どうも、受験化学コーチわたなべです。
今日は工業的製法の中でもかなり有名で出題されやすい「アンモニアソーダ法(ソルベー法)」をご紹介します。
「ソルベー法の反応式ってどうしても作れないんだよな〜」
「そもそも工業的製法っていう物自体かなり難しいんだよね〜」
となんだかアンモニアソーダ法(ソルベー法)という言葉を聞いただけで身構えてしまう人もいるでしょう。ですが、ソルベー法は実際はそれほど難しくありません。
今回はそのソルベー法をきっちりまとめながら反応式を覚えてしまう方法まで解説します。(語呂あり)
また、このアンモニアソーダ法は、反応式が書ければよいという問題ではなく、ソルベー法の装置も実際に入試問題で出ています。なので、この反応の流れを追って勉強していきましょう。
目次
ソルベー法(アンモニアソーダ法)の理念
ソルベー法、アンモニアソーダ法には理念があります。
それは、安いCaCO3とNaClでなんとかNa2CO3を作れないかな〜ということです。
だって、NaClなんて海に行けば腐る程、無限と言っても良いほど取れます。

そして、CaCO3ですが、これは鍾乳洞や石灰石などの成分ですから、これも腐る程あります。

これから炭酸ナトリウムを作り出します。

そう、安い材料で良いものをつくりたいと言う理念のもと、アンモニアソーダ法は開発されました。
名前の由来もアンモニアからソーダ(Na塩)を作る方法だからアンモニアソーダ法と言う名前になっています。
また、ソルベー法は5つほどの式を並べられる事で、色々な反応が絡んでいるように見えますが、
実際主な反応は2つしかありませんので、それ以外の反応は材料集めにすぎないのです!
ソルベー法①炭酸水素ナトリウムを生成する反応
まずこの行程では、NaCl水溶液中にアンモニアを溶かします。

この後に、CO2を溶かし込みます。

この画像の赤枠のように二酸化炭素は下から吹き込みます。

上図で赤枠のところで反応がおこります。この赤枠の所をソルベー塔と言ったり、反応塔と言ったりします。
その反応の順番に考えていきます。
今やった説明の流れの通りに反応式を書いていけば最初の反応式は簡単に書けます。
NaCl+H2Oの溶液中にアンモニアを溶かします。
この赤枠のところでNaCl水にアンモニアを溶かし込みます。
NaCl+H2O+NH3となります。
ここにCO2を吹き込んでいきます。
NaCl+H2O+NH3+CO2となり、
そして、目的は、NaHCO3ですので、右辺にNaHCO3は確実にあります。
NaCl+H2O+NH3+CO2→NaHCO3
そしてまだ残っているのがNH4Clなのでそれを書いて、反応式が完成します。
NaCl+H2O+NH3+CO2→NaHCO3+NH4Cl
ちなみに、よくわからない語呂ですが、僕は今から言う語呂で覚えています。
化合物の並ぶ順番が変わりますが気にしないで大丈夫です。反応式で化合物の順番は気にする必要はありません。
CO2+NaCl+H2O+NH3→NaHCO3+NH4Cl
兄さん加担(CO2)、ナックル(NaCl)で見ず(H2O)に安心(NH3)ナフコさん(NaHCO3)も安心(NH4Cl)
この語呂は野球チームです。草野球で、自分のチームに兄さんが加担してくれました。兄さんはナックルを投げるため、全く打たれません。守備では飛んでこないので見ずに安心できます。観戦にきていたナフコさんも安心しています。
という語呂です。
ソルベー法②炭酸水素ナトリウムの熱分解
この反応式は、熱分解のところで説明しましたが、炭酸水素塩は2HCO3–→H2O+CO2+CO32-の反応が起るのでしたね。
なのでこの反応も、
2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2
という反応が起ります。これで炭酸ナトリウムは完成なので、基本的に主な行程は①と②のみです。
ちなみにこの反応式の右辺で出来たCO2は再び①に再利用されます。
しかし、ソルベー法は、アンモニアとCO2という原料を作る行程もキッチリ考えます。
ソルベー法行程③
次は、ソルベー法の最初の兄さん加担の式の原料の1つであるCO2を作る方法を考えます。
反応式自体は全然難しくありません。
とはいえ、これも実は熱分解のところで話したもので炭酸塩の熱分解です。
CO32-→CO2+O2-
なので、原料であるCaCO3に当てはめていけば良いだけです。すると、
CaCO3→CaO+CO2
と言う反応が起ります。
重要なのはこの反応がどこで起っているかです。これが起っているのはこの赤枠の所です。
先ほど説明したように、ソルベー塔は下からCO2が供給されますがそれにCO2を供給しているのがこの石灰炉です。
実際に
「この場所は何をするところですか?」
という出題もありました。なのでちゃんと知っておきましょう。
ソルベー法行程④
ソルベー法行程③で出来たCaOをご覧下さい。
なんとこれもリサイクルします!!
この辺りから多くの受験生がソルベーを神格化しますw
このCaOを水と反応させます。
CaO+H2O→Ca(OH)2
これは次の行程に使います。
ソルベー法行程⑤
ソルベー法行程①の反応が終わった後(兄さん加担の式の右辺)を見てください。
NaCl+H2O+NH3+CO2→NaHCO3+NH4Cl
右辺にNH4Clがあります。このNH4Clをこのまま捨てるのはもったいないので再利用します。
NH4ClからなんとかNH3を取り出したいです。
このような弱塩基の塩から弱塩基の分子を取り出すときどうしますか?
そうですよね?弱塩基遊離反応ですね。なので、ここに強塩基のCa(OH)2を加えます。
2NH4Cl+Ca(OH)2→CaCl2+2NH3+2H2O
と言う反応が起ります。
ソルベー法のまとめ式
ソルベー法は、安いNaClとCaCO3からNa2CO3をつくる反応です。ここまでわかれば、
2NaCl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2である事はすぐわかります。
ソルベー法に関する疑問
ソルベー法ではよくこんな疑問がわきます。
いきなり反応できないの?
2NaCl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2
混合すればええやん!
このような疑問が産まれても仕方が無いです。
しかし、これは理由があります。
沈殿反応を学んだと思いますが、CaCO3が沈殿しやすい事を学びましたね!
2NaCl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2
の反応より
Na2CO3+CaCl2→2NaCl+CaCO3 の反応の方が多く起ります。
逆反応の方が起りやすいのです。
つまり一向に反応が進まないのです。だから回りくどく、NaHCO3を経由していくのです。
アンモニアっていらなくね?
そういえば、アンモニアって最初出てきましたが、結果的にあんまり関わってないですよね。
って言われても仕方が無い気がしますが、、
もちろんアンモニアにも意味があります。
アンモニアを溶かす理由としてCO2を溶かしやすくするためです。CO2は水に溶けますが積極的にメチャクチャ溶けるわけではありません。
なので、溶液を塩基性にする事で、中和で塩にして溶液にイオンとして存在させるために入れておくのです。
なぜHCO3–で終わりなのか?
と思われるかもしれませんが、これはNaHCO3の組み合わせの溶解度が非常に小さいのです。
なので、HCO3–が中和でCO32-になる前に、NaHCO3の形で沈殿してしまうのです。
いかがでしょうか、ソルベー法は結構疑う事無く暗記しようとする人が多いですが、なるべく暗記を減らせるようにしました。
なので、最初の一番だるい反応式も語呂で覚えれば書きやすくなりますし、流れを覚えているだけでも書きやすくなります。
キッチリ復習しておいてください!
無機化学の工業的製法を全て網羅していただけるとありがたいです。
そうですね。
実現できるよう頑張ります。
ソルベー法のまとめ式はどのようにして出てきたのでしょうか
まとめ式は、連立方程式を解くのですが、俺は、ソルベー法は安いものから良いものをつくろうと考えた方が簡単に作れるので、連立方程式を解くだけを載せるまでもないと思い、載せていません。
今まで教科書のソルベー法を見て、なんじゃこのわけ分からん表は…。嫌い!! と偏見を持っていましたが、この記事を読んで感動しました!
理由を知って学んでいけば、こんなに簡単に頭に入るんですね!
ソルベー法ちゃんと理解すると、ソルベーが天才である事がわかって楽しいですよね〜
感動していただきありがとうございます。
語呂合わせと炭酸水素塩の熱分解と炭酸塩の熱分解をキッチリさせるだけでかなり頭のが整理できました。
どれもよく見ると単純なんですね笑
そうなんですよね〜
ソルベー法は式も5つあるからうっとなるんですけど、
流れを知ったら絶対に出来ます!
こんにちは。
化学はよく分からないのですが文章がおもしろくて、読んでいます。
基本的な質問ですみません。
ソルベー法②のところに
2HCO3-→H2O+CO2+CO3-という式がありますがCO3-って、何というイオンでしょうか?
CO32- とは違うものですか?
ありがとうございます。
ご指摘ありがとうございます。CO32-でしたね。
すみません、素人が余計なことをいいました。
ありがとうございました。
また化学の勉強つづけます。
いえ、ありがとうございます。
すきです
アンモニアを水に溶かして塩基性にしてから二酸化炭素を吸収させることで、単なる溶解ではなく中和反応に持っていき完全に溶かすわけですか…
気体の中和(逆滴定)のときと同じことやってますね
そうですね!
まあここでは100%溶かす必要も無いのですがね。
こんにちは。
初めの反応で、塩化ナトリウムという強酸強塩基の塩に弱塩基や弱酸を入れても反応しないんじゃないかなと思ったのですが、炭酸水素ナトリウムが沈殿する反応の反応機構はどうなってるんでしょうか?
二酸化炭素を下から吹き込むのって何か意味があるんですか?