「水に溶ける」ってどういうことなのか?
しっかり理解できている人は少ないです。
だから、「水に溶けること」と「電離」と「電解質」のような話をごちゃごちゃになって区別できていない人が多いです。
本記事ではこのような疑問を解決していきます。
- 分子レベルで語る「水に溶ける」とは?
- 「水に溶ける」と「電離する」は別の現象なのか?
- イオン結晶がなぜ有機溶媒に溶けないのか?
- イオン結晶なのに水に溶けないAgClやAgBrはなんなのか?
実際、僕も高校生の時はこの辺りを混同していたし、なんなら混同したまんま受験に臨んでしまっていました。
目次
水に溶けるとは?ミクロレベルで化学的に理解してみた
早速結果から言いますが、「水に溶ける」というのは、結晶を水が周りを取り囲んで熱運動で結晶から引き剥がし、溶液の中でバラバラにしている状態のことです
ちょっと、言い方が難しかったですか。もっとわかりやすく例え話を出しますね。
友達と歩いていたら、
ヤンキー(赤色)に絡まれて
引き離されて友達とバラバラにされている状態のことを言います。
このように、友達と引き離されてバラバラにされます。
これが水に溶けるって状態です。
まず、イオン結晶のように+ー+ーと並んでいる外側に接近していきます。接近して水分子は持ち前の極性をいかして電気的に接触していきます。
これが水分子でしたね。このようにOがδ-に偏り、Hがδ+に偏っているわけですよ。水分子自体分子内で+とーに電気的に偏っています。
ってことは、陽イオンに近づくことも、陰イオンに近づくこともできます。
このように、水分子がイオンを取り囲んで、引き離していきます。
水分子がくっついた陽イオンや陰イオンは、熱運動で溶液中に広がっていき徐々にイオン結晶が水分子に引き離されてどんどん水に溶けていくのです。
Na+とCl–がH2Oと電気的に引力でくっつくのもありますが、水中ではNaとClの間のクーロン力が弱まっています。と言うのも、クーロン力は水中だと空気中の1/80倍ほどになってしまいます。
なので、その原因もありまして陽イオンと陰イオンは結合が弱くなっています。
ここまで聞いて、イオン結晶がどのように水に溶けるのかはわかったと思います。
ですが、これって別にイオン結晶である必要はないんです。つまり、水分子のような極性があるならばイオンでなくても分子でも十分水に溶けることができるのです。
例えば、アルコールを例に出します。エタノールC2H5OHを例に出します。エタノールはOHの部分が極性を持っています。
すると、OHの部分は水が接近して引力が発生します。今回の引力は「水素結合」です。
このように水分子が水素結合で周りを取り囲み、溶液全体にバラバラにしていきます。
ここまでで、イオン結晶と極性分子がどのようにして水に溶けるのか? ということを解説してきました。
ここまでオッケーですか?
では、ここからは、少し抽象度が上がり「溶解する」とはどういうことかを解説します。というのも、溶媒は水だけじゃあありません。
有機溶媒と呼ばれるものだってありますから。溶解するってことはどういうことなのかを解説します。
溶解することの本質
- 粒子の周りを溶媒が囲む
- 熱運動で溶液中をバラバラに引き剥がされる
- 溶液中で粒子がバラバラに拡散している状態
これが、溶けるってことの本質です。まあ、先ほどと全く同じなんですが。
水は先ほど言いましたように「極性分子」です。なので、極性分子は極性分子に近づきやすいんです。
なので、水に溶けるのは、同じように極性があるイオン結晶だったり、極性分子のアルコールやハロゲン化水素だったりです。アルコールやカルボン酸も極性があります。これは、先ほど説明しました。
一方無極性分子は無極性分子同士で溶けやすいんですよ。今回の記事では水に溶けるを題材にしているので、極性分子の話しかしません。
無極性分子同士の溶解についてまとめた記事をこちらに書きました。
明日書きます。
表にまとめると、
極性あり(溶質) | 無極性(溶質) | |
極性溶媒 | 溶ける | 溶けない |
無極性溶媒 | 溶けない | 溶ける |
このように結果的に、極性がある溶質は極性のある溶媒に、無極性溶質は無極性溶媒へ。つまり、似た者同士よく溶けるのです。この結果は必ず覚えておいてください。
この性質は有機化学の抽出の問題でよく使われます。
ここまで大丈夫でしょうか? では次に、水に溶けることと、「電離」や「電解質」と「水に溶ける」ことがどのように違うのかを話していきます。
「水に溶けること」と「電解質」と「電離」の言葉の違いは?
「電解質」→「水に溶ける」これは真。
「水に溶ける」→「電解質」これは偽。
反例:グルコース
— 受験化学コーチなかむら (@kagakucenter) 2018年10月20日
「電解質」→「水に溶ける」これは真。
「水に溶ける」→「電解質」これは偽。
反例:グルコース
水に溶けるってことは、すでに説明済みです。あとは、電離と電解質です。
電離っていうのは電気的に離れると書いて電離です。
なので、塩化ナトリウムがNa+とCl-に離れることも電離です。陽イオンと陰イオンのように電気的に偏りを持ちながら離れていますからね。
とんちみたいですが、電解質っていうのは「水に溶けたときに+とーに電離する物質のこと」を言います。
なので電解質ならば水に溶けます。だって、水に溶けて電離するものを電解質というのですから、そりゃあ水に溶けますよ。
- 水に溶ける=粒子(イオンなり分子なり)内で極性がある。
- 電離=陽イオンと陰イオンに分かれること
- 電解質=水に溶けたときに電離するもの。
- 電解質は水に溶ける
- 水に溶けても電解質とは限らない。
イオン結晶なのに水に溶けないやつは?
と、ここまで思ってくれたと思います。
しかし、例外も存在します。例えば、塩化銀などです。
AgとClで金属と非金属の結合なのでイオン結合です。しかし、それでもAgClは水に溶けず沈殿するんですよ。
この理由が気になりますよね。
結論から言うと、塩化銀が沈殿するのは、銀の電気陰性度が大きいためです。
NaClとAgClを比較して見ましょう。NaClは、Na(0.9)Cl(3.0)で電気陰性度の差が2.1あります。一方AgClは、Ag(1.9)Cl(3.0)で電気陰性度の差が1.1しかありません。
これだけが原因ではありませんが、極性が小さいのでNaClよりもAgClの方が水に溶けにくいのは間違いありません。
つまり、まとめるとイオン結晶だから水に溶けるわけではないし、分子だから水に溶けないわけではなく、極性が大きいと水に溶けるってことなのです。
このように考えると、なぜハロゲン化銀で「フッ化銀」だけが水に溶けるかわかりますよね? 塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀が全て沈殿するのに、なぜフッ化銀が水に溶けるか?
これは、1回自分で考えてみてください。フッ素の電気陰性度なども踏まえて考えてみるとすぐにわかるはずです。答えはこの記事に書いてありますので、一旦自分で考えた上で読んでみてください。
まとめ
- 水は極性溶媒なので、極性のある分子やイオンが水に溶ける。
- 無極性分子は無極性溶媒に溶ける。
- 似た者同士はよく溶ける
いかがでしたか?
「電離」「電解質」のような区別が曖昧だったものもしっかり区別できたのではないでしょうか?
しっかり整理してなんども読んで覚えてくださいね!
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