こんにちは。
化学用語には似ていて区別がつきにくい言葉が多いですよね。
「ゾル」と「ゲル」もその一つ。「聞いたことはあるけど… どっちがどっちだっけ?」という人も多いと思います。
ゾルは流動性のあるコロイド溶液のことで、ゲルは流動性のないコロイド溶液のことなのですが、これだけ聞いてもまだ混乱しそうですよね…。
この記事を読んで、その違いをはっきりさせましょう!
目次
コロイドとは?
ゾルとゲルの違いについて理解するために、まず「コロイド」とは何かを確認しましょう。
砂糖を水に混ぜると透明になって、ただの水と見分けがつかなくなりますよね?これは砂糖の粒子が小さくて、水の中に均一に拡散できるからなんです。こういう状態を化学では「溶液」といいます。
逆に粒の大きいもの、たとえば土を水に混ぜるとどうなるでしょう?初めは全体が土の色に変わりますが、徐々に水と土が分離して、底の方に泥が沈澱してしまいますよね。これは「溶液ではない」状態です。
ではその間くらいの粒の大きさのもの、たとえば牛乳(乳脂肪の粒の大きさは砂糖と土の間)を水と混ぜるとどうなるでしょう?
全体が白く濁るけど、時間が経っても沈澱はしませんよね? 化学の世界ではこの状態を「コロイド溶液」と呼びます。コロイド粒子と呼ばれるそこそこ大きい粒子(1.0×10-9~5.0×10-7m)は水分子の中に均一に拡散しているのですが、粒子が大きいので透明にはなりません。
これとは区別して、砂糖溶液のように完全に透明になる溶液は「真の溶液」と言います。
ゾルとは?
ゾルは、流動性のあるコロイド溶液のことです。
牛乳や生卵、墨汁などがこれにあたります。
ゾルのコロイド粒子は水の中を自由に動き回れるので、ゾルは流れることができます。
ゲルとは?
ゲルは、流動性のないコロイド溶液のことです。
ヨーグルトやゆで卵、ゼリーがこれにあたります。
半固体ですが、多くの水分を含んでいます。
ゲルのコロイド粒子はお互いに絡み合って網目状の構造を作っています。この網目構造の中に水がトラップされるので、ゲルは流れることが出来ません。
覚え方! その1:語源法
ゾルとゲルはその語源に着目すると間違えずに覚えることができます。
ゾル(Sol)は英語の「Solution(ソリューション=溶液)」の略が由来です。溶液は流れるからソリューション→ゾルなんですね。
ゲル(Gel)は英語の「Gelatin(ゼラチン)」の略が由来です。豚足のゼラチン質のようにプルプルしているけど流れない状態をイメージしてみましょう!
ゾル(Sol)= Solution(溶液)= 流れる
ゲル(Gel)= Gelatin(ゼラチン)= 流れない
覚え方! その2:イメージ法
「英語で言われてもあまり頭に入ってこない」という人は、ゾルの「ゾ」、ゲルの「ゲ」の文字の形からイメージを膨らませて覚えてみましょう。
「゛(濁点)」目線で考えてみて下さい。どっちが流れやすそうですか? どう考えても「ゾ」ですよね!
「ソ」の「ノ」の部分が滑り台のようになって、スーッと流れちゃいそうです!
反対に「ゲ」の形を濁点目線で考えると、横棒が安定性を醸し出していて流れなそうです。
ゾル → 「゛」が流れそう → 流動性あり
ゲル → 「゛」が流れなそう → 流動性なし
【関連用語】エアロゾル・キセロゲル・シリカゲルって?
ゾル・ゲルと関連した用語についても確認していきましょう!
コロイド粒子は液体だけではなく気体中に分散することもあります。この状態を「エアロゾル」と言います。雲や霧などもコロイド粒子サイズの水滴が空気中に分散したエアロゾルです。エアロはギリシャ語で「空気」という意味です。
ゲルが水分を失ってカピカピになったものを「キセロゲル」と言います。豆乳は「ゾル」、ニガリを入れて固めた豆腐は「ゲル」、豆腐を乾燥させた高野豆腐は「キセロゲル」です。スーパーで売っている乾燥させた寒天やゼラチンもキセロゲルですね。
では「キセロ」とはどういう意味なのでしょうか? キセロ(Xero-)はギリシャ語で「乾燥した」という意味です。コピー機の有名メーカーに「Xerox(ゼロックス)」がありますが、これも同じ語源です。液体のインクではなく、「乾いた」パウダー状のトナーを使うコピー機を発明したことから、この名前を付けたそうです。
つまりキセロゲルとは「乾いたゲル」です。ゲルを乾燥させるとコロイド粒子の作った網目状の構造だけが残り、水があった部分は空気に置き換わり空洞になります。すると隙間の非常に多いスカスカの状態になります。
毎日の生活の中でよく見かけるキセロゲルは「シリカゲル」です。よくお菓子の袋の中に乾燥剤として入っているアレです。 これは「ケイ酸」という物質のゲルを乾燥させ、キセロゲルにしたものです。キセロゲルはスカスカの構造で表面積が大きいので、多くの水を吸着させることができるんですね。
ゲル化・ゾル化って?
流れるゾルを流れないゲルにすることを「ゲル化」と言います。ゲル化は温度変化などによってコロイド粒子の構造が変化し、網目構造が発達することによって起こります。
反対に、流れないゲルを流れるゾルにすることを「ゾル化」と言います。ゲルの網目構造がほどけてトラップされていた水が放出され、コロイド粒子が水の中を自由に動き回れるようになる現象です。
たとえばゾルである生卵を茹でて、ゲルであるゆで卵にするのは「ゲル化」です。
卵の場合は一度ゆでたものを元の生卵に戻すこと(ゾル化)は出来ないのですが、寒天やゼラチンなどは何度でもゲル化⇄ゾル化をさせることが出来ます。
この現象は生活の様々な場面で活用されています。例えば歯科では温めてゾル化させた寒天を歯に当てた状態で冷ましてゲル化させ、歯型(正式には「印象」と言うそうです)を取る手法として使われています。
まとめ
この記事では「ゾル」と「ゲル」の違いについて確認しました。
流動性のあるコロイド溶液が「ゾル」(語源:Solution=ソリューション)
流動性のないコロイド溶液が「ゲル」(語源:Gelatin=ゼラチン)
です!
語源から覚えるのは画期的です!迷ってたので,本当にありがたいです。
お役に立てて良かったです!
わかりやすいです!ありがとうございます!
良かったです!!
凄く面白い。楽しく知識として定着します。
もっともっと…と知りたくなりました。
ありがとうございます!
そう言ってもらえると、やりがいがあります!