かつてアルミニウムは金や銀よりも高級な金属でした。
フランス皇帝ナポレオン三世は普通の客には金の食器を使い、特別な客はアルミニウムの食器でもてなしたそうです。
しかし今ではアルミニウムは、アルミホイルや飲み物の缶に使われるくらいも
安価な金属ですよね?
その転換点となったのは「ホール・エルー法」という、融解塩電解によるアルミニウムの精製法が発明されたこと。
この記事ではホール・エルー法の原理を図も用いて、徹底的に分かりやすく解説します!
アルミニウム精製におけるホール・エルー法の前段階、「バイヤー法」について詳しく知りたい人はこの記事を読んで見てください。
目次
ホール・エルー法とは
アルミニウムの原料として天然から採掘されるのは、ボーキサイトという鉱物。
酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素の混合物です。
ここからまずバイヤー法によって、純粋な酸化アルミニウムであるアルミナだけを取り出します。
そしてこのアルミナを融解塩電解し、アルミニウムを取り出すのがホール・エルー法です。
発明したのはアメリカ人科学者のチャールズ・マーティン・ホールと、フランス人科学者のポール・エルー。
二人は共同で研究したわけではなく、偶然同じタイミングでこの方法を見つけだし同時に発表したのです。
そこで二人の名前をとって命名されたのが「ホール・エルー法」。
ちなみにホールとエルーは生まれた年も亡くなった年も、偶然一緒なのだそうです。
すごい運命ですね!
ホール・エルー法の原理と反応式
融解塩電解とは
地殻中に豊富に存在するアルミニウムが、なぜそんなに貴重だったのでしょうか?
天然に存在するアルミニウムのほとんどは、酸化アルミニウム。
酸素と強く結びついているため、鉄や銅を精製するときのような「炭素と共に熱して還元する」という伝統的方法が使えなかったのです。
さらに水素よりもイオン化傾向が大きいので、水溶液を電気分解する方法でも精製できません。
しかし酸化アルミニウムを熱して融解させ、そこに電流を流せば電気分解によってアルミニウム単体を取り出すことができます。
この方法が融解塩電解です。
氷晶石を使うのがカギ
しかしここで一つ大きな問題があります。
それは酸化アルミニウムの融点が非常に高い(2054℃)ということ。
そこで用いるのが氷晶石(Na3AlF6)です。
酸化アルミニウムは氷晶石に溶け込みやすいため、混合して熱すると融点が約800℃まで下がります。
融解した混合溶液を電気分解すると、陰極側にアルミニウム単体が生成するのです。
陽極の反応
溶解した酸化アルミニウムは下のように電離します。
2Al2O3 → 4Al3+ + 6O2-
これに電圧をかけたとき、陽極側に引き寄せられるのは陰イオンである酸素イオン。
したがって陽極では酸素ガスが発生… となりそうですが、800℃という高温のため酸素イオンは炭素と反応して一酸化炭素を生じます。
C + O2- → CO↑ + 2e–
そして電極に渡された電子は回路を巡って、陰極へと移動するのです。
陰極の反応
陰極には陽イオンであるアルミニウムイオンが引き寄せられ、電子を受け取ってアルミニウム単体になります。
Al3+ + 3e– → Al
全体の反応
上の反応を全てまとめると、全体としては以下の反応が起きていることになります。
Al2O3 + 3C → 2Al + 3CO
まとめ
この記事ではホール・エルー法について解説しました。
- ホール・エルー法は、アルミナ=酸化アルミニウムからアルミニウムを取り出す反応。
- 酸化アルミニウムから融解塩電解でアルミニウム単体を生成する。
- 酸化アルミニウムの融点を下げるため、氷晶石を加えるのがポイント。
- 陰極からはアルミニウム、陽極からは一酸化炭素が発生する。