
って日本中の高校生が全員思っているでしょう。
「理想気体は分子の大きさと分子間力を無視できる」
こう呪文のように覚えてしまっている人もいます。ですが、呪文のように覚えて対応できるのはせいぜい偏差値55くらいまででしょう。
気体の応用問題では一切対応できなくなってしまいますので、理想気体と実在気体がどのような理由で、「違い」が生じているのかまで理解できるようにしていきます。
また、理想気体の状態方程式だけでなく、実在気体の状態方程式であるファンデルワールスの状態方程式も学んでいきます。
ということで、この記事は日本一詳しく理想気体と実在気体の違いを解説し、これを読むことで、違いが言えるだけでなくイラストをつけて他人に説明できるようになることを目標とします。
※初めてファンデルワールスの状態方程式を見るひとは手こずるかもしれませんが、それでも3〜5分ほどで読み切る事ができます。
目次
理想気体と実在気体の2つの違いとは?
- 分子の大きさを無視できるかどうか
- 分子間力があるかどうか
結論から言うと、この2つずるい仮定で理想気体は成り立っています。ご存知、気体だって分子なので形や大きさがあります。分子同士には分子間力が働きます。
それを無視したのが理想気体です。
理想気体 | 実在気体 | |
分子の大きさ | 無視できる | 無視できない |
分子間力 | 無視できる | 無視できない |
まだ、ここまで聞いて「この2つが無視できるからなんだよ!」って思っているでしょう。
高校化学は大抵理想気体を扱います。
では、理想気体ではない実在気体の場合(分子に形があり、分子間力が働く場合)は、どのように変わるのか具体的にイラスト付きで解説していきます。
理想気体のチート1:分子の大きさを無視する
分子の大きさを無視するのです。そもそも気体の体積というのは、気体が動き回れる空間の体積のことです。(意外とこれが理解できてない人が多い)PV=nRTのVは容器の大きさです。
分子の大きさがあるとどうなるでしょうか? 分子の大きさがあると、気体が動き回れる空間が小さくなります。

右の実在気体を下に集合させてみますね。すると、

このように、容器の体積をVとすると、気体分子の大きさの合計の体積bのぶん、気体が動き回れる体積が小さくなるんですよ。よって
理想気体の体積(分子の大きさが0だと考えた時)=実在気体の体積ー分子の大きさ
するとPV=nRTが厳密には、成り立たなくなってしまいます。だから、理想気体では、チートを発動して理想気体では、なんと気体分子の大きさbを無視するんです。
理想気体のチート2:分子間力を無視する
分子間力は、水素結合とファンデルワールス力のことです。両方に共通することは、+とーの引力であるということです。実在気体にはこの分子間力が存在して、理想気体には存在しません。
この分子間の引力が存在すると不都合が起きるわけですね。
まず、気体の圧力は気体分子が分子運動をして、ガツガツぶつかって、壁を押し上げることですよね。

このような分子が「圧(お)す力」で圧力です。この分子同士で分子間力が働いてしまったらどうなると思いますか? 1つの分子に着目してみるとよくわかります。

このように他の気体分子によって、分子運動を引きとめられて弱められてしまうのです。これによって、圧力が弱まり理想気体が成り立たなくなるんです。
- 分子の大きさを無視できるかどうか
- 分子間力があるかどうか
ここまでイラスト付きで解説してきました。いかがでしょう? 理想気体と実在気体の違いはわかってもらえたと思います。
では、ここからもう一歩踏み込みましょう。入試問題は次の「状態方程式」まで問われます。
理想気体の状態方程式PV=nRTは、実在気体ならばどのような式になるのか? これ気になりませんか?
分子の大きさ、分子間力がどのように影響を及ぼしてしまうのかを解説します。
実在気体は理想気体とどのようの状態方程式に違いが出てくるのか?
というわけで、PV=nRTをこれまで当たり前のように使っていましたが、基本的にPV=nRTを使えることの方が世の中多くありません。なので、実在気体はどのような状態方程式なのか、確認していきましょう。
実在気体の状態方程式(ファンデルワールスの状態方程式)
⑴分子自身の体積を考慮する
先ほど話しましたように、実在気体は理想気体と違って、分子の大きさを無視できません。今回は気体分子1molあたりの体積をbとします。すると、nmolの体積はnbです。

これにより、
V理想気体=V実在気体-nb
となります。
⑵分子間力を考慮する
実在気体は、理想気体と違って分子間力があります。分子間力があるおかげで、圧力が弱められるのでしたね。
分子間力は、引きとめられる分子から見たら、周りにいる分子の数に比例します。

つまり、気体の分子数密度(n/V)に比例します。また、壁に衝突する数も分子数密度(n/V)に比例します。比例定数をaと置くことで、
P理想気体=P実在気体+(n2/V2)a
このように、理想気体の圧力を実在気体の圧力で表します。
こんな感じで、オランダのファンデルワールスっていうおじさんが、理想気体の状態方程式を実在気体に合うようにa,bを使って表しました。
{P実在気体+(n2/V2)a}{V実在気体-nb }=nRT
これがファンデルワールスの状態方程式です。
理想気体と実在気体の違いでよく試験に出るポイント
それでは、理想気体と実在気体の違いをよく理解してもらったと思います。その上で、試験に何が出るのかをバッチリ落とし込んでいきましょう。
試験によく出る理想気体と実在気体の違いを表すグラフ圧縮比
気体が1molあった場合、理想気体ならPV/RT=1となりますよね。
この気体1molの時のPV/RTをZと表して、圧縮率と言います。実在気体の場合PV/RT≠Zです。なので、Zが1から離れれば離れるほど、理想気体から遠いということになります。そして、このグラフが非常によく出題されます。

逆にZ=1に近づく時、実在気体は理想気体に近づくということです。そして、このグラフの解釈が記述問題でよく出題されます。暗記している人も多いですが、これはしっかり理解した方が早いです。

まず、先ほどの画像で
V実在気体=V理想気体+b
と表せます。なので、実在気体の体積を圧縮率に代入すると
Z=P(V理+b)/RT=PV/RT+(b/RT)P=1+(b/RT)P
となります。この式を使って以下のよく記述で出題される項目を解説していきます。
このように、(b/RT)PがZ=1から上下にずらす要因です。
実在気体を理想気体に近づける方法(イラストで頭に刻め!)
「高温」「低圧」にすると実在気体は理想気体に近づきます。
これも記述問題で激しく出題されます。
これをただただ丸暗記しようとするとめちゃくちゃ大変です。本質を理解すると簡単に覚えられますので、しっかりイラスト付きで覚えてしまってください。
実在気体を理想気体に近づけるなら、分子運動を激しくさせる必要があります。
分子運動が激しくなると、分子間力を振り切るくらい早いスピードで動けるようになるのです。

分子間力の影響を受けないくらいのスピードで動いてしまえばいいのです。
そのためには、
- 高温にする
- 低圧にする
です。
高温にする
高温にすると、熱運動が大きくなり、運動エネルギーが大きくなります。
すると、分子の速度が大きくなります。すると分子間力を振り切るだけの分子の運動速度が上がるのです。

すると、速度が上がるので分子間力を振り切る事ができるのです。
低圧にする
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もし、高圧だった場合、気体分子が接近してしまいます。
すると分子の大きさを無視できなくなります。さらに分子間力も距離に反比例するので、距離が短くなればどんどん分子間力が大きくなります。
すると、理想気体から離れてしまいます。だから、「低圧にする」のです。
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低圧にすると、分子距離が大きくなり分子の大きさが無視できるのと、分子間力が小さくなります。
なので、ほとんどの人が丸暗記しているこの結論に至ります。
- 高温にする
- 低圧にする
でも、この記事のイラストを見ながら、イメージをつけて、気体が別の気体からの分子間力を振り切って動き回っている様子を考えた方が圧倒的に覚えやすいですよね?
イメージごと覚えてくださいね。
まとめ
- 理想気体と実在気体の違いは「分子間力」「分子の大きさ」が無視できるかどうか
- 実在気体の状態方程式、ファンデルワールスの状態方程式もたまに出題される。
- 実在気体を理想気体に近づけるには、「高温」「低圧」