こんにちは。
受験生の時、なんとなく限界イオン半径比に苦手意識を持っていたんですよ。なんとなくとっつきにくいじゃないですか。ですが、今回の記事では、なんとなくの苦手意識を破壊していこうと思います。
ほとんどの人は、セミナーや重問の解法を丸暗記しているだけなので、ここできっちり理解してその他大勢と差をつけましょう。
※この記事は2分以内に読み切ることができます。
目次
大前提!イオン結晶の安定性とは?
限界イオン半径比を理解するためには、イオン結晶の安定性を理解しておく必要があります。この知識が大前提です。①から③にいくにつれてイオン結晶は不安定になります。(というかイオン結晶として成り立たない)
正の電荷を持つ陽イオンと負の電荷を持つ陰イオンが接しているおかげで、イオン結晶は安定しているのです。そしてなるべく陽イオン同士、陰イオン同士は接触したくないんです。なぜなら反発する力が発生してしまうからです。
なので、
このように陰イオンと陽イオンが接して、陰イオン同士が離れている①の状態は安定しています。一方一番右側の③のように、
陰イオン同士が接してしまい、さらに陰イオンと陽イオンが接していないくらい陽イオンと陰イオンの大きさに差があると、イオン結晶が不安定になってしまいます。
そして、真ん中の②はその間で、ギリギリの状態です。
このギリギリの状態で、「イオン結晶の限界」です。なので、限界イオン半径比はこの状態のイオン結晶の半径の比を求めるためのものだと理解しておいてください。
限界イオン半径比とは?
限界イオン半径比は、先ほどの図の陰イオン同士がギリギリ接している時の、陽イオンのイオン半径と陰イオンの半径の比のことを言います。
下図がマックスの安定性の状態でこの状態で、比を取ったのが限界イオン半径比というものです。
この状態は、イオン結晶として成立するギリギリの状態でして、これよりもイオン半径比(r+/r–)が小さくなる(=陰イオンの半径が大きくなる)と、
このように、陽イオンと陰イオンの間に働く引力よりも、陰イオン同士の反発力の方が大きくなります。すると、イオン結晶が崩壊してしまうのです。
このことをまとめるとこのようになります。
のときは、イオン結晶を保持できる。
のときは、イオン結晶が壊れる。
受験化学の限界イオン半径比の2パターン
受験化学で出題される限界イオン半径比は次の2パターンです。なので、この2パターンをマスターしておれば、基本限界イオン半径比の問題は大丈夫でしょう。
この2パターンは、NaCl型のイオン結晶とCsCl(塩化セシウム)型のイオン結晶です。
NaCl型の限界イオン半径比
まずはNaClで右上の三角形に着目します。
緑色部分の直角三角形で三平方の定理で有名な整数比になります。
この時、三平方の定理より関係式を作ることができます。
1:√2=(r–+r+):2r–
という比なので、ここから関係式を導きだします。
この計算式で導出する事が出来ます。
√2-1=0.41なので、限界イオン半径比は0.41となります。これより小さいとNaCl型のイオン結晶は結晶構造が崩れてしまいます。
CsCl型
この図のようになりますので、これもまた右上の三角形に注目します。
この緑色の三角形から三平方の定理より
となります。
√3-1=1.73-1=0.73が限界イオン半径比になります。
限界イオン半径比の問題の解法ステップ!
それではここまで読んでくれた人に、この問題の解き方の解法ステップを見ていってもらおうと思います。
ステップ①陽イオンが限界の小ささのときに、陽イオンと陰イオンが接する面を書く
接する面を考えてその断面を抜き出します。
NaCl型なら
この赤い部分。
CsCl型なら
このような面となります。
ステップ②陽イオンと陰イオンのイオン半径の関係式を作る。
これは基本的に三平方の定理の三角形の有名な比と当てはめます。これによって関係式を作る事が出来ます。
ステップ③r+/r–の形を全力で作る。
ここは数学です。数学でなんとかr+/r–=の形を作ります。
数学と言うより、算数です。
演習問題
アルカリ金属ハロゲン化物の結晶の中には下図のような立方体型の単位格子を持つものがある。これについて、次の2つの問いに答えよ。ただし、イオンは剛体球であるとする。
問1:隣り合う異なるイオン種同士は互いに接しているものとし、またアルカリ金属とハロゲン化物のイオン半径をそれぞれr1,r2として、立方体の1辺のながさを表せ。
問2隣り合うことなるイオン種同士は互いに接していなければならないとした場合、KBr、CsBrのうち下図のような構造をとりえない塩はどれか。ただし、イオン半径はK+=0.138nm、Cs+=0.170nm、Br–=0.196nmである。
1995年東工大
この問題は、「塩化セシウム型」なので、こちらの断面を使って問題を解いていきます。
最後に
限界イオン半径比はイオン結晶が保たれる限界の陽イオンと陰イオンのイオン半径の割合の事である!
安定性の限界なんだ!という事がわかったと思います。おそらく、今まではただただ、セミナーに載っているからという理由でやっていたと思いますが、
ここからは理屈を持ってやっていってください!
NaClなどの構成原子の半径を求める問題はたくさん解いてきましたが、限界イオン半径比、という用語は初めて聞きました。
r+の方がr-より大きいと、イオンが維持できるかどうかの不等号は逆になると思いますが、陽イオンの方が大きいことはありえない、ということでしょうか?
陽イオンが大きくなっていって陽イオン同士が接触するという場面はなぜ考えなくても良いのでしょうか?
接触すると仮定してみましょう。
CsClの場合 Csのイオン半径0.181,Clのイオン半径0.167で陽イオンの方が大きいです。
いま、①(1≧)r+/r–≧√3-1(1≧が入っているのは、陰イオンのイオン半径の方が大きいから)でしたよね。
結晶はとても大きく規則的だから、視点を変えれば、セシウムイオンと、塩化物イオンを入れ替えて考えても言い訳です。すると、記事の通り計算して、
②(1≧)r–/r+≧√3-1(1≧が入っているのは陽イオンのイオン半径の方が大きいから)となります。
ここで②の逆数をとりましょう。各辺正なので、
③1≦r+/r–≦1/√3-1(=√3+1/2=1.37)
ここで①と③を繋げて見まると、、、
√3-1≦r+/r–≦1/√3-1 ⇔0.73≦r+/r–≦1.37・・・*
*が、イオン半径大小によらない限界半径の範囲となります!
(イコールの吟味が曖昧ですが御理解ください)
一般的に陽イオンより陰イオンの方が大きいです。