみてください。
目次
濃硝酸と希硝酸の半反応式の違いと語呂で覚える方法
濃硝酸:HNO3+H++e–→NO2+H2O(二酸化窒素が生成される)
希硝酸:HNO3+3H++3e–→NO+2H2O(一酸化窒素が生成される)
このように濃硝酸からはNO2が生成され、希硝酸からはNOが生成されます。
なので、これを解決するために語呂を作成しました。
次の語呂を使って濃硝酸と希硝酸の半反応式の生成物を覚えてしまってください。
ノー(濃硝酸)はノー(NO2)じゃない、ノーじゃない(希硝酸)はノー(NO)
濃硝酸は名前の中に「濃(ノー)」があります。
濃硝酸からの生成物はNO2になります。二酸化窒素はローマ字読みでノーになりません。
つまり、「ノー(濃硝酸)はノーじゃない(NO2)」で覚えます。
逆に希硝酸は「希(ノーじゃない)」のでノーじゃないです。
希硝酸からの生成物はNO(ノー)になります。一酸化窒素はローマ字読みでノー(NO)ですよね.
つまり、「ノーじゃない(希硝酸)はノー(NO)」で覚えます。
というふうに何度も何度も唱えていると濃硝酸と希硝酸の半反応式の生成物はすぐに覚えられます。
同じ硝酸なのに濃硝酸と希硝酸で生成物が異なる理由
濃硝酸も希硝酸も同じ硝酸なのに、どうして濃硝酸からは二酸化窒素(NO2)が生成されて、希硝酸からは一酸化窒素(NO)が生成されるのでしょうか?
結論からいいますと、「水の量が生成される気体に影響を与えている」のです。
順を追って解説していきます。
濃硝酸も希硝酸も実はNO2とNO両方生成している
実は濃硝酸も希硝酸も両方ともNO2もNOも両方とも生成しています。
具体例としてよく使われる銅(Cu)に硝酸を加える反応で考えますね。
じつは、銅と濃硝酸、銅と希硝酸、どちらの反応もNOとNO2両方とも生成されます。
濃硝酸の時にもNOは発生するし、希硝酸の時にもNO2は発生します。
実はNOもNO2も両方とも発生しているのです。
ただ濃硝酸の時はNOが、希硝酸の時はNO2が途中で消えてしまうのです。
どういうことかを濃硝酸と銅の反応、希硝酸と銅の反応に分けて解説します。
濃硝酸が酸化剤の時にNOが途中で消えてしまう理由
濃硝酸と銅が反応したとしても、NOもNO2も生成されます。しかし、途中でNOが濃硝酸に酸化されてしまいます。
そもそも濃硝酸の溶液中を思い浮かべてみましょう。
濃硝酸っていうのは、硝酸分子が大量にいるわけです。
なので発生したNOはHNO3に簡単に捕まってNO2に酸化されてしまうのです。
硝酸は酸化剤ですので、今か今かと酸化したいと思っているのです。
希硝酸の場合は水が割合として多いのです。
するとNO2は水に溶けるのです。
NO2が水に溶ける反応は実は「ソルベー法」で硝酸を作るときに使われるときと同じような反応が起こります。
3NO2+H2O→2HNO3+NO
という反応が起きます。
このようにして結果的に、濃硝酸からはNOがNO2に酸化されることで、生成されるのはNO2がほとんどになるし、希硝酸の場合はNO2が水に溶けるとNOと硝酸が発生してしまうので、結果的に一酸化窒素しか出てこない状態です。
希硝酸の場合はNO2は水に溶ける
希硝酸は濃硝酸と違って「水の量が多い」です。
なので二酸化窒素が水と接する機会も増えて、水に溶けやすくなります。
希硝酸の場合はNO2は水に溶けます。(NOは水に溶けません)
二酸化窒素が水に溶けた反応って無機化学でも重要な反応です。硝酸を作る工業的製法の「ソルベー法」の中の1つの反応です。
この水と二酸化窒素の反応を見ると、反応後に「硝酸」と「一酸化窒素」ができています。
このように希硝酸からはNO2が発生するものの、水と反応してNOと硝酸になってしまうので、希硝酸の酸化剤としての生成物はNOになります。
濃硝酸と希硝酸の半反応式の実際の作り方
半反応式の作り方のおさらい
- 左辺に反応物(反応前の物質やイオン)、右辺に生成物(反応後の物質やイオン)を書く
- 両辺で酸素が足りない辺にH2Oを加える
- 両辺で水素が足りない辺にH+を加える
- 両辺の電荷をe–で等しくする
濃硝酸の半反応式の作り方
ステップ1:左辺に反応物、右辺に生成物を書く
濃硝酸の場合は左辺がHNO3で右辺がノーじゃないNO2です。
HNO3→NO2
ステップ2:両辺で酸素が足りない辺にH2Oを加える
酸素が足りないのは右辺です。Oが1個不足しているのでH2Oを1個右辺に加えます。
HNO3→NO2+H2O
ステップ3:両辺で水素が足りない辺にH+を加える
左辺が1個Hが足りません。左辺に1個H+を加えます。
HNO3+H+→NO2+H2O
ステップ4:両辺の電荷をe–で等しくする
左辺の電荷が1個分大きいので左辺にe–を1個加える。
HNO3+H++e–→NO2+H2O
上記が濃硝酸の半反応式です。
希硝酸の半反応式の作り方
ステップ1:左辺に反応物、右辺に生成物を書く
希硝酸の場合は左辺がHNO3で右辺がノーでNO。
HNO3→NO
ステップ2:両辺で酸素が足りない辺にH2Oを加える
酸素が足りないのは右辺です。Oが2個不足しているのでH2Oを2個右辺に加えます。
HNO3→NO+2H2O
ステップ3:両辺で水素が足りない辺にH+を加える
左辺が3個Hが足りません。左辺に3個H+を加えます。
HNO3+3H+→NO2+2H2O
ステップ4:両辺の電荷をe–で等しくする
左辺の電荷が3個分大きいので左辺にe–を3個加える。
HNO3+3H++3e–→NO2+2H2O
上記が希硝酸の半反応式です。
半反応式の作成は簡単ですよね。
ノー(濃硝酸)はノー(NO2)じゃない、ノーじゃない(希硝酸)はノー(NO)
これだけはちゃんと覚えておいてください。
まとめ
ノー(濃硝酸)はノー(NO2)じゃない、ノーじゃない(希硝酸)はノー(NO)
- 濃硝酸も希硝酸もNOとNO2両方生成する
- 濃硝酸は発生したNOを酸化してNO2にしてしまう
- 希硝酸は発生したNO2が水に溶けてHNO3とNOになってしまう
濃硝酸:HNO3+H+→NO2+H2O
希硝酸:HNO3+3H++3e–→NO2+2H2O
いかがでしょうか?
濃硝酸と希硝酸の半反応式の生成物の覚え方の区別がスッキリできて、かつ理解もできたのではないでしょうか?
このほかにもこのサイトでは半反応式の作り方と覚え方を徹底的に解説しています。
以下の記事で半反応式をまとめていますので、ほかにも覚えられない酸化剤や還元剤がありましたら、こちらをご確認ください。