強酸性と強酸化力はどう違う?酸化力を持つ酸の原因究明!

どうも受験化学コーチなかむらです。

今日は質問をしていただいたので、それに関して答える記事を書いていこうと思います。

今日の内容は本当によく訳が分からなくなります。

受験生がよくごちゃごちゃにしちゃってる内容で、

きっちりどう違うか?
なぜ違うか?

を説明出来ない人が多いのです。

そういう人は以下のようなところで詰まっている傾向があります。

①「強酸性物質が強酸化力を持っていたりする。

②「イオン化傾向の表に並べて書かれている

③「塩素と次亜塩素酸の反応で混乱する

 

①の理由に関しては、
熱濃硫酸が強酸でありながら
強酸化力を持つなどの理由で
頭の中が混乱するのだと思います。

 

 

②は金属のイオン化傾向のよくある表
イオン化傾向

この表の酸との反応のところで
酸化力のある酸には溶けると書いてあり、
強酸とはどう違うのか?

 

ということが疑問に思うと思います。

 

③は、質問してくださった方から
画像をお借りします。

迷ってしまう

なので、今日はこの
“強酸性”と”強酸化力”
についての違いを解説していきます。

目次

定義の違い

この2つには定義があります。

酸・塩基

酸・塩基の定義には2つの定義があります。
今回は酸化還元とあわせるために、
ブレンステッドの定義を
考えます。

こちらの動画は、
酸塩基の定義を講義しています。

ブレンステッドの定義によると、
ブレンステッドの定義

酸は塩基に対して水素イオンを投げる
と決められています。

酸化還元

酸化還元の定義はよく表で表されます。
酸化還元定義

この表が全てで、
中学校までは酸素と化合で習ってきましたが、
高校になると、
水素と電子で定義されます。

そして、この動画でも解説している
ように、最も重要な定義が
還元剤が酸化剤に電子を投げる

です。

強酸性と強酸化力がかぶる?

定義を見たら全然違うように見えます。

 

ですが、この2つを混乱させるのは、ある物質のせいです。

強酸性をもちつつ、強酸化剤として働くものがあるからです。

その罪深き物質が、『熱濃硫酸
濃硫酸

硝酸
硝酸

です。

熱濃硫酸

濃硫酸は、弱酸ですが、実際H+を投げる力はスゴいです。濃硫酸を加熱したもので、濃硫酸は本当はH+を投げる力は強いが、投げる相手がいないのですが、水が少ないから弱酸という扱いです。

だから熱濃硫酸は『強酸』の力を持っています。

ですが、普通の濃硫酸にはない、加熱したときだけ持つ、『強酸化力』これの真相は何なのでしょうか?濃硫酸が持つ酸化力では無いのか?

厳密に言うと、
濃硫酸に酸化力があるわけではないです。

じつは、熱する事で、
濃硫酸からある物が出現し、
それが酸化力を持つのです。

それは、
三酸化硫黄:SO3
です。

濃硫酸は加熱されると、
分解されて、
酸化力が強い三酸化硫黄が出来ます。

これが、金属を溶かしたりするのです。

こちらについては詳しくは以下の記事で解説しております。

硝酸

硝酸は強酸であり、さらに酸化力があります。

硝酸の場合は、希硝酸も濃硝酸も酸化力を持ちます。

じゃあなぜ塩酸は酸化力がないの?

じゃあなぜ同じようによく使われる、
強酸である塩酸!

この塩酸がなぜ『酸化力』を持たないのでしょうか?

これは、
核となる原子の周りを取り巻く
状況がそうさせているのです。

熱濃硫酸の三酸化硫黄、
そして
硝酸、

にはなくて、

塩酸にはある物があります。

塩酸はリア充なのです。

それは、

電子』です。

酸化力がある物質とは、
酸化剤』の事です。

ここでいったん酸化還元の定義を
振り返ると、

「還元剤が酸化剤に電子を投げる」
と覚えるのでした!

つまり酸化剤は電子を受け取る

電子を受け取る側は、
『メチャクチャ電子が欲しい状態』なら、
相手から何が何でも電子を
貰ってきます。

電子に飢えている状態なら、
相手を無理やり酸化させて
電子を奪ってきます。

そう、つまり
電子が足りない状態ならば、
酸化力が強くなるのです。

スクリーンショット 2015-11-17 3.41.52 硝酸

この2つの構造式を見てください。

上が硫酸で、下が硝酸です。

上の硫酸は、硫黄の周りが
硫黄より遥かに電気陰性度が大きい
酸素だらけです。

つまり、共有電子対を酸素に持っていかれて、
電子が不足しています。

だから、
電子が欲しい
↘︎
相手から奪う

つまり『酸化力を持つ

ということなんですね!

ですが、
下のHClの構造をご覧ください。

塩化水素

塩酸は、塩化水素が水に溶けているもので、
塩酸の場合は、Hとしか結合していません。

電気陰性度は、HよりClの方が
大きいです。

なので、電子を吸い取られる事も
ありません。

水素と結合していない非共有電子対
は全てClの物です。

だから、相手から電子を奪う必要が
ないので、

酸化力を持たない

ということなんですね!

てことは、

塩化水素は酸化力を持たないのに、次亜塩素酸は酸化力を持つ。

この理由も余裕で分かると思います。

なぜなら、

次亜塩素酸

次亜塩素酸の構造を見れば、
塩素は酸素と結合しているので、
電子を奪われて電子を欲しがり
酸化力を持つ』のです。

いかがでしたか?
結構知ってしまえば
簡単ですね。

有機化学でもこのように、
Oに電子を吸い取られるという
ことが多々あります。

このOが共有電子ついを奪い取る
という考え方は非常によく使います。

なので、きっちり身に付けておきましょう。

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27 件のコメント

  • 山本 より:

    化学が苦手です。が、少しでも理解できるように努力だけはしています。なかむらコーチの動画や説明はとてもわかりやすく、少しずつですが、化学が難しくて嫌い、というネガティブな考えが無くなってきました。

    • 受験化学コーチなかむら より:

      ありがとうございます!
      好きになればどんどん出来るようになりますので、どんどん活用していってください。

  • 伊東 より:

    希硫酸は強酸性ですが、濃硫酸は弱酸性だと習いましたが、、? 熱濃硫酸が濃硫酸であるがゆえに強酸という表現は不適当ではないかと思われるのですが。私の知識が至らないのであるなら申し訳ありません。

    • 受験化学コーチなかむら より:

      そうですね、ただその弱酸である理由がわかっている必要は在りますね。

      硫酸と言う物をみた時にH+を投げる力が強い事には代わりは在りません。

  • よっしー より:

    こんにちは。
    質問させてください。

    酸化還元反応と、中和反応は全く別のものだと本に書いてありました。

    しかし、2つをHのやり取りで定義すると共通してくるのではないかと思いました。

    Hを受け取るものは、塩基かつ酸化剤なのでしょうか?

    となると、Hのやりとりがある反応は、中和反応かつ参加還元反応が起きていることになると思いますが、どうなのでしょうか。

    • 受験化学コーチなかむら より:

      そういうことになります。

      ただ、同じであると考えるべきでは無いですね。

      硝酸と塩酸は酸塩基だと同じように考えられますが、
      HNO3自体が酸化剤になります。

      ですが、HCl自体は酸化剤ではありません。
      H+が酸化剤です。

      しかもHNO3とCuの反応も酸塩基の反応ではありません。

      全く別のものと考えるのが良いですね。

  • ほーと より:

    濃硝酸と炭酸カルシウムで弱酸の遊離はおきますか?

  • ふかし より:

    酸性と酸化力、逆じゃん!?と思って驚きつつこの記事を読みました。
    酸素に電子を取られているから、他から電子をえようとする、それが酸化力、なんですね。
    納得しました!

  • ゆい より:

    なんで酸化力があるのかっていうところまで理解できたのでよかったです
    三酸化硫黄も酸素に囲まれているから電子に飢えていますか?

    • 受験化学コーチなかむら より:

      そうですね!

  • ゆゆゆ より:

    濃硫酸が「弱酸」ってどうしてですか?
    2価の強酸じゃないんですか?

    • ゆゆゆ より:

      すみません。ちゃんと記事を読んでいませんでした。

  • ライム より:

    過塩素酸の酸化力はなぜ次亜塩素酸より弱いのですか?

  • Josh より:

    この理屈でいくと極性のある分子は酸化力を持つことになってしまいませんか?

  • 匿名 より:

    まじ分かりやすかったです
    ありがとうございます

  • りこ より:

    質問です。
    塩酸の構造のところで、酸化剤とはならないとありますが、希硫酸の記事には、H+が酸化剤になるとあった気がします。塩酸が電離した時のH+はどうなのでしょうか。

    • 受験化学コーチなかむら より:

      H+は酸化剤になりえます。
      が、塩化水素が酸化剤かというと違うという答えになります。

  • 匿名 より:

    この記事とても助かります!
    酸の強さと酸化力について、まだモヤモヤしているため質問させてください。
    ハロゲン化水素の酸の強さは強い順に HI HBr HCl HF で、これはハロゲンの原子半径が大きく結合が弱くH+が電離しやすくなるかららしいですが、 逆に、原子半径が小さいFやClの方が、電気陰性度が大きいため、結合しているHの電子を自分の方へ強く引っ張って、HがH+として電離しやすくなる(つまり強い酸性になる)と疑問に思いました。今までこのように、全て電気陰性度で考えていたため、大混乱しました。

  • Mimi より:

    この記事とても助かります!
    まだモヤモヤしてるので質問させてください。
    ハロゲン化水素の酸の強さは強い順に HI HBr HCl HF で、これはハロゲンの原子半径が大きく結合が弱くH+が電離しやすくなるかららしいですが、 逆に、原子半径が小さいFやClの方が、電気陰性度が大きいため、結合しているHの電子を自分の方へ強く引っ張って、HがH+として電離しやすくなると疑問に思いました。
    このように今まで電気陰性度で全て考えていたので、大混乱です。

  • ゆかりんご より:

    熱希硫酸は酸化力ないのですか?なぜですか?

  • 匿名 より:

    なぜ、H2SO4は強い酸化力を持つのに同じ構造式の希硫酸は酸化力が無いのですか?

    • 受験化学コーチなかむら より:

      H2SO4が強い酸化力を持つわけではなく、熱濃硫酸が酸化力を持ちます。;
      濃硫酸を加熱してできるSO3が酸化力を持ちます。
      希硫酸は加熱すると、水が蒸発するだけです。
      水が蒸発すると結局希硫酸は濃硫酸になります。
      なので結局熱濃硫酸のみが酸化力を持つことになります。

      • 匿名 より:

        疑問が多くてすみません。
        熱濃硫酸が濃硫酸を熱した時に水と三酸化硫黄に分かれるため熱濃硫酸は酸化力を持つのは分かったのですが、その時なぜ、熱濃硫酸の半反応式は三酸化硫黄ではなく二酸化硫黄が出来るのですか?

        • 受験化学コーチなかむら より:

          H2SO4がSO3になって、このSO3が酸化剤として働くからです。
          SO3は反応前です。

      • 匿名 より:

        上の硫酸は、硫黄の周りが
        硫黄より遥かに電気陰性度が大きい
        酸素だらけです。

        つまり、共有電子対を酸素に持っていかれて、
        電子が不足しています。

        だから、
        電子が欲しい
        ↘︎
        相手から奪う

        つまり『酸化力を持つ』

        というところから、希硫酸、濃硫酸、熱濃硫酸も同じ構造式なので全て酸化力を持つように思ったのですが、違うのですか?

        • 受験化学コーチなかむら より:

          わかりやすく書き直しますね。
          とりあえずSO3が酸化力を持ちます。

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    浪人の夏休みまで死ぬほど勉強したにも関わらず偏差値50を割ることも。そんな状態から効率よく化学を学び化学の偏差値を68まで爆発的に伸ばした。その経験を塾講師としてリアル塾で発揮するも、携われる生徒の数に限界を感じ化学受験テクニック塾を開講。 自己紹介の続きを読む。