こんにちは。


本記事では酸化剤還元剤の半反応式の作り方と、主要な酸化剤や還元剤の半反応式の一覧をまとめていきます。
大学受験において酸化還元は最も重要な反応の1つです。理論化学だけでなく有機化学、無機化学でも頻繁に出題されます。

「半反応式は覚えなくて良い!」と習った人も多いと思います。もちろん、覚えなくても解けるのですが、大学受験は時間との勝負なので頻出なものを覚えておくと回答までにかかる時間を大幅に節約できます。
目次
半反応式とは?

半反応式は酸化還元反応を、酸化剤と還元剤ごとに作った別々の反応式のことです。化学反応式の半分の反応式なので、半反応式です。
酸化還元の化学反応は、「還元剤が酸化剤に電子をぶん投げる反応」です。

これを分解すると、
- 還元剤が電子を投げる反応
- 酸化剤が電子を受け取る反応
この2つに分けられます。なので、半反応式は、還元剤の半反応式と酸化剤の半反応式があります。
「酸化還元の最重要定義!学校では教えてくれない受験テクとは?」を読んでみてください。
半反応式の作り方のステップバイステップ
- 左辺に反応物(反応前の物質やイオン)、右辺に生成物(反応後の物質やイオン)を書く
- 両辺で酸素が足りない辺にH2Oを加える
- 両辺で水素が足りない辺にH+を加える
- 両辺の電荷をe–で等しくする
この流れです。難しくないので5回くらいいろんな半反応式で練習してみてください。本記事では、難しめの硫酸酸性条件でのMnO4–(過マンガン酸イオン)で作っていきます。
1.左辺に反応物(反応前の物質やイオン)、右辺に生成物(反応後の物質やイオン)を書く
MnO4–→Mn2+
過マンガン酸イオンMnO4–を左辺に書き、反応後のマンガンイオンMn2+を右辺に書きます。ちなみに、この過マンガン酸イオンが硫酸酸性条件でマンガンイオンになるのは暗記です。
なので、
ちなみに、酸化剤と還元剤の半反応式の反応物(左辺)と生成物(右辺)をまとめます。基本暗記ですが、なるべく語呂や理屈をつけて覚えやすくします。
2.両辺を比べて酸素の不足量をH2Oで補う。
MnO4–→Mn2++4H2O
ステップ1で反応物と生成物を書くと右辺に「O」が4個足りません。このOの不足分をH2Oで補います。
Oが4個不足しているのでH2Oを4個増やします。
3.Hの不足分をH+で補う。
MnO4–+8H+→Mn2++4H2O
このように右辺にH2Oを補うと今度は、左辺がHが右辺に比べて不足します。
これを補うのが水素イオンH+なのです。左辺にHが8個足りないので8H+を足します。
4.電荷の偏りを電子で補う。
MnO4–+8H++5e–→Mn2++4H2O
左辺の電荷の合計は、過マンガン酸イオンが-1水素イオンが+8これより+7
一方右辺は、Mn2+の+2
左辺の方が+5正電荷が多いのです。だからこの+5を打ち消すため、左辺に-5をします。この−5は−1の電荷を持つ電子を使います。
これが、半反応式の作り方です。
酸化剤と還元剤の半反応式を作るには反応物と生成物を覚えないといけない
反応物(酸化剤) | 生成物 | 半反応式 |
O3(オゾン) | O2 | O3+2H++2e–→O2+H2O |
H2O2(過酸化水素)酸性 | H2O | H2O2+2H++2e–→2H2O |
MnO4–過マンガン酸イオン(酸性) | Mn2+ | MnO4–+8H++5e–→Mn2++4H2O |
MnO4–過マンガン酸イオン(中性、塩基性) | MnO2 | MnO4–+2H2O+3e–→MnO2+4OH– |
HNO3(濃硝酸) | NO2 | HNO3+H++e–→NO2+H2O |
NO3– | NO | NO3–+4H++3e–→NO+2H2O |
H2SO4(熱濃硫酸) | SO2 | H2SO4+2H++2e–→SO2+2H2O |
Cr2O72-(二クロム酸イオン) | 2Cr3+ | Cr2O72-+14H++6e–→2Cr3++7H2O |
X2(ハロゲン) | 2X– | X2+2e-→2X- |
SO2(二酸化硫黄) | S | SO2+4H++4e–→S+2H2O |
O2(酸素) | 2O2- | O2+4e–→2O2- |
反応物(酸化剤) | 生成物 | 半反応式 |
O2(酸素) | O3 | O2+H2O→O3+2H++2e– |
H2O2(過酸化水素) | O2 | H2O2→O2+2H++2e- |
SO2(二酸化硫黄) | SO42- | SO2+2H2O→SO42-+4H++2e– |
H2(水素) | H+ | H2→2H++2e- |
Cl-(塩化物イオン) | Cl2 | 2Cl-→Cl2+2e- |
I-(ヨウ化カリウム) | I2 | 2I-→I2+2e- |
H2S(硫化水素、硫化物イオン) | S | H2S→S+2H++2e– |
Fe2+(鉄(II)イオン) | Fe3+ | Fe2+→Fe3++e– |
C2O42-(シュウ酸) | CO2 | C2O42-→2CO2+2e– |
RCHO(アルデヒド) | RCOOH(カルボン酸) | RCHO+H2O→RCOOH+2H++2e- |
S2O32- | S4O62- | 2S2O32-→S4O62-+2e– |
上の表にある酸化剤還元剤の生成物は覚える必要があります。大半のものは問題を解いている間に自然と覚えることができます。
ですが、
- 反応物から生成物を覚えるのって結構だるいし大変
- よく使う半反応式はもっと素早く書ける方がよい。
ですよね。なので、半反応式が覚えられない時にどうやって覚えたらいいのかを
この2つを潰していいきたいと思います。
半反応式の反応物と生成物を覚えるのが難しい時に暗記を極限まで減らす方法

半反応式で酸化剤、還元剤の反応物と生成物を覚えることでつまづく人が非常に多くいます。なので、本記事では半反応式を覚えやすくする方法を解説していきます。
ちなみに、半反応式に限りませんが記憶に残る方法は別の記事で解説していますので合わせて読んでみてください。
酸化剤、還元剤の両方になれるSO2とH2O2
そつ(SO2)なく参加(酸化)と言おう(硫黄)
SO2→S
そつなく玄関でH阻止
SO2→H2SO4
この2つはこの語呂で区別できます。
H2O2→H2O
H2O2→O2
これらの過酸化水素のOの酸化数は例外的に-1です(基本的に酸素が化合物の時に-2をする)。この酸化数を数直線に表すと以下のようになります。

H2O2→H2Oになるパターンは、酸化数が-1で減少しています。ってことはH2O2は還元されています。ってことは、酸化剤です。
H2O2→O2になるパターンは、酸化数が+1で増加しています。ってことはH2O2は参加されています。ってことは還元剤です。
ちなみに、酸化剤か還元剤かがわからなくなったら実際に半反応式を書いてみるといいです。


このように半反応式を書くと電子が右辺か左辺かで酸化剤か還元剤かで完全に分けることができます。
水が絡んでくる半反応式の覚え方
水が絡んでくる半反応式ってかなり覚えにくくないですか?
2H2O→O2+4e–+4H+
2H2O+2e–→H2+2OH–
4OH–→O2+2H2O+4e–
このような水が関わってくる半反応式。これは酸性条件や塩基性条件で半反応式が変わってきます。
そして、これを丸暗記するのは不可能です。ちゃんと理解しないとわけわからんことになります。この半反応式の作り方は別記事にまとめました。
濃硝酸と希硝酸
濃硝酸と希硝酸はかなりややこしいですよね。濃硝酸はNO2になるし、希硝酸はNOになります。これをうまく覚えられない人が続出しております。
そこで、今回これを覚えやすい語呂がありますので、これで覚えてしまったください。
その語呂は
『ノーはノーじゃない、ノーじゃないのはノー』
です。

濃(ノー)硝酸はNO2になる。つまりNO(ノー)ではありません。
希硝酸は(濃ノー)ではありません。これはNO(ノー)になります。
濃硝酸の場合は、NOにならない、つまりNO2になるし希硝酸は濃じゃないからNOになります。
このように語呂で覚えると、濃硝酸と希硝酸の反応物と生成物の違いを区別することができます。
「【語呂】濃硝酸と希硝酸の半反応式の書き方と覚え方と原理をまとめてみた」
酸化剤と還元剤の違いと半反応式での見極め方
還元剤は電子が右辺
酸化剤は電子が左辺
結論からいうと還元剤は電子が右辺にあります。酸化剤は電子が左辺にあります。
理由は簡単です。酸化還元の定義を思い出してください。受験化学コーチなかむらは、酸化還元の定義を以下の酸化剤還元剤を使った方法で覚えることを推奨しています。
具体例を見ていきましょう。強酸化剤の過マンガン酸イオンの半反応式は以下のようになります。
MnO4–+5e–+8H+→4H2O+Mn2+
電子を受け取るのが酸化剤ですから、左辺に電子があります。
一方で、アルデヒドのような還元剤は電子を投げます。
RCHO+H2O→RCOOH+2H++2e–
元々(左辺)電子を持っている還元剤のアルデヒドが反応して(右辺)に電子を投げるのです。電子を投げるので反応後に電子とアルデヒドは別れると言うことです。だから右辺に電子がありあmす。
このようにして酸化剤と還元剤を区別することができます。
ちなみに、これを考えると電気陰性度が大きいものは酸化剤になりやすいし、電気陰性度が小さいものは還元剤になりやすいです。
金属なんかは大抵還元剤ですよね。
これは、金属が電子のことが好きじゃなく電気陰性度が小さいので電子を投げる習性があるからです。
還元剤は電子が右辺
酸化剤は電子が左辺
酸化剤・還元剤の半反応式から化学反応式を作る方法

では、酸化剤還元剤の半反応式は一通り学びました。次は、半反応式から電子やイオンを消し去り化学反応式を作ります。
化学反応式は
だからその作り方について解説します。
これからステップバイステップでその手順を書いて行きますので、その手順を覚えてください。
半反応式には電子が式中に存在しても大丈夫ですが、化学反応式には電子が存在してはいけません。
ステップ①まず半反応式を並べる
硫酸酸性下での過マンガン酸カリウムKMnO4と硫化水素H2Sの酸化還元反応を考えて行きます!
MnO4-+5e–+8H+→4H2O+Mn2+・・・(1)
H2S→2H++2e–・・・(2)
ステップ②電子の数を酸化剤還元剤で合わせる。
この電子を消し去るために、(1)の電子数5と(2)の電子数2を両方10にして消去法で消します!
ステップ③両辺を足して電子を式から消す。
こんな感じに!
これだけで完成する事もありますが、今回はまだイオンが残っています。
化学反応式はイオンがあるとダメなので
このままではダメです。
ステップ④イオンが残っていれば、イオン同士を合わせる。
ここで、過マンガン酸イオンというのは、『過マンガン酸カリウム』が電離したものなので、両辺にK+を付け加えます。
2KMnO4+5H2S+6H+→2K++2Mn2++5S+8H2O
となります。これで割とスッキリしました。でも、これでは、H+とMn2+がありますよね。ここで思い出してほしいのが、『硫酸酸性条件』です。
両辺+6ずつなので、これを打ち消すために、両辺硫酸イオン(-2)を3つずつ加えて行きます。
2KMnO4+5H2S+3H2SO4→2K2SO4+2MnSO4+5S+8H2O
ハイ完成です! この硫酸イオンが出てくるあたりが、最高難度の化学反応式なので、これが出来れば大丈夫です!
ただし、化学反応式を書けと言われたら書かないといけませんが、いちいち酸化還元滴定の計算問題でわざわざ化学反応式を書く必要はありません。
量計算では化学反応式は必要なのか?


結論から言いますね。酸化還元の問題でわざわざ化学反応式を書いて係数を考えてmolを計算する必要がありません。
理論化学や化学基礎で計算問題って出ますよね。例えば、酸化還元滴定でヨウ素のmolが聞かれたり、質量が聞かれたりします。
こういう時に、一体どうすればいいのでしょうか?
もしあなたが酸化還元滴定の問題などで、いちいち化学反応式を作っているならそれはヤメた方がいいです。
時間の無駄だからです。
時間の浪費です。
貴重な試験時間が化学反応式を作っている間に奪われて、最後の最後で
「あと1分あればとけたのに、、」
って言う問題を落とすから、言われない限り、絶対に反応式を作っちゃダメだから!
「じゃあどういう計算式になるんですか?」という質問が出るはず。
そういうときは、やっぱ、酸化還元の最重要定義になるわけなんですね。

これ。
だから、還元剤から酸化剤に電子を投げるって言う反応です。そして還元剤が投げた電子のmolと酸化剤が受け取る電子のmolと全く同じですよね。

つまり、
「還元剤が投げた電子」=「酸化剤が捕った電子」
そうじゃないとおかしい。だから、これをそのまま式にしてやればいいのです。作る計算式はこれです。
これを実際に使って解く有名な問題として、「酸化還元滴定」があります。
この記事は絶対に読んでおいてください。この記事では、酸化還元滴定の問題がたった2パターンしか無いと言う事を解説しています。
簡単なので確実にマスターしておいてください。
最後に:酸化剤還元剤の半反応式は全単元で重要
酸化還元の分野は受験化学において最重要単元です。有機化学でも無機化学でも非常に重要ですし、無機化学でも多くの人が酸化還元を理解してないがゆえに化学反応式を覚えてしまっています。
なので今回の記事の内容をしっかり頭に入れておきましょう。
濃硝酸 濃硫酸の濃って水が少ないって意味だったんですね!
だから電離しない
違いわからなくて混乱してました
ありがとうございました!
そうですね
希=薄いという意味なので、
水が多いと言うことになります。
それは言っていません。H+を投げるです。
水に電子をなげることは出来ません。
ああ〜、、そうなんですね。。すみません変な質問で。ありがとうございました。
問題演習をしていてわからないところがあるので、教えていただきたいです。
「単体の臭素は、熱濃硫酸中で臭化カリウムを酸化マンガンで酸化すると得られる」という反応で、
還元剤:2Br- → Br2 + 2e-
酸化剤;MnO2 +4H+ + 2e- → Mn2+ + 2H2O
SO4 2- + 4H+ + 2e- → SO2 + 2H2O
として、還元剤の式を2倍して、3式を足すと、
4Br- + MnO2 + H2SO4 + 6H+ → 2Br2 +Mn2+ + SO2 + 4H2O
となったのですが、この後どのようにすれば、反応式を完成させられるのか分かりません。 方法を教えていただけないでしょうか?
H+の足りないところは、SO42-でうめてBr–はK+を埋めれば出来ると思います。
鉛蓄電池の半反応式を作る時に 正極の放電で
反応物をPbO2 生成物をPb2+とするべきか
反応物をPb4+ 生成物をPb2+とするべきか
迷ってしまいます。半反応式というのはどこまでをイオンで表記し、どこまでを実際の物質として表すのでしょうか?
それは、イオン反応式の書き方を学べば大丈夫です。
『イオン反応式の書き方』
二酸化硫黄の還元は
SO2→SO4^2-ではないんですか?
いっしょやろ。水素イオンを合わせれば
その通り
酸化するときの反応って必ず水ができますか?
別にそんなことはないですよ。
それは中和ですね。
すみません、
イオンの時はh2と表記しないで、h+
になるんですか?
反応式書いていたらわからなくなってしまいました…
H2はイオンではないので、
ありがとうございます。
ありがとうございます。
ありがとうございます!
MnO4–過マンガン酸イオン(中性、塩基 性)での半反応式
MnO4–+2H2O+3e– →MnO2+4OH–
についてですが、
僕が作ると、MnO4-+4H++3e- →MnO2+2H2O になります。
なぜ、OH-が出てきたり、2H2Oが左辺にいたりするのでしょうか?
また、
OH-を使った半反応式を作る手順を教えていただけないでしょうか?
H+は酸性でしか出てきません。塩基性の時に水溶液中にH+があること自体おかしいです。
4H+を消すように4OH–を追加してください。
完成します。
教えていただき、ありがとうございました。
おかげで納得いたしました。
ちなみにですが、2OH-ではなく、4OH-ではないですか?
いつもこのサイトにお世話になってます
シュウ酸ってH2C2O4ではないのですか??
H+を投げたイオンの状態です