


今日は本当に苦手な人が多い、「蒸気圧」について解説していきたいと思います。
この蒸気圧は新課程になってから、「センター試験」にも出題されるようになり、旧課程では2次試験ではあまりでなかったからと軽視されて来ましたが、もはやこの分野の攻略は必須と言えます。
まさかこの飽和蒸気圧が、ほとんど気体の問題が出来れば出来るとは知らずに、、、
実は、気体分野と全く別の扱いをしようとしている人が多いんですが、『分圧』の考え方だったり、ほとんど気体分野です。
この分野になって新しく覚える事よりも、きっちり混合気体がわかっている方が遥かに重要です!
目次
なぜ飽和するのか?
まずはここの解説をしていこうと思います。
なぜ飽和するのか?
実はこういう当たり前と思うようなことをすっ飛ばしていきなり「飽和蒸気圧」の解説に入ってしまうため苦手者が続出するのです。
「そもそも圧力が飽和するってどういうこと?」って思っていました。これは、圧力で考えるから難しいのです。
一端騙されたと思って『モル』を考えてください。
コップに水を入れて放置したとします、どうなりますか?

ほったらかしにすると、コップの中の全ての水が蒸発しますよね!それはなぜかって言うと、限界無く水が蒸発出来るからなんです。
つまり、体積がいつまででもあれば、水の蒸発の飽和モルは現れません!
じゃあもし、空間が決まっているものならばどうですか?

このように放置しておくと、一部蒸発して下の図のように一部の水分子が空気中をさまよいます。

これがずっと繰り返されるとどんどん限られた空間を水分子が埋め尽くし、いつかは、『水が蒸発出来ない状態』になる。

これを、気液平衡って言います!
このように空間(体積)に限界がある時って、蒸発する水のモルにも限界があるわけです。
「何を当たり前の事を、」と思われたかもしれません。
ですが、これを意識した事はあるでしょうか?
なぜ今まで当然のように「モル」を使って来たのに、この分野では蒸気圧なのでしょうか?
空間が決まっている事で蒸発できる液体のモルに限界があるから、
「飽和蒸気モル」
でいいと思いませんか?
その真相に迫って行きます。
なぜ蒸発量の限界値を圧力で表す?
ふたを閉じたペットボトルの中などの
「密閉空間」では、液体が
蒸発できるモルには限界があります。
モルに限界があるということは、体積、温度が一定の場合、圧力にも限界があると言う事になります。

これは状態方程式から確認できます。R,T,Vが全て定数なんだからP=knと圧力とモルが比例関係になっています。
y=2xでxの定義域がx≦1ならば、xの限界が1ですよね。てことは、yの限界が2ということと同じです。
それでもなぜモルでは無く、圧力で限界量を表すのでしょうか?
「いや、それでもモルの方がよく知ってるし、モルの方が計算しやすいし、圧力使う理由無いやん!」
と思ってるんじゃないですか?
でもちゃーんと、モルじゃなくて、圧力を使う理由があるんですわ!
それは、モルで考えると、その値は容器の「体積に影響される」からです。
どういう事かと言うと下の図の違いを見てください。

このようにどんどん容器の大きさが変わっていくと、容器が大きくなるほど、水分子が多くなりますよね!
モルの限界は体積で変わってしまうんです。その点圧力でやると非常に優れた事が起ります。
圧力というのは、
このように表されて、体積(分母)が大きくなるとモル(分子)も大きくなるわけです。
つまり、増加分を打ち消し合ってくれるんです!
つまり、水が蒸発する限界量を圧力で表す事によって、体積の影響を考えなくて済むので楽!という事がわかります!
ここまで大丈夫でしょうか?
まず、モルじゃなくて圧力を使えるのは、状態方程式でモルが飽和したら、圧力も飽和するから!
そして、なんで飽和蒸気モルでなく飽和蒸気圧が使われるか?というと、飽和蒸気圧なら体積の影響を考えなくて済む!という事だからです!
蒸気圧曲線ってなに?
急に出て来た曲線で、その前に状態図出て来たばっかなのに、
「また新しい図覚えないといけないの、、、?」
と思った方もいるかと思います。
ですが朗報です。
実は蒸気圧曲線は「状態図を切り取っただけ」なのです。例えばここに水の状態図があります。

出典:http://www.campus.ouj.ac.jp/
蒸気圧曲線と言うのは下のように状態図の一部を切り取った物なのです。
なので蒸気圧曲線で新しく覚える事は何一つ無いです。
状態図と飽和蒸気圧
それでは状態図と飽和蒸気圧にはどのような
関係があるのでしょうか?
温度が一定のとき、
その温度での蒸発量の限界値が
「状態図、蒸気圧曲線で決定できる」
のです。

温度が決まると、圧力の限界値が決まります。
これが「飽和蒸気圧」です。
ここまでのまとめ
いかがでしたか?
蒸気圧を使う理由分かりましたか?
モルだと体積が大きくなるとそれに比例し、蒸発の限界量まで大きくなってしまうので、体積に影響を受けない圧力を使おう!
という発想です。
さらに状態図は温度と圧力の関係をあらわしていて、「温度が決まれば蒸気圧が決まる」のでした。

そしてこの状態図を切り取ったのが蒸気圧曲線ですね。

まず蒸気圧の基礎なので
頑張って身につけていきましょう!
実践編!蒸気圧曲線の使い道
実際この蒸気圧曲線はどのように使えば入試問題が解けるのか?
というのが受験生のあなたが気になる所だと思います。
このままでは、蒸気圧曲線の説明をしただけで、これでは入試問題は解けませんなので、
どのように使えば、入試問題を解けるようになるのか?を解説して行きます。
(飽和)蒸気圧の意味
蒸気圧は気体になれる液体の限界量をモルの代わりに表しています。
つまり、
蒸気圧を超えると気体になれない、
のです。
そして、蒸気圧がからんでくる問題では
密閉容器の中の『状態判定』が
出来る事が必須です。
・全て気体になっているのか?
・気液共存状態なのか?
という状態を判定して行きます。
その時に使うのが
状態図=蒸気圧曲線
なのです。
状態判定
そして、ここが一番多くの人が悩む場所です。ここさえ通過できれば、もはや蒸気圧と意気込む必要も無くただの気体の問題に成り下がってくれます!
まず密閉容器中の液体(nmolとする)が全て蒸発できるかどうか判定するには、液体nmolが全て蒸発したという仮説を立ててて
pV=nRT式から圧力p仮説kPa(仮想の圧力)を計算する。

仮説の証明としては、その仮説でつじつまが合えば、仮説は証明できます!
では、仮説で求めたp仮説が本当に正しいのか?つまり、水が全部気体であることを証明するならばどうあれば良いですか?
これは、状態図(蒸気圧曲線)と比べて、『気体状態』のところに圧力があればよい!
すなわち、蒸気圧(pvPaとする)よりも圧力が小さければ良いのです!
この仮説と検証が状態判定で重要になってきます。
場合分けがあります。
この場合分けが蒸気圧の問題を解くうえでキモになります。
先ほどのp仮説がpv(蒸気圧)よりも①小さいとき、②同じとき、③大きいときの3パターンがあります。

1つずつ説明していきます!
(1)p仮説Pa<pvPaのとき
状態図で言うと、蒸気圧よりも仮説の圧力が小さいですよね。
つまり仮説通り全部気体になると考えてオッケーと言う事になります!
つまり、
『容器内の気体の圧力pPa=液体nmolは全て蒸発した圧力』
(2)p仮説Pa=pvPaのとき
状態図の気体の領域の限界ぎりぎりで、液体nmolは全て蒸発、気体になります。もう少し圧力が大きくなると、一部液体になって気液共存状態になります。
だから『容器内の圧力pPa=飽和蒸気圧pvPa』と言えます。
p仮説Pa>pvPaのとき
この場合は2パターンあります。
『ここが受験生が最も苦手とする所』
と言っていいでしょう!
この飽和蒸気圧より、
液体を仮想的に気体にした圧力の方が
大きい場合は、
場合分けが必要になります!
この場合分けを知らない受験生があまりにもおおいのです。
本当に残念です。
ですが、本当に知っているか知らないか
それだけなので、
今まで知らなくてもなにも焦る必要は
ありません。
今から知って行きましょう。
①気体が存在することができる
まず考えなければならないのは、
『容器に液体が蒸発できる空間があるとき』
です。
これがどういうときかを知らないとだめです。
これは2つあって、
このように容器の体積が変わらないもの
液体になりにくいO2やN2などの気体が飛び回っている場合。
というのも、(3)の状態図の部分っていうのは、本来水は液体でないとダメなところです。
つまり、P水=0が当然なのです(気体が居ないから)
しかし、
このような状態の時、
気液共存状態になれます!
今回は、状態図を見れば一目瞭然
(3)の場合は飽和蒸気圧を超えていて、状態図さんが
「誰の許可得て気体になっとんねん!」
「限界量まで戻らんかい!」
と怒る。
だから、飽和蒸気圧を超える分は液体に戻らされるわけです。
蒸発できる限界圧力である飽和蒸気圧pvPaまで蒸発、飽和する。限界をこしている分が液体になり、気液共存状態になる。
容器内の気体の圧力pPa=飽和蒸気圧pvPaとなります。
またこのとき液体として残った物質量(nimolとする)は飽和蒸気圧pvkPaから、気体になった物質量(モル数)
nvmolを求めて計算する。pvkPaまで液体が蒸発できている。
pV=nRTを変形したn=pV/RT(もちろんpとRはkPaを活用。kは相殺!)に飽和蒸気圧pvkPa、温度T0K、体積V0lを代入するとnvmolが求まる。
初期の物質量nmolからnmolをヒクと、液体として残る物質量nimolに。→液体として残った物質量nimol=n0-nv=n0-pvV0/RT0
このときの体積Vですが、「液体の体積を引かないといけない?」と思った人が居ると思いますが、
気体に比べてかなり体積は小さいので、この液体の体積は無視して構いません!
②容器に液体が蒸発できる空間が無いとき

このようなピストンだと先ほどの場合分け①のようにはいきません。ピストンと言うのは、動く事が出来ます!
そして、内部に気体が無くなれば、気体をピストンで押すなどして容器に液体が蒸発できる空間が無いときは初期のnmolは全て液体になる!
だから容器の”液体の“(気体はないから)圧力はpPaとなります。
ただ、ピストンでも、先ほど言いましたように、窒素や酸素がアレバ、
なかなかパターンが多かったですが、こんなもんです。
いつも何となく圧力をつかって
受け入れていました。
モルじゃなくて圧力を使う理由が
わかって面白かったです。
僕も昔は
「なんでモルで考えないんだろう?」
とか
そんな疑問すら湧きませんでしたよ笑
状態図と蒸気圧曲線が似ているのに関係がわからずずっとモヤモヤしていました。似た問題で解き方が分からなかったのがスッキリして本当にわかりやすかったです!!
ありがとうございます!
励みになります!
これからも頑張って書きます!
おお!うれしいです
ありがとうございます!
圧力じゃなくて体積では考えられないのですか??
圧力と温度が一定なら可能ですよ。
何度も質問してすいません。
わからない問題って添削してもらえますか!?
molで考えるなって言われて、でも問題文にmolしか値があたえられてなかったら、どうしたらいいのでしょうか?
図が書こうと思っても書けません…
残念ながら添削のサービスはやっておりません。
容器が大きければ大きいほど、
蒸発量が多いこれすなわち
モルの値が大きくなる!
の意味がわかりません...
教えてもらえますか?
500mlのペットボトルと1ℓのペットボトルではどちらが多くの気体が入れますか?
1ℓですよね。
1ℓの方が沢山気体が存在できますよね。
てことは、蒸発した気体もその分多くその場に居る事が出来るのです。
ありがとうございます!
簡単な質問に答えてくださって
うれしいです!
基本的な質問かもしれませんが、、
ここでの圧力っていうのは「気体なり液体なりの圧力」ってことですか?それとも「外部からかける圧力」のことですか?
それと液体と気体はどちらの圧力のほうが大きいのですか?
あと、どうして頑丈な容器ならスペースがあると言えるのですか?
液体の圧力・・・・・
水圧はアルキメデスの原理とかで求めるもので、おそらく色々勘違いされていると思います。
気液平衡の説明のところの、密閉容器に水が入っている画像についてお聞きしたいのですが、水が蒸発する前の密閉容器内の水以外の部分(空欄の部分)は何で満たされているのでしょうか?空気ですか?あるいは真空でしょうか?
よろしくお願いします。
これはどちらの場合もあります。
どちらの場合でも水の分圧が蒸気圧より上か下かで判断します!
返信いただきありがとうございます。
ということは、(乾燥した)空気が入っている密閉容器に水を入れるとその蒸気圧分容器内の圧力は大きくなるってことになるのでしょうか?
もしそれが正しいなら、その密閉容器内に無限に多種多様な種類の液体(水、エタノール、メタノール、ジエチルエーテル、臭素、etc)を入れたらそれらの固有の蒸気圧が加算されて、理論的に容器内は無限に大きな圧力になるのでしょうか?
よろしくお願いします。
体積に限界がある→蒸発出来るモルに限界があるのでそのようなことはおきません。
体積が変化しても、温度一定なら圧力は変化しない。
↓
体積が変化してもその分気体が液体に溶け、単位体積当たりのmol数は変わらないから(Vが減ればnも減るから)
↓
この時の圧力は、気液平衡時
↓
なら液体中と気体中の圧力は等しいはず
↓
しかし液体中は、気体圧縮前後で単位体積あたりのmol数が変化してる
↓
ということは液体内の圧力は高くなっている
↓
なら、それにつり合うように気体中の圧力も高くなる。
どこが間違ってるんでしょうか…
「体積が変化してもその分気体が液体に溶け、単位体積当たりのmol数は変わらないから(Vが減ればnも減るから)」
2カ所間違っています。
気体が液体に溶ける話は無視するくらい極小です。また、液体に溶けたらmol数は溶液に溶けてるんだからmol一定じゃない。気体から減っている。
「この時の圧力は、気液平衡時」
これも間違い、気体⇄液体の時を気液平衡といい、気体が液体に溶けるときは溶解平衡という。
「なら液体中と気体中の圧力は等しいはず」
液体中の圧力とは?
「ということは液体内の圧力は高くなっている」
同じく液体内の圧力とは?
気液平衡というのは、気体→液体と液体→気体の反応速度が同じときのことで、別に圧力がどーのこーのって話ではない
内圧が蒸気圧を超えると気体になれないという記述が理解できません。何故そうなるのでしょうか。お願いします。
気体になれる量には限界があるからです。
蒸気圧よりも圧力が小さければ全て気体であるという記述がわかりませんでした。蒸気圧曲線からということなのですが、なぜグラフより上なら液体で下なら気体なのでしょうか。よろしくお願いします!
状態図で気体だから・・・としか言えない気はします。
容器がピストンで出来ていて、かつ、その中に水しかない飽和蒸気圧の問題では、
①水が全て気体である可能性
②気液平衡となっている可能性
の判定に加えて、
③水が全て液体になっている可能性
の判定も考慮して問題を解かなければならないのですか?
また、頑丈な容器で出来ていれば、
容器内の水が全て液体となることはないのですか?
容器内で水がすべて液体になっているとき、蒸気圧は0ですか?
容器に液体が蒸発できる空間がないなら圧力はどーなるのでしょうか?0paでしょうか?
そもそも気体が存在しないので、0Paです
仮の圧力が飽和水蒸気圧よりも小さかったら全て気体、飽和水蒸気圧よりも大きく単体の場合全て液体、液化しにくい気体との混合の場合気液共存ということで合ってますか?
飽和蒸気圧よりも仮定した圧力のほうが高くなる場合の場合分けについて知らなかったのでとても役に立ちました^^
お役に立てて良かったです!
①気体が存在することができる
の最後のところに書かれている、液体の体積は無視して構わない、のところについて質問があります。
ぼくは、”「液体の体積を引かないといけない?」と思った人” です。
気液平衡の状態で、気体と液体が共存している状態の容器内を考えるときは、いつでも液体の体積は無視して考えていいのでしょうか? 液体の体積は無視して、飽和蒸気がその容器の容積を体積として存在している、といつでも考えていいのでしょうか?
また、いつでも無視していいのでは無いのであれば、どういった状況のとき液体の体積も考慮に入れるのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
問題文で無視して良い時は無視して良いと書かれています。
また無視できない時は液体の体積が問題文で書かれているはずです。
ぼんやりとしかわかっていなかったけど、これでイメージも掴めました!
よかったです!
ありがとうございます!