今日は、熱化学方程式の解法、真のエネルギー図の解法を用いる練習をしていきましょう。
CH4+2O2=CO2+2H2O(液)+890kJ・・・①
これに対し、水素の燃焼では二酸化炭素は生じない。
2H2+O2=2H2O(液)+570kJ・・・②
このことから、水素は環境に優しいクリーンなエネルギー源と考えられている。しかし水素は、一般的には天然ガスに含まれるメタンと水蒸気から以下の反応により製造され、この際に二酸化炭素が生じる。
CH4+H2O(気)=CO+3H2-210kJ・・・③
CO+H2O(気)=CO2+H2+QkJ・・・④
(1)80gのメタンを式①の反応により完全燃焼させたときに発生する熱量は何kJか。
(2)水蒸気の生成熱は何KJ/molか。ただし水の蒸発熱は40kJ/molとする。
(3)式③と④の反応により、1molのメタンが水蒸気と反応して全て二酸化炭素と水素になる反応を、QkJを用いた1つの熱化学方程式として表せ。
(4)式④の反応熱QkJを求めよ。
(5)一酸化炭素のCとOの間の結合エネルギーは何KJ/molか。ただしメタンのC-H、水のH-O、水素のH-Hの結合エネルギーはそれぞれ420,460,440kJ/molとする。
(電気通信大学2010)
電気通信大学の問題です。地味だけど素晴らしい大学です。
熱化学における割と難問の部類に入る問題です。
(4)が解ければ上出来です!
(1)〜(3)は(4)のための準備問題
エネルギー図を学んだことで、全く手が付かないなんてことはないと思います。
エネルギー図関係の問題は、全く手が付かない超難問は存在しません。
(1)の解説
「80gのメタン」という言葉を見たら一瞬でモルに変換します。
80/16=5molですね。
メタンが1molあたりに、890kJの熱量を発生するので、
890×5kJ=4450kJ
が答えとなります。
(2)水蒸気の生成熱は何kJ/molか
エネルギー図のエネルギーの順番はこのリズムで覚えるのでした。
エネルギー図の順番を覚える動画です。
それでは問題の解法に入って行きます。
まず②式を見てみましょう。
2H2+O2=2H2O(液)+579kJ・・・②
これはこのままで使う事が出来ません。生成熱はH2O(液)の係数が1でないといけません。
なので、②式の両辺を2で割らないといけません。
2H2+O2=2H2O(液)+570kJ
↓両辺を半分に
H2(気)+1/2O2(気)=H2O(液)+285kJ
このように与えられた式を半分にしたものが答える熱化学方程式です。
また、②式は熱化学の標準状態では水は 液体であるから、これを水蒸気、つまりH2Oを気体にするためのエネルギー40kJが必要になります。
この蒸発熱は、テキストでもお伝えしましたが、
『状態変化に関する熱は○○エネルギーとして扱う』
という例外がありました。
よってエネルギー図では上向き矢印と言う事になります。
単体と化合物×2(H2Oが気体と液体の状態の違いがあり、それによって2つの化合物レベルを利用する)
エネルギー図より、水蒸気の生成熱は、
285-40=245kJ/mol
これを熱化学方程式にすると下のようになります。
H2(気)+1/2 O2=H2O(気)+245kJ/mol
(3)と(4)の解説
まず(3)の1molのメタンが水蒸気と反応して、水素と二酸化炭素になる熱化学方程式ですが、
これは式③と④を見れば、
消去法を用いて③+④を用いると、
一瞬で解けるのが余裕でわかるので、
エネルギー図は省略します。
ここまで見たら余裕な場合は、エネルギー図を無理に書く必要は無いです。
ていうか、(3)は全然準備段階、ちょっと親切な問題だな〜程度です。
(4)を解くための布石です。で、ここで考えてほしいのが、なんのための(1)~(3)なのかということ、これは数学でもよく使う手ですよね、まさか、(3)を解くときに、(1),(2)を一切使わないって人はいないでしょ。
優秀な人はこう考えています。
今回もちょっとずる賢く考えましょう。
今回で言うと、
③、④を使って⑥を作り出したな。
ってことはまだ使ってない①②⑤で解くんだな
こう思ってほしいわけです。
そして、使う熱化学方程式が分かれば、次にやるべき事は、『エネルギー図』を作成すること。
上から順番に①、②、⑤ですね。
CH4+2O2=CO2+2H2O(液)+890kJ・・・①
H2(気)+1/2 O2 =H2O(気)+245kJ/mol
①=メタンの燃焼熱
②=H2O(液)の生成熱2mol分
⑤=H2O(気)の生成熱=H2の燃焼熱
⑤はもうおなじみやけど、テキストにも書いた、
水と二酸化炭素の生成熱は
水素と炭素の燃焼熱に等しい
これらのヒントを使って熱化学方程式⑥をつくればいよい!
ヒント的に考えて燃焼熱が与えられまくってる。
ということで、
このエネルギーのレベルのうち完全燃焼レベルが必要であることはわかる。
また、CH4,H2O,CO2が化合物であるそして、それが両辺にあるから、化合物レベルが2つ必要であるということが分かる。
よって、
のうち、
化合物-1、化合物-2、完全燃焼の3段階でエネルギー図を作ります!
しかし、注意してほしいのが、⑥の熱化学方程式ではH2Oが気体であるのに対して、
①のH2Oは液体であるということです。
CH4(気)+2H2O(気)=CO2+4H2(気)+Q-210kJ・・・⑥
⑥では気体
①では液体
つまり、①のH2Oを
『液体から気体にしておく』
必要がある
のは明白ですね。
(2)を参考に、H2O(液)の蒸発熱
40kJ/molを用いて①式のH2O(液)
をH2O(気)に換算した熱量を求めます。
このようなエネルギー図になります。
蒸発熱のような
「状態変化に関する熱量は○○エネルギー」と同じ扱いをするのでした。
だから上向き矢印になっています。
このエネルギー図から、メタンを燃焼してできる水を気体にしたバージョンの熱化学方程式は次のようになります。
これを⑦式として進めます。
これで⑥式の熱化学方程式を
計算するエネルギー図を求めます。
これのうち化合物-1化合物-2完全燃焼をつかうのでした。
これより、
Q-210=(890+40×2)-570×2
Q=40
よって、Q=40kJ
(4)の答えはこれになります。
こんな疑問があるでしょう。
「Q-120kJ」が>0(発熱反応)なのか<0(吸熱反応)なのかで、エネルギー図が書けないじゃないか!と悩む人もいるでしょう。
さらにCH4(気)+2H2O(気)=CO2+4H2(気)+Q-210kJこの熱化学方程式では左辺がエネルギー図の上か下かがわからないじゃないか!と思いますよね。
もしQ-210が負の数で吸熱反応だったらどうなるか?
特に問題はないです。例えばA+B=C+D+QkJだったとします。↓速攻こうやっておいちゃいましょう。
仮にQ<0だった場合は、上下が逆だったんだな〜って考えます。
(5)の解説
教諭結合を切って原子までバラバラ(=気体状態)にする結合エネルギーが与えられているので、「イ・原・単・化・完・水」のうち原子(気)が必要なのは間違いありません。
そして、結合エネルギーとして与えられているのが以下の結合エネルギーです。
H2OのO-H(460kJ/mol)、
H2のH-H(440kJ/mol)
与えられているのがCH4のC-Hで、要求されているのがCOのC≡Oの結合エネルギーであり、これらの全てを含んでいるのが問題文中の下記の③式である、
③式の両辺は化合物で構成されているので、
エネルギー図では
のうち、化合物レベルが2つ必要だなとわかりますよね。
原子(気)、化合物-1、化合物-2の3レベルが必要と言う事になります。
そして、このエネルギー図中では、COのC≡Oの結合エネルギーをEkJ/molとします。
このエネルギー図より、
E+440×3=420×4+460×2-210kJ
よって、E=1070kJ/mol
これで全ての問題を解ききる事が出来ました。
なかなか長い戦いでしたがついてこられましたか?
他の分野の難問よりは確実に解きやすいはずです。
しかも、エネルギー図も体系的な作り方を知ればだれでも作れます。
この問題が解けなかった人は、きっちりテキストを見直して解法をもう一度固めて、またこの問題にトライしてください。
それでは!