こんにちは。
本記事では大学受験で使う溶解度積に関するテクニックや本質を理解する方法を解説していきます。
- なんだか溶解度積ってどう使ったらいいのかわからない・・・
- 溶解度積を使った沈殿生成の問題の解き方がよくわからない・・・
- 理解できていないから溶解度積より大きい方が
本記事では溶解度積に関するこのような悩みを解消していきます。
化学平衡の中でもかなり終盤に勉強する溶解度積ですが、僕は受験生の時結構適当に流しで勉強してました。非常に重要な単元なのでしっかりマスターしていきましょう。
目次
溶解度積とは? 公式まで導出してみた。
難容性塩の溶解平衡の両関係溶解平衡時の溶解度の積のこと
端的に言うと↑になります。どういうことか解説していきますね。
一番よく使われる例としてAgCl(塩化銀)が使われます。
溶解度を超えるとこのように沈殿が生じます。
Ag+とCl-の溶液を混合していきます。すると、ある時から沈殿ができて上の図のような溶解平衡状態になります。
Ag++Cl–⇄AgCl
と反応式を表すことができます。平衡状態といえば、次の2つを思い出してください。
- 両辺存在(左辺にも右辺にも残る)
- Kは定数
Kを式に表します。
ここでさらに化学で非常によくやる手法があります。それが、定数をまとめるということです。
化学平衡の式の中で定数は、平衡定数Kと分母の[AgCl]は固体のモル濃度になります。すると、
これによって表される新しい定数を溶解度積Kspと言います。
Kspのspは(Solubility Product)の頭文字を取っています。
ということです。
で、ここまで聞いた人は少なからず思ったはずです。
そう、これが何に使えんだよ! って話ですよね。それについては今から解説していきます。
溶解度積の計算問題での使い方
このような疑問にお答えしていきます。溶解度積が使われるパターンは大きく分けて2つです。
- 溶解度積で沈殿生成の有無を判定する
- 溶解平衡での溶けたイオンの量計算
パターン1:溶解度積で沈殿生成の有無を判定する
- 仮想溶解度積Ksp0 > 溶解度積Ksp→沈殿生じる
- 仮想溶解度積Ksp0 = 溶解度積Ksp→飽和(沈殿生じない)
- 仮想溶解度積Ksp0 < 溶解度積Ksp→沈殿生じない
結論からいうと上のようになります。
入試問題の中には、この2つの溶液を混ぜてみたら沈殿するでしょうか? しないでしょうか? みたいな問題が出ます。
例えば、2つ以上の沈殿ができる可能性がある時に、沈殿の色が両方白色だった時、溶解度積を使って沈殿がどちらなのかを調べるのです。
なぜなら、溶解度積というのは化学平衡状態に使える概念ですよね。化学平衡の最初の状態はギリギリ沈殿していない
つまり、溶解度積の状態はギリギリ沈殿が生じていない限界値と捉えることができます。
ステップ1:仮想溶解度積を求めてしまう
Ksp=[Ag+][Cl-]は平衡定数の変形版でした。てことは、平衡状態じゃない時には使えません。
ですが、仮に平衡状態と仮定します。(平衡状態は沈殿がある状態か飽和溶液状態)
溶液を混ぜるということは溶液の体積が変わります。よってモル濃度が変更されます。この時希釈も同時に考えなければなりません。
ステップ2:仮溶解度積と本当の溶解度積で大小関係を比較する
平衡状態と仮定して、仮想溶解度積を求めたものと本当の溶解度積と比べます。(本当の溶解度積は大抵問題で与えられています。)
イオンが飽和溶液より溶けすぎている時は、当然のことながら沈殿します。
例えば、銀イオン溶液と塩化物イオン溶液がこれだけあったとします。
これを混ぜた時にAg+とCl-合わせて2個しかイオンが溶けられないとすると、他は全て沈殿します。
このように、溶解度積よりも溶けているイオンが多すぎると沈殿として落とされるのです。つまり、最初の表の判定になります。
- 仮想溶解度積Ksp0 > 溶解度積Ksp→沈殿生じる
- 仮想溶解度積Ksp0 = 溶解度積Ksp→飽和(沈殿生じない)
- 仮想溶解度積Ksp0 < 溶解度積Ksp→沈殿生じない
パターン2:溶解平衡の時の溶けたイオンの量計算
難容性塩の問題で量計算の問題がでるときは基本的に「溶けているもの」です。なぜなら、基本的に難容性だから沈殿が大半です。
沈殿の量が必要になることはないと考えてOKです。例えば以下のような例題があるとします。
純水に対する塩化鉛(II)PbCl2の溶解度積は15℃でKsp=1.1×10-7とする
(問)PbCl2は、15℃の1.0×10-1mol/Lの塩酸1L中には、何mol溶解するか。
ステップ1:溶ける量をx[mol/L]とする
HCl 1Lに何mol溶けるか? という問いなのでシンプルに溶解度(mol/L)を問われているのと同じです。
まず、HClは強酸で100%電離すると考えて良いので、塩酸由来のCl–は1.0×10-1mol/Lです。
なので、PbCl2の溶解度をx [mol/L]とします。
Pb2+の溶解度はx[mol/L]
Cl–の溶解度は2x[mol/L]
となります。
ステップ2:溶解度積の関係式に代入する
このように登場人物が出揃ったら溶解度積の式に代入して計算します。
PbCl2の溶解度積は
Ksp=[Pb2+][Cl–]2=x × (2x+1.0×10-1)2=1.1×10-7
という関係式を作ることができます。
x=1.1×10-5[mol]
です。
このように、溶解度積で関係式を作って変数xを求める
溶解度積まとめ
- 溶解度積というのは
- 溶解度積は沈殿生成の有無を判定するために使える
溶解度積って問題集でもしっかり扱っていないものが多いです。ですが、非常に重要なジャンルですのできっちりマスターしておいてください。
それでは!
質問なのですが、溶解度積は物質が溶けることのできる限界値で、それを越えた場合、沈殿が生じ、液体は飽和状態にある、とどこを調べてもあるのですが、もともとの違う物質が物凄く片寄った量入っていて、沈殿を起こしたが、溶液中には片方は沢山あるのに対し、片方は沈殿後ほとんど残っていなかった場合、飽和状態と言えるのか?と疑問です。なかむらコーチしか質問できる人がいなくて是非教えていただきたいです。
確かにそう思うのもわかりますが、
この溶解度積を使うものっていつも
「難溶性塩」って書いてありませんか・?
つまり元々沈殿する物質の時がほとんどなんですよ。
Ksp₀=Kspのときはマックスとけてる状態で飽和状態みたいな感じってことですか??
そういう感じですね!
わかりやすい
Ksp の s は solidの s だということですが、p は何の p なんでしょうか。
(化学が趣味のものです)。
solubility Product(積)です。
抜けてました、ご指摘ありがとうございます。
途中から画像の陰イオンX^m -が+にかわってまっせ。
ありがとうございます!
わかりやすい説明ありがとうございます。一点疑問に思ったことがあるので質問させていただきます。
KspはMaXb(s)が固体という条件で導出しているのに、Ksp=Ksp0の時に沈殿が生じないのはなぜなのでしょうか?
教えて頂けると幸いです。
大変学ばせて頂きました!
最初の溶解度の定義式で平衡定数と固体の塩化銀の濃度から溶解度を導く式では分母が不要ではないでしょうか?
また、質問させて頂きたいのですが、
Ksp=[Pb2+][Cl–]2=x × (2x+1.0×10-1)2=1.1×10-7
この方程式の解き方がいくら考えてもわからないので教えていただけますと幸いです。
>最初の溶解度の定義式で平衡定数と固体の塩化銀の濃度から溶解度を導く式では分母が不要ではないでしょうか?
なぜでしょう?